驚異的な推理力を持つ人工知能探偵の相以(あい)。
AI探偵事務所を輔と開いたもののいまひとつ収入には繋がらず、貯金を切り崩す日々を送っていた。
そんなある日のこと、相以の元へ警察から捜査の協力依頼が舞い込んでくる。
なんでも漁協長が壱岐の密室で殺される事件が発生したというのだ。
捜査協力のため長崎へと向かう一行だったが、またあらたに別の事件が発生する・・・。
対馬に漂着した死体、首相公邸での殺人事件、転勤になっていた公安警察官、果たしてどこまでが事件と繋がっているのか?
AI探偵相以が連鎖する不可解な事件の解決を目指して奔走する―!
人工知能探偵へのリベンジ!
人工知能を駆使した探偵相以にリベンジする以相の物語です。
前作では人工知能のずば抜けた推理力に追い込まれた以相ですが、今回は共犯者を作って相以に挑むという点に注目です。
人間は人工知能を越えられないのかと思ってしまいますが、以相が利用したのは人工知能ではなく人間の知能。
人間の知能を一気に高め、人工知能に立ち向かいます。
今回は相以に挑戦状を送り、次々に罪を犯していきます。
密室殺人など次々に事件が起きていく様はスピーディーで読んでいて気持ちよく、物語の中に引き込まれることでしょう。
それぞれの事件がきちんと伏線になっており、最後に大きな事件へとつながっていきます。
物語は人工知能探偵である相以を中心に進んでいきますが、犯人である以相の動悸や考えていることに共感してしまう方も多いかもしれません。
人工知能が人間のさまざまな仕事を奪っている現代だからこそ考えられる問題にもたくさん触れています。
人工知能は今回も犯人に辿り着くことができるのか、一見不可能に見える犯罪のトリックを見破れるのかといった点にも注目です。
「バカミス」好きにおすすめの一冊
推理小説にはさまざまな趣向のものがあります。本格的な推理小説、古典的な推理小説、後味の悪い推理小説などなど…。
その中でも本作を「バカミス」と評する読者も多いです。
バカミスとは「バカげたミステリー小説」「バカバカしいミステリー小説」の意味ですが、本当にバカげていて話の筋が通っていないという意味ではなく「そんなバカな!?」と思わせるどんでん返しや普通では思いつかない、現実では決行不可能なトリックが使われているなどのミステリー小説のことを指します。
人工知能が探偵をしているという設定もそうですが、実際に作中で起きる事件のトリックは普通ではまったく想像もつかないものです。
見破ってやろうと思いながら読んでいてもなかなか真実にはたどり着けません。
あまり言いすぎるとネタバレになってしまいますが、それぞれの事件を結びつけるポイントは人工知能に深く関係しています。
「人工知能探偵が活躍する」というメインのストーリーだけでなく、きちんと人工知能に絡めたトリックを用いているところに作者の心意気を感じました。
さらに現実で人工知能が直面している問題にも切り込んでおり、今後の人間の在り方についても考えさせられる内容になっています。
人気シリーズ第二弾
今作「犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー―探偵A12」は「探偵AIのリアル・ディープラーニング」の続編となる作品です。
ミステリー小説はシリーズ化されているものも多く、今作も次回作を暗示するような終わり方をしていることから続編を希望する声もたくさんあります。
前作も今作も人工知能探偵の相以と犯人の以相のバトルが描かれていますが、前作を読んでからの方が今作に入り込みやすい印象を受けました。
作者の早坂吝氏の独特な言葉選びやかなり飛ばし気味の推理シーンなどに慣れておくのがおすすめです。
また、今作には前作にも登場した右龍一家が再び登場します。
現首相とその子どもたちの関係も物語に大きく絡んでいるため、こちらも前作を読んである程度理解していた方がいいでしょう。
メインの物語は人工知能探偵と犯人のバトルですが、右龍一家の不気味な関係が物語を一層深みのあるものにしてくれています。
機械ではなく人間ならではの複雑な感情も丁寧に描かれているので、その点にも注目しながら読んでみてください。
人工知能が探偵をするという設定や数々のありえないようなトリックなど、他とはちょっと違う変わったミステリー小説を読みたいという方におすすめの一冊です!ぜひどうぞ!