門前典之『エンデンジャード・トリック』-新本格ミステリー愛読者への挑戦状がついた愛すべきバカミス

長野県にひっそりと存在する百白荘、さらにその周辺のゲストハウスが舞台。

探偵の蜘蛛手は過去に起こった事件を解決するためにこの土地に足を踏み入れました。

しかし、過去の事件に迫る内に蜘蛛手たちの周囲では次々と事件が起こります。

日本家屋建築の百白荘と、サイコロを積み上げたような奇妙な設計のゲストハウスの間で起きた事件の謎を解くことはできるのか……!

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門前典之『エンデンジャード・トリック』

建物の見取り図や参考図面や関係者の時系列行動表がが何度も登場し、ミステリー小説の王道でありながら意外性のあるラストが話題となりました。

驚きのトリックや犯人の動機に、思わず唸ってしまうことでしょう。

読み進める内に謎が謎を呼ぶ複雑な展開が続きますが、謎解きのスピード感は非常に爽快です。本文中に散りばめられた伏線にも細心の注意を払いながら読みすすめましょう。

「しっかり読んでいてもなかなか見抜けないトリックが多い」という感想も多く、最後までドキドキハラハラしながら読みすすめることができます。本文を読んでいるときに違和感を感じていても、解決編ではすべて一気に回収してくれます。

今作には、「新本格ミステリー愛読者への挑戦状」というものが出てくるのも特徴の一つです。

ただ物語を読むだけでなく、読者も巻き込んでいくスタイルになっています。

本格ミステリーのトリックはある程度見抜けるというコアなファンでも騙されてしまうような仕掛けが仕込まれているかもしれません。ぜひ主人公の探偵蜘蛛手と一緒に、真実を暴いてみてください。

作者の門前典之氏は『建築屍材』で第11回鮎川哲也賞を受賞しました。

その衝撃的な作風がミステリー小説ファンを驚かせ、以降次々に話題作を生み出しています。

今作『エンデンジャード・トリック』のように建築知識を活かしたトリックも見ものです。

建物の構造を利用したトリックが登場するミステリー小説は世界中にたくさんありますが、門前氏の作品にはこれまでにはないような仕組みも隠されています。

ミステリー小説にあまり触れてこなかった方だけでなく、ミステリー小説を数多く読んできたという方にとっても楽しめる作品と言えるでしょう。

また、本作は門前氏の作品の中でも人気のキャラクター、蜘蛛手が登場します。

蜘蛛手が事件に巻き込まれる作品はこれで五作目で、楽しみにしていたというファンの方も多いのではないでしょうか。

シリーズものですが、この『エンデンジャード・トリック』単品でも十分に楽しめるようになっています。今作を読んで、気になった方は過去の作品に触れてみるのも良いでしょう。

タイトルの「エンデンジャード・トリック」とは、「危機に瀕した仕掛け」という意味があります。

そのタイトルのとおり、王道とも言えるトリック、使い古されたトリックも数多く登場します。

しかしそれらが複雑に交わり合い、物語の真相をわかりにくくしているという設定には驚かされるばかりです。古典的なトリックと現代という舞台との組み合わせも珍しく、令和の時代にこんな物語を楽しめるなんて!と喜ぶファンの声も多いです。

門前氏の作品は「バカミス」と評されることもあります。「バカミス」とは、「バカらしいミステリー小説」という意味ではなく「そんなバカな!?と驚くような仕掛けがされているミステリー小説」のことを指します。

ミステリー小説にはさまざまなパターンがありますが、最後まで気を抜けない門前氏の「バカミス」作品は、いくつ読んでも飽きることがありません。

普通に読んでいるだけでは見抜けないトリックもたくさんあり、想像力を駆使して読み進めましょう。

ミステリー小説の謎は主人公よりも先に解きたい!という方は、ぜひ作者からの挑戦状を受け取ってみてください。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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