やって参りました。
みんな大好きメフィスト賞のお時間です。
死者復活をかけた推理ゲーム、という何やらメフィストらしい匂いが漂っていますが、実際のところはどうなんでしょう。
毎回メフィスト賞を読むときは「どんな奇天烈なトリックをぶち込んでくれるのだろう」と期待しながら読んでしまうのですが(´∀`*)
早速見ていきましょう。
木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』
4編からなる連作短編。
死んだ人を天国か地獄のどちらかに送るのか、を決める仕事をしている閻魔大王の娘・沙羅が出会った4人の運命を描きます。
「じゃあ、こうしよう。
霊界のルール上、私が犯人を教えるわけにはいかない。でも、あなた自身が推理して当てる分にはかまわない。犯人をみごとに言い当てることができたら、特別に生きかえらしてあげましょう」
「犯人を?でも……」
「一応言っておきますが、今のあなたの頭の中にある情報だけで、それを正しく組み合わせれば、犯人を言い当てることができます」
「つまり情報は出そろっているというわけね」
P.50より引用
名付けて、死者復活・謎解き推理ゲーム。
ただし間違えたら地獄行き。
『第一話 緒方智子 17歳 女子高生 死因・絞殺』では、タイトル通り部室で絞殺されてしまった女生徒が、「誰に殺されたか」を自分で推理していきます。
沙羅ちゃんが「今のあなたの頭の中にある情報だけで、それを正しく組み合わせれば、犯人を言い当てることができます」と言っているように、
犯人となる手がかりは読者にも全て伝わっている状態です。
つまり「読者への挑戦」ともなっているわけです。
この試みは面白いですよね。被害者自身が推理するって。
一緒になって読者も推理を楽しめる。「えー本当に全部手がかり出たのー!」と見事に転がされながら読んでました。
ただし難易度は結構優しくて、推理が得意な方ならすぐに解けるのではないでしょうか(私は放棄しました)。
「生き返らせるとは言ったけど、性格には時間を巻き戻すんだ。時間と時空というのは連動しながら一定の方向に進んでいくんだけど、それを逆巻きするの。あまり巻き戻すと、あとで調整が面倒になるから、あなたが殺される直前に巻き戻すね」
P.75ページより引用
ただし、ここで起きた出来事は忘れてしまうらしい。
ということは、殺される直前に戻してもらっても、その記憶がないのならまたすぐ殺されてしまうのではないでしょうか。
果たして沙羅ちゃんはどうしてくれるのでしょう。
メフィスト賞としてのクセは弱いかな?
4話とも「推理が当たったら生きかえらしてあげる」という同じパターンで構成されており、わかりやすく読みやすい仕上がりになっています。
ただし、死者復活・謎解き推理ゲームという設定自体は斬新なものの、全体的にはかなりライトな雰囲気で、特別尖った部分もないというか。
メフィスト賞といえば『○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)』や『NO推理、NO探偵? (講談社ノベルス)』みたいな破天荒な作品を求めている自分がおり、正直物足りなさを覚えてしまったのは事実です(まあこの2作品が破天荒すぎるんですけどね)。
ライトミステリとしては面白いので、良い意味で万人受けしそうです。
だからその分サクッと読むのには最適。早い人なら一時間ちょっとで読めるんじゃないかなあ。
連作短編集ならではの「各話に忍ばされていた伏線が最終話で一気に回収され〜」みたいなこともないし。
一編一編でしっかり解決して気持ちのよい終わり方をしているので、これはこれでいい。
後味が悪い話が一つもないのも嬉しいところ。
続編も出るらしい
2018年5月に第二弾が出るみたいですね。
沙羅ちゃんのキャラクターがかなり好きなので、結局買ってしまうんだろうなあ。
次はもう少し驚きとひねりを効かせた話があると嬉しい。

コメント
コメント一覧 (2件)
僕も大好きメフィスト賞です。推理の面白さが感じられる、ライトで沙羅ちゃんの可愛いミステリでしたね。長編で、この設定を活かした特殊設定ミステリも読んで見たいですね。あとはもう少し毒のあるというか、癖が強いというか、ぶっ飛んだメフィスト賞らしい展開があると楽しいかもですね。(そんな作品ばかり読みたがる僕はもう重症)
ですね。
キャラクターも良いし、この設定を活かしたミステリをまだまだ読みたいです。
続編はもっとブッとんでくれるといいのですが……(私も重症)。