国内ミステリー小説

浅倉秋成『フラッガーの方程式』- 伏線がたぐり寄せる奇跡の青春ストーリー

「物語の主人公になって、劇的な人生を送りませんか?」

いたって平凡な生活を送る高校生・東條涼一は、日常をドラマに変える「フラッガーシステム」のモニター・デバッガー役を務めることに。

フラッガーシステムとは、特殊な電波を発信して人々の思考や行動を変化させることで、現実世界に“伏線”を登場・回収させて人生の上に一級品の物語を創り上げてくれるシステム。

このシステムを使えば、誰もが物語の主人公になれるというわけなのである。

同じクラスの佐藤さんに恋心を抱いている涼一は、胡散臭い話だと思いながらも、夢のような恋を経験し佐藤さんと仲良くなるためにモニター役を引き受けるが……。

「急に二人揃って海外出張する両親」「急に女の子と同居するはめになる主人公」「なぜか富豪の娘の生徒会長と毎日デート」など、どんな行動もフラグとなってしまう世界で、涼一はどのような結末を迎えるのか?

ラブコメアニメを彷彿させつつも鮮やかな伏線回収は見事!

不思議なシステムによって物語のような人生を送ることになった主人公・涼一。

フラグの乱立するラブコメのような毎日、システムの影響で涼一にとって都合の良いおかしな行動を取る周囲の人々。

涼一は作中唯一のツッコミ役としてガンガンそれらの事象にツッコミを入れていくので、テンポよく物語が進んでいきます。

涼一と各登場人物の軽快な掛け合い・良い意味での読みやすさが、本作の良い点の一つ。

ラブコメのご都合主義展開にメタ的にするどく突っ込んでいく内容に、ライトノベルや深夜アニメのファンはもちろん、それらにそこまで触れたことのない人も楽しめるはずです。

しかしそれだけでないのが本作の魅力。

ギャグテイストで彩られた物語の前半部分には伏線が数えきれないほど仕込まれており、それが後々になって効いてくる仕組みになっているのです。

「こんなところも伏線だったのか!」と声に出して驚いてしまうほど、自然に張られ爽快に回収されていく伏線たちに、読み進める手が止まらなくなるでしょう。

ご都合主義展開と伏線回収の連続の果てにどんな結末が訪れるのか?

それはぜひあなたの目で確かめてみてください!

斬新な目線で繰り出される舞台設定の巧妙さ、そしてそれで終わらない感動

本作の作者である浅倉秋成は、2012年12月の第13回講談社BOX新人賞“Powers”を受賞してデビューを果たした、新進気鋭の推理小説・ライトノベル作家。

1989年生まれとまだ若く、その独特の視点から斬新な設定のミステリを発表。

デビュー作である『ノワール・レヴナント』では、「他人の幸福度が見えてしまう」「念じることで触れたものを破壊してしまう」といった奇妙な能力の持ち主である高校生が繰り広げる推理劇を描き、巧みな舞台設定と物語構成、見事な伏線回収でミステリファンを驚かせました。

最高のクラスで起きた連続自殺事件の謎を追う『教室が、ひとりになるまで』、いつまでも高校三年生を繰り返し18歳として生き続ける“彼女”の解明に奔走する『九度目の十八歳を迎えた君と』など、「フラッガーの方程式」のあとも次々と読者のミステリ心をくすぐる作品を発表し続けています。

もちろん、設定の奇抜さだけがこの作者の特徴ではありません。

作品の多くが高校を舞台としており、高校生特有の青春と衝動、それによるほろ苦い想いまでを、作者は作品に込めているのです。

前半がギャグテイストかつラブコメへの風刺満載で進んでいく本作も、後半に進むにつれてシリアスみが増していき、ラストの感動のシーンへと盛り上がりを見せます。

デビューから現在までの作者への高評価の理由の一つが、斬新で巧妙な舞台設定にあること、そして決してそれだけでない魅力が作品に溢れていることが、本作を読んだ方にはわかっていただけるのではないでしょうか。

ライトノベル青春譚×ミステリ物の一つの到達点!今大人の人におすすめしたい本

これまでたくさんの名作が生み出されてきた、学生モノ×ミステリという分野。

「フラッガーの方程式」は、この分野の中でも確実に一つの到達点に至ったと言っても過言ではないでしょう。

巧みな文章力と随所に織り込まれる多彩なギャグ、コメディチックな物語展開に、読者は思わず引き込まれてしまい、そこで計算されつくした伏線回収によって目が離せなくなってしまいます。

舞台設定は高校でも、その見事な伏線回収や展開は大人の方にこそ読んでほしいものだと思いました。

他の作品群を見る限り、作者の得意分野はこの青春譚×ミステリのよう。

本作を読んで好感触だった方は、ぜひ他の作品も読んで今後の作者の発表に備えてみるのもおすすめです!

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