伽藍堂(がらんどう)と読みます。
『眼球堂の殺人』『双孔堂の殺人』『五覚堂の殺人』に続くシリーズ第4弾、周木律さんの『伽藍堂の殺人』が文庫化されました。
なんだかんだで結局好きなんですよね、堂シリーズ。
もうリアリティとかどうでも良くて、「今度はどんな建築物と仕掛けを見せてくれるのだろう」と、そればかり楽しみにしていたわけですが、今回の『伽藍堂の殺人』はいつにも増してとんでもなかったです。
もうなんでもアリじゃないか!と思わせてくれる壮大な仕掛けでして、ああやっぱり周木律さんは面白いなあ、と思わされました。
関連記事
第一弾:これぞ本格!周木律『眼球堂の殺人』は館モノ好きなら必読の作品です
第二弾:堂シリーズ第2弾!周木律『双孔堂の殺人』はどこまでも新本格な館モノでした
第三弾:堂シリーズ3弾『五覚堂の殺人』発売。「回転」する館で密室殺人は起こる
『伽藍堂の殺人』
宮司百合子(ぐうじゆりこ)の元に、一枚の手紙が届きます。
それは、謎の宗教団体・BT教団の施設だった二つの堂が建つ「伽藍島」への招待状でした。
その島に数学者たちを集め、講演会をするのでぜひ来てくれ、という内容。
招待状がきたのは百合子だけでしたが、妹LOVEなお兄ちゃん・宮司司(ぐうじつかさ)は百合子が心配なため、保護者として無理やり島について行くことになりました。
さて「伽藍島」に着いてみると、そこには『眼球堂』『双孔堂』『五覚堂』での殺人事件を解決に導いた、世界中を放浪する天才数学者・十和田只人(とわだ ただひと)がおり、
さらに、建築家・沼四郎の娘であり謎めいた女・善知鳥 神(うとう かみ)の姿まであった。
全員が揃ったところで、予定通りに講演会が行われますがーー。
かつて宗教団体の施設だった孤島。そんな島に佇む館への招待状。集まる天才たち。しかも電話はないし、船もこない。
という見事なまでに本格ミステリな舞台設定ですが、さすが堂シリーズ。もう普通の推理小説ではありません。
この後もちろん殺人事件が起きるわけですが、その殺害のされ方も魅力的なものでした。
二人の人物が、マイクスタンドに串刺しにされていたのですから。「百舌のはやにえ」のように。

正直テンション上がっちゃいましたよね。
もうこの時点で、
・犯人は誰なのか
・どうやって串刺しにしたのか
・なぜわざわざそんな事をしたのか
というWHO,HOW.WHYがそろっちゃいましたから。
特にWHYが気になるところですよね。なんでわざわざ「百舌のはやにえ」のようにする必要があったの?って。それが気になってココから一気読みでした。
しかも「その二人が一緒に死ぬ」という事が、どうやっても瞬間移動したようにしか思えない状況で、さらに現場は混乱していきます。
これぞ堂シリーズの醍醐味!な仕掛けが炸裂。

解説で「”堂”シリーズはついにここまできたか」と村上貴史さんが述べていますが、まさに「そういうことか」と思いました。
毎回とんでもないトリック使ってくる堂シリーズですので、ある程度は覚悟していたのですが、予想を超えてきました。これだけ破天荒な大仕掛けは久しぶりです。
つまり先ほどの、「百舌のはやにえ」のような串刺し殺人についての仕掛けなんですけど、もう大笑いですわ。『斜め屋敷の犯罪』レベルかもしれません。笑
やっぱり定期的にコレくらいのを味わっておかなければいけませんね。
間違いなくミステリとしては賛否あるのも納得なんですけど、好きなんですわーこういうバカミスっぽいの。
シリーズを追うごとに仕掛けが壮大に、とんでもなくなっているんですが、最終的にどうなっちゃうんでしょうね。
そしてあの結末。
うひゃーとんでもない仕掛けを見せてくれたなー。
満足満足!と思いきや、最後の最後で、また凄いのぶちこんでくれました。
終わったと思ったらエピローグでどんでん返しされるのが当たり前になってきましたね。それにしても、この終わり方、そんなのアリ?!って感じです。
これも評価が大きく分かれてしまう原因の一つでしょうね。笑
この先、堂シリーズはどのような方向に向かっていくのでしょうか。
ここまできたら、今後の展開が気になって仕方ありません。堂シリーズ、7作完結で構想されているようですが、最後までお付き合いさせてください。
おわりに
・とにかく「大掛かりな仕掛け」を楽しみたい。
・そんなトリックうまくいくわけないでしょ!笑(喜び)と叫びたい。
という方に特におすすめ。
ただ一つ、最大限に楽しむためにも「これまでのシリーズ作品を読んでいる事」が条件になりますね。
間違いなく『眼球堂の殺人』『双孔堂の殺人』『五覚堂の殺人』を読んでいた方が楽しめます。というか読んでいないと、あの衝撃が弱まってしまうんです。
一作目の『眼球堂の殺人』を面白いと思っていただけたのなら、ぜひ続けて読んでみてください(´∀`*)




先日ご紹介させていただいたアンソロジー『謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー (講談社タイガ)』でも、周木律さんは『煙突館の実験的殺人』というトンデモトリックを使った作品を描いてくれました。
ぜひそちらも。

謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー (講談社タイガ)
このシリーズは、以前より、森作品との「酷似」を指摘されて、「本格ミステリーワールド」では二階堂氏や辻氏に「物マネをやめない限りダメ」と酷評されたり、一部評論家筋から総スカンをくらったりと、何かと厳しい風当たりです。
たしかに、文学的な観点からみると、そういわれるのも致し方がないのかな、とは思ってしまいます。それほど、雰囲気が、完全に「森ワールド」なんですよね。
だけど、私自身はこの周期律さんの《堂シリーズ》すごく楽しみにしているシリーズのひとつなのです。
森さんは、ミステリーものをほとんど書かなくなり、講談社タイガの《Wシリーズ》は完全にSFですし、ノベルス版の《Gシリーズ》や《Xシリーズ》もほとんどSFよりになっていって、純粋な本格ミステリーはもう望むべくもない感じです。ですので、周期律さんが、変わって、森ワールド風の新作ミステリーを書いてくれることがとてもうれしいのです。むしろ森さんの大ファンである自分にとって、そして《S&Mシリーズ》や《Vシリーズ》が大好きな自分にとって、周期さんが森さんに酷似している作品を発表し続けることは、自分にとっては「うれしいできごと」でしかなく、まかり間違っても、このシリーズを、森ワールドと全く似ていない作風になることは、まったくもって望んでいません。むろん、これを書けるのも、周期さんが力のある作家である証左思っています。たしかに、こういう考え方は失礼に当たるかもしれませんし、正統派ではない読み方かもしれませんが・・・みなさまは、いかがおかんがえでしょうか。
naoさんこんばんは!
このシリーズが、森さんの真似だとか、劣化森作品だとか、あまり良く言われていないのは私も耳にしたことがあります。
初めて読んだ時は、確かに森さんっぽいな、とも思いました。
しかし、断言しましょう。私も《堂シリーズ》が好きです!!!
私も《S&Mシリーズ》や《Vシリーズ》が大好きであり、やはり周木律さんのこの作風は、どうしても好みなのです。
しかも完全に同じというわけではなく、しっかり周木律さんにしか書けないものが表現されていると思っています。周期さんの建築物、やっぱり魅力的ですよ。
なので初めて読んだ時は興奮しましたし、そのあと評判があまり良くないことを知って驚いたものです。
いやー、naoさんも《堂シリーズ》が好きだと知れて嬉しいです(ノω`*)
好きなの自分だけなのかな……って、寂しかったんです 笑。本当に、ビックリするくらい良い評判を聞かなくて。。ありがとうございます。