このミス大賞隠し玉『愚者のスプーンは曲がる』が見事に面白い超能力モノでした

いやー面白い作品に出会ってしまいました。

それが桐山徹也さんの『愚者のスプーンは曲がる』ですよ。『愚者のスプーンは曲がる』。

先日発売されました第15回このミス大賞「隠し玉」の一つで、サイキックミステリーというジャンルの作品です。

いわゆる「超能力者」たちが登場する物語なんですけど、よくある超能力者モノではないんですよ。

とりあえず今月読んだ新刊の中では一番好きです。というか、私的には第15回このミス大賞の作品の中でも一番面白かったです。

本屋さんのポップに「ジャンルとわず、とにかく面白い小説が読みたいなら手に取ってみて」みたいなことが書かれていたんですが、まさに大正解でした。

これはぜひご紹介させてください(* >ω<)

 

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目次

桐山徹也『愚者のスプーンは曲がる』

主人公となるのは、子供の頃からとにかく「不運」に悩まされる大学生・町田瞬。

ある日、彼の元にキイチとマキという男女が訪れて、「上からの命令だ」的な理由で殺されそうになります。当然、瞬は何が何だかわかりません。

しかしなぜか瞬は殺されるのをギリギリで免れて、キイチ達から「この世には俺たちのような超能力者がいる」「そして瞬には、超能力者の能力を打ち消す能力がある」という事を告げられます。

しかも超能力者には、それ相応の「代償」があるのだそう。

例えばキイチは「触れる事なくモノを動かす」能力を持っているけど、「常に頭痛に悩まされている」という代償を持っていると言います。

そして瞬が今まで「不幸」だったのは、「超能力者の能力を打ち消す能力」の代償なのだと説明を受けます。

で、瞬はその能力を気に入られ(キイチが長年悩まされていた「頭痛」という代償が消えるから)、殺されない変わりにキイチたちの属する「超現象調査機構」で働く事になりました。

そこで瞬はあらゆるトラブルに巻き込まれていく、という物語です。

本当に超能力は存在するの?

今作の何が面白いのかって、「超能力を打ち消してしまう主人公の視点」で語られる物語というところですよ。

主人公の近くにいると、みんな超能力を使えなくなってしまうわけです。

例えば今作では

主人公・町田瞬…「超能力者の能力と代償を打ち消す能力」。代償は「不運」。

キイチ…「触れる事なくモノを動かす」能力。代償として「常に頭痛に悩まされている」

マキ…「液体の温度を上げる」能力。代償は「熱いモノを食べる事ができない」

村井…「痛覚を自由に操れる」能力。代償として「味覚を失う」

といった人物たちが登場するのですが(これは一部。もっとたくさん登場します)、主人公は近くにいるだけで〈能力〉と〈代償〉をどちらも打ち消してしまうので、その人の超能力を実際に見る事ができないんです。

で、これは主人公の視点で描かれているわけですから、超能力者たちの物語でありながら超能力を使うシーンが描かれていないんですよ。

なので主人公はいくら説明されても「超能力」があるなんて信じる事ができない。見ることができないわけですから。みんな超能力があると言っているだけで実はドッキリでした、なんて可能性もあるわけですよね(そんな事する理由もわからないですが)。

この設定と描き方がほんとに素晴らしかった。お見事!と思いましたね。

それでいて、ストーリーがちゃんと面白いんだからすごいです。「超現象調査機構」で働き始めた瞬は、そのあと大きな事件に巻き込まれていくのですが、ちゃんとミステリ感があってよかったです。

当然ですが、近くにいるだけで能力を消してしまうので、超能力者の物語によくある「能力を使用したド派手なバトル」というのが全くないですからね。なのにこんなに楽しく読める事にビックリしました。

ユーモアのセンスも好きだし、登場人物のキャラ立ちも書き分けもお上手。

ぜひ続きが読みたくなる物語でしたので、これを第一弾として第二弾第三弾とシリーズ化していただきたいですね。そのくらい魅力のある作品でした。

ぜひアニメ化もしていただきたい!!

おわりに

第15回のこのミステリーがすごい!大賞は

大賞……『がん消滅の罠 完全寛解の謎

優秀賞……『縁見屋の娘』『県警外事課 クルス機関

隠し玉……『スマホを落としただけなのに』『愚者のスプーンは曲がる』

でしたが、正直この中で一番楽しめた作品でした。かなり好きです。

ミステリー・ファンとかSFファンとかに限定せず「ジャンルは何でもいい。とにかく面白い小説が読みたい」という方に、強くオススメしたいです。読み始めたらページをめくる手が止まらず、あっという間に読めます。巻を措くあたわず、とはこのことです。

P.329,330「解説」より

と、解説で作家の北原尚彦さんが述べている通り、純粋に面白い小説を読みたいならぜひお手にとってみてください。

超能力ものって微妙そうだなあ、と思う方こそぜひ。これはよくある超能力ものとは全然違うんですから!( ゚∀゚)

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (4件)

  • 後れ馳せながら、ただいまこちら読み終わりました。というわけで、おじゃましにきましたよ(笑)
    エンディングというか、最終章の最後のエピローグぽい感じがなんか素敵ですよね!
    続きというかその後が気になりますね、瞬くん。
    最近は、サスペンス系を読んでたので、新鮮な内容でした。

    • hitomiさんこんばんわですー!
      そうそう、終わり方かなり好きなんですよ。ほんと続きがきになる感じで。ぜひシリーズ化してほしいんですけど、どうですかねえ(´∀`*)
      私もこのタイプのサスペンスは新鮮でしたー。やっぱりユーモアのあるサスペンスは良いですなあ。

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