本屋大賞ノミネート作品『フーガはユーガ』-伊坂幸太郎さんにしか書けない最高峰の面白さがここに。

伊坂幸太郎さんの作品というだけで期待してしまう方も多いことでしょう。もちろん私もその一人。

実際に1年ぶりの新作ということで、かなり話題になっていますね。

今回ご紹介する『フーガはユーガ』は、2019年の本屋大賞ノミネート作品でもあります。

伊坂幸太郎さんの作品という時点で一筋縄ではいかないことはおわかりかと思いますが、「双子」「瞬間移動」という興味が湧かないわけがないキーワードが光っています。

「僕たちは双子で、僕たちは不運で、だけと僕たちは、手強い。」というこの文章だけで、引き込まれてしまうのではないでしょうか?

まさにページをめくる手が止まらなくなる1冊です。

目次

伊坂幸太郎『フーガはユーガ』

「フーガはユーガ」の主人公となるのは、常盤風我と常盤優我の双子。

ふたりには、秘密の能力がありました。というのも、誕生日の日だけふたりは入れ替わることができるのです。

自分たちの意思とは関係なく、2時間おきに勝手に入れ替わってしまうのです。

そんなふたりは、幼少期に実の親から虐待を受けていました。

父親は暴力を振るい、母親はそれを見て見ぬふりをするネグレクト……父親は女を連れ込み、母親は外に男を作り出ていきます。

ひどい家庭環境の中でも双子は手を取り合い、乗り切っていきます。

双子は成長していき、風我には小玉という彼女ができます。

小玉は両親を亡くしており、叔父のところに身を寄せているもののその叔父から虐待を受けていました。

叔父は観客からお金を取り、小玉が苦しんでいる姿を見せるというショーをおこなっていました。

そこで風我と優我は、小玉の叔父に自分たちの能力を使います。

 

時が経ち、大人になった優我はファミリーレストランでテレビ制作会社でディレクターをしている高杉という人物と話をしています。

実はこの高杉という人物が……という形でストーリーが展開していきます。

双子の二人は入れ替わり、何と戦うのか。

双子が入れ替わる、なんてかなり突飛な設定に思えるでしょう。

ただ、これが本当に起こり得るのではないかと思えるくらいに、リアリティのある背景をしっかりと描かれています。

それに、この作品はとにかく重たいです。あらすじのほうでも触れましたが、子どもへの虐待というのがガンガン描かれています。

それもさらっと描いているのではなく、よりリアルに、よりきめ細やかに描かれているので、読んでいて胸が苦しくなることも多々あるかと思います。

作りものだとわかっていても、実際に双子がいて、虐待されていて、入れ替わりが起こっている……そう思ってしまう作品なのです。

そう思わせるだけの文章力と表現があるのです。

重く暗いトーンの中でも伊坂幸太郎さんならではの表現といったものも散りばめられています。

伊坂幸太郎さんの作品をこれまでにたくさん読んでいるという方であれば、散りばめられている伏線も何となくわかってしまうかもしれません。

坦々とストーリーは進んでいくのですが、その中でも「そう来たか!」と思わせるような展開があります。

言われるまでもなく、一度読み始めるとラストまで駆け抜けるように読み進めてしまうかと思うのですが、ラストはハッピーエンドとは言えないかもしれません。

スカッとするようなラストではなく、かなり余韻の残るラストに仕上がっています。

だからこそ、2回3回……と繰り返し読んでしまうのです。

伊坂作品の面白さを改めて実感させられる一冊

伊坂幸太郎さんの1年ぶりの新作ということで、かなり期待をしている方も多いでしょう。

『フーガはユーガ』はその期待を裏切らない作品に仕上がっています。

双子が入れ替わるというと突飛な設定に思えるかもしれませんが、その背景として描かれている虐待などの非道な仕打ちは今の時代だからこそ目をそらしてはいけない事実です。

もちろん作りものではありますが、これと同じようなこと、これ以上のことが現実に起こっているということは誰もが胸に刻まなければいけません。

その中でも必死で生きていく双子、その双子が救いようのない「悪」を倒していくカタルシス……読み進めていく中でさまざまな感情が絡み合います。

ハッピーエンドではないので、読み終えたときにスカっとした気分にはならないでしょう。ただ、それが伊坂幸太郎さんの作品らしい余韻を残してくれるのです。

伊坂幸太郎さんの作品だから楽しむというだけではなく、今の時代にこの作品が生まれたということの意味を噛みしめながら読み進めたい重い1冊とも言えます。

もともと伊坂幸太郎さんの作品は好き嫌いが別れる傾向にありますが、この作品は取り扱っているテーマやそのリアルな描写ゆえによりいっそう好き嫌いが別れるかもしれません。

嫌いというよりも、目を反らしたくなるような現実がそこにはあるのです。

ただ、だからこそ読む価値があるとも言えるのではないでしょうか?

私はそう思います。

本屋大賞ノミネート作品でもありますし、伊坂作品としても抜群に面白いです。ぜひこの機会に。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (2件)

  • まだこれから読むところですのでスッキリとした脳みそで向かいたいのですが

    双子が入れ替わる?2時間おきに? 単純な設定なのか双子だからこその特異な何かがあるのか… まあどうせ伊坂ワールドなんだろうなあ(褒め言葉)と思いながらページをめくろうと思います

    しゃべる案山子だったり、日本人風の謎のブータン人だったり、入れ替われる双子だったり

    キャラが強すぎて飽きる日が来るのだろうかと思ったりしますw

    • こはるさんこんにちは!
      いやー、やっぱり伊坂さん、流石の面白さです。
      ぜひぜひ楽しんでくださいな!相変わらずの伊坂ワールドです(*´∀`*)

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