今年三月に発売された、第55回メフィスト賞受賞作『閻魔堂沙羅の推理奇譚』から二ヶ月。
早くも第二弾となる『閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室』が発売となりした。ヤッホイ!(*>∇<)
好きだったんです、第一弾の『閻魔堂沙羅の推理奇譚』が。
設定が斬新だし、キャラクターも良いし、ユーモアな展開を取り入れつつしっかりミステリしているし。
「これはミステリ好きの方にはぜひ読んでみてほしい!」ってなワケで、内容をサクッとご紹介させてくださいな。
どんな展開かきになる方は、第一弾の記事も参考にしてみてください!
・『閻魔堂沙羅の推理奇譚』-第55回メフィスト賞受賞作は「死者復活」をかけた謎解き推理ゲーム!
第1話 武部健二 43歳 刑事 死因・刺殺
榎並(えなみ)という男性が殺害された。
後頭部に灰皿を叩きつけられたようだ。
女癖が悪かったようで、女性関係を中心に捜査していくと、容疑者は3人にの女性に絞られた。
この中に犯人はいる。そう判断した武部健二は、必死に捜査を開始した。
しかし、ようやく手がかりが見えてきたところで、夜道、自宅に帰るとこを何者かに背後から刺され、死亡してしまった……。

ようこそ、閻魔堂へ!
再び武部健二が目を開けると、そこは真っ白な部屋で、硬い椅子に座らされていた。
そして、目の前にいる美少女。
彼女の名は沙羅(さら)。
閻魔大王の娘です。
沙羅ちゃんの仕事は、死んだ者が天国行きなのか地獄行きなのかを決めること。
なかなか理解し難い状況ではありますが、武部健二はどうしても知りたいことがあった。
俺は、誰に殺されたのか。
「いや、もう十分。分かった。大人しくする。でも、教えてくれないか?俺は誰に殺されたんだ?」
「教えられません」
「なぜ?」
「霊界のルールで、当人が生前知らなかったことは教えていけない決まりなんです。以後、質問は受け付けないので悪しからず」
P.58より
どうしても教えることはできない、という沙羅ちゃんでしたが、武部健二が強く粘った結果、一つの提案を出してくれました。
「じゃあ、こうしましょう。先ほども言った通り、あなたが生前知らなかったことを、私が教えるわけにはいきません。でも、あなた自身が推理して、答えにたどり着くぶんにはかまわない。
あなたが誰になぜ殺されたのか、自力で推理して正解を導き出せたら、生き返らせてあげましょう」
(省略)
「大丈夫です。今あなたの頭の中にある情報だけで正解を導き出せます」
「そうなのか」
「じゃないとアンフェアですから。名づけて、死者復活・謎解き推理ゲーム。どうしますか、やりますか?」
P.62より
死者復活・謎解き推理ゲーム。
なんとワクワクする響きでしょう。
つまりですね、これはある意味「読者への挑戦」でもあるんですよ。
「今あなたの頭の中にある情報だけで正解を導き出せます」ということは読者に対しても同じことですからね。
さあさあ、武部健二より先に犯人を突き止めることはできるでしょうか。
ぜひ頑張ってください(´∀`)ノ
第2話 池谷修 30歳 死因・?

人生のどん底にいた池谷は、性格の全く違う阿賀里と出会い、ゆすり屋を始める。
お互いのコンビネーションは抜群で、みるみるお金は溜まっていき、貯金はついに念願の六千万に到達した。
この六千万溜まったら、池谷と阿賀里で三千万づつ分け、それぞれ好きなビジネスを展開する予定だった。
しかし、実際に六千万溜まってみると、阿賀里に三千万もの大金をあげることが嫌になってきた池谷。
阿賀里に三千万もの価値はない。
そう判断した池谷は、阿賀里の殺人計画を練り始める。
パスワードをどうやって入手するか
しかし、六千万を預けている金庫を開けるには二つのパスワードが必要になっており、池谷と阿賀里はそれぞれ一つしかパスワードを知らなかった。
こうしておけば、一人が全額引き出して逃走することもできない、とゆすり屋を始めた時に決めたルールだ。
今になって、このルールが厄介になる。
阿賀里を殺害する前に、どうにかして阿賀里からもう一つのパスワードを聞き出さなくては。
一体、どうやって。
そして池谷は死んだ。
阿賀里を殺害するはずだったのに、なぜか池谷が死んでしまうことになりました。
阿賀里は一体なぜ、どうやって死んだのか謎のままです。
知りたい。なぜ俺は死んだのか。
そこに現れたのが、沙羅ちゃんです。
「じゃあ、こうしましょう。先ほども言った通り、生前あなたが知らなかったことを、私が教えるわけにはいきません。でも、あなた自身が推理して、自分で言い当てるにぶんには構わない。あなたはなぜ死んだのか、その死因を言い当てることができたら、生き返らせてあげましょう」
P.175より
そんなこと分かりそうもないですが、今回も沙羅ちゃんは、「死因を特定するための情報は出揃っている」と断言しています。
あなたの頭の中にある情報と知識だけで、ちゃんと死因を特定できる、と。
そんなこと言われても……と困惑する池谷に、沙羅ちゃんは特別ヒントを差し上げます。
「あなたの死因は、病死でもあり、事故死でもあり、他殺でもあります。それがヒントです。以後、質問は受けつけないので、あしからず」
P.182より
???
ますますわけがわからなくなってきました。
病死でもあり、事故死でもあり、他殺でもある。そんなに全て揃った死因があるでしょうか?
果たして、池谷はなぜ、どうやって殺されたのか。
その答えは本書で明らかに!
おわりに。

さて、最後の第3話『浦田俊矢 34歳 会社社長 死因・撲殺』がどんなお話であるかは、読んでからのお楽しみです。
一つ言えることは「安定して面白い」ってことですね。
このシリーズの特殊な設定が存分に生かされています。
というか、一作目の『閻魔堂沙羅の推理奇譚』に続き、ハズレの短編が一つもないですねこのシリーズ。
もう完全に沙羅ちゃん&シリーズのファンであるのでこれからどんどん続編をお願いしたいです。
と思っていたら、2018年今秋に第三弾が発売予定とのことです!!ヤッタネ!!
ぜひ第三弾が発売となる前に、一作目、二作目を一気に読んでみちゃってください。
ミステリとしての面白さは保証しますよん(`・ω・´)

水準の高い短編を定期的に書いてくれる人って、いまあんまりいないと思うんですよ。ありがたいことです。このシリーズの長編も読んでみたい気もするんですけど、作りにくいかな。あの短編のあのラストはなかなかにゾワっとしてしまうような、上手い落ちでしたね。
そうですよね。この方の短編って安定して面白い。
確かに長編読みたいですねー!難しいとは思いますが、ぜひ挑戦していただきたいです。
このゾワっとがたまらないんですよねえ。。。ふっふっふ(´∀`∩