先日、堂シリーズ第3弾、周木律さんの『五覚堂の殺人』が講談社文庫さんより発売となりました!
この堂シリーズは「奇妙な建物」を舞台に起こる殺人事件を描いたシリーズでして、いわゆる「館モノ」が好きな方にピッタリのミステリなんです。
このシリーズはもともと講談社ノベルスさんより出版されていたんですけど、今どんどん加筆修正されて講談社文庫さんから刊行されているんですよ。
表紙もすっっっごく美しくなっていて。超おしゃれです。
館モノがお好きならぜひ!( ´∀`)
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周木律『五覚堂の殺人』
タイトルの通り、舞台となるのは〈五覚堂〉という建物。
ここは志田幾郎(しだ いくろう)という日本を代表する哲学者の別荘です。
そんな場所に十和田只人(とわだ ただひと)は善知鳥神(うとう かみ)に呼びだされました。
そこで十和田は神からある映像を見せられます。
〈五覚堂〉で起きた惨劇の映像を。
事件の章
さて視点は変わって宮司百合子(ぐうじゆりこ)という女の子の物語。
彼女は同じゼミに所属する志田悟に、「お祖父さんの別荘である〈五覚堂〉に一緒に来て欲しい」と頼まれます。
そこでは亡くなった志田幾郎の遺言が発表されるとのことで、親族一同がみんな集まるのだそうです(なんで百合子が呼ばれたか、という理由は省略します)。
〈五覚堂〉という建物に興味があった百合子は、悟と共に〈五覚堂〉へと向かったのでした。
さて、親戚一同が集まった〈五覚堂〉で遺言が発表されました。そこには遺産の分配率が書かれていたのですが、さらに奇妙な「ルール」まで記載されていました。
ーーなお、注意すべきこと。
この遺言は、開示後三十時間を経過した後に発効するものであること。
また、次に示す禁忌を犯した場合、全員の分配率を零とすること。
一、これにより三十時間、何人も、五覚堂から外に出てはならぬ。
二、これより三十時間、何人も、五覚堂の外にいる人間と連絡を取ってはならぬ。
P.70より
なんと遺産が欲しければ三十時間もの間、外に出ることも連絡を取ることもするなというのです。
超無理矢理のクローズドサークルが出来上がりました。
志田幾郎は何故こんな奇妙な「ルール」を設けたのでしょうか。気になりますよね?
そして殺人は起きる。
遺産が零になるのはイヤに決まっています。集まった人々は三十時間をこの〈五覚堂〉で過ごすことにしました。
しかし、やはり殺人事件は起きてしまいます。しかも密室殺人!
普通ならすぐに警察に連絡することでしょう。
けれども出来ませんよね。五覚堂の外にいる人間と連絡を取ると、数十億という遺産が零になってしまうのですから。
百合子を含めた親戚一同は、殺人が起きているにもかかわらず、奇妙なルールに従い〈五覚堂〉に閉じ込められてしまったのです。
ポイント!
今作では探偵役の十和田は、五覚堂の監視カメラに映った事件の映像を、善知鳥神に見せられている、という形式をとっています。
しかもその五覚堂の中で見せられているのです。この構成が面白いところですね。
ということは、いま十和田がいるまさにこの場所で殺人事件は起き、いまここに他に誰もいないということは既に事件は終わった後、ということが予測されますが……。
さらにもう一つ。映像を見せられる前に善知鳥神からのヒントがありました。
「十和田さんには、その前にひとつ、知っておいてほしいことがあります」
「なんだ」
にらみつけるような表情の十和田に、神は続ける。
「五覚堂。この建物は『回転』します」
P.30より
どこがどのように回転するかは教えてもらえません。
しかし、この『回転』は間違いなく事件に大きく関わってきそうです。これもまた、気になって仕方がありませんね(´皿`●)
本格で、あまりにも数学的な。
今作はこれまでのシリーズ同じように「数学」要素が満載です。
とつぜん、意味のわからないような数学話をされます。ハッキリってちんぷんかんぷんです。
でもそこが堂シリーズの〈味〉と言いますか、「数学マニアが書いたミステリ小説」って感じがしていいんですよね。
周木律さんが数学好きだということが嫌というほどわかります。
一方で、この作品は「館モノ」としての楽しさがあるのも事実。
シリーズ一作目の『眼球堂の殺人』のあとがきで、周木律さんは次のように述べています。
だが、ひとつだけ自信を持って言えるのは、この建物はきっと、読者をわくわくさせられるだろうということだ。
こんな建物はあり得ない、だが、あり得ない建物で起きるあり得ない事件だからこそ、きっと読み手の心も躍るに違いないということである。
『眼球堂の殺人』あとがき P.544より引用
それはこの『五覚堂の殺人』でも変わりません。
この「奇妙な建物」というだけでワクワクしてしまうんです。「見取り図」や「図形」がたくさん挿入されていたりと、このような特殊な建築物を見れるだけでも私は満足なのです!
こんな建物、小説の中でしか見ることができませんから。それだけでも楽しいんですよ。
奇妙な建物での殺人事件が大好き!という方は、ぜひ一度「堂シリーズ」を読んでみてくださいな。
まずはシリーズ一作目『眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社文庫)』からご覧くださいませ(これから読まれるのあれば、加筆修正されている講談社文庫の方がおすすめです)。

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