名探偵エラリー・クイーンがあらゆる事件を次々に解決していく短編集です。
エラリー・クイーンは大富豪の遺産を相続することになった娘の護衛のため、ある邸宅に向かいました。
その邸宅は荒野に佇む巨大で真っ黒な屋敷で、不気味な雰囲気すら漂っています。
そして娘に相続される遺産はすべてこの屋敷のどこかに隠されているという。
ところがエラリーたちが翌朝その屋敷に向かうと、なんと屋敷そのものが消えていたのです。
大掛かりな消失トリックを楽しめる良質なミステリー作品「神の灯」の他、「宝捜しの冒険」、「がらんどう竜の冒険」、「暗黒の家の冒険」、「血をふく肖像画の冒険」、「人間が犬をかむ」、「大穴」、「正気にかえる」、「トロイヤの馬」の九篇を一度に楽しめます。
『エラリー・クイーンの新冒険』
エラリー・クイーン作品は長編、中編、短編など多くの作品が残されていますが、中でも中編は評価が高い作品が多いです。
とくに今作に収録されている「神の灯」は、ミステリー小説ファンは必読の作品です。もし未読であれば、「神の灯」だけでも読む価値ありです。
エラリー・クイーンと言えばスタイリッシュな雰囲気の作品も多いですが、今作はゴシックな古典的な雰囲気も楽しめます。
不気味な屋敷が消失するという怪奇がホラーテイストも加えており、いつものエラリーシリーズとは少し違った印象です。
しかし解決に進むにつれてエラリーの推理が冴え渡り、いつもの爽快感のあるラストへたどり着きます。
その他の短編は短いながらもエラリー作品の良さが詰まっている、ファンにとっては非常に嬉しい内容になっています。
四本の「宝捜しの冒険」、「がらんどう竜の冒険」、「暗黒の家の冒険」、「血をふく肖像画の冒険」ではユニークな登場人物たちを楽しむことができ、派手な事件や大掛かりなトリックは登場しないもののライトな読み心地でさらりと読めます。
残りの四本はスポーツシリーズとしてファンに親しまれています。
探偵エラリー・クイーンがポーラ・パリスという美女とさまざまなスポーツに挑戦し、野球、競馬、ボクシング、フットボールといったスポーツを楽しむ中で起こる小さな事件たちを解決していきます。
この四作はそれぞれに一話完結ですが連作になっていますので、続けて読むとより面白さが倍増します。
全編通して難解なトリックや複雑な人間関係は登場せず、気合いを入れて読むミステリー小説は収録されていません。
中編は「神の灯」のみで残りの八篇は短編なので、さらりと読みたいときに嬉しい一冊です。
名作と名高い「神の灯」を読めるという点だけでも高く評価できる一冊ですが、もちろん残りの短編たちも充実しています。
エラリー・クイーンシリーズは日本でもたくさん登場していますが、短編集は「エラリー・クイーンの冒険」に続く二作目です。
長編と読み終えたあとの気分転換にライトな作品を読みたいという方は、この冒険シリーズの短編集をチェックしてみてください。
主人公と同名の作者、エラリー・クイーンとは、実際にはフレデリック・ダネイとマンフレッド・ベニントン・リー氏の共同のペンネームの一つです。
二人はそれぞれプロットと文章の得意な分野を担当し、エラリー・クイーンシリーズを発表しました。
現在でもエラリー・クイーンに影響を受けたというミステリー作家は世界中におり、推理小説の中でパロディが見られることも多いです。
エラリー・クイーンシリーズにはミステリー史に残る名作の長編や中編が多いですが、多数の短編も見逃せません。
一度にエラリー・クイーンの短編をたくさん読みたいというときに嬉しいのが今作「エラリー・クイーンの新冒険」や前作の「エラリー・クイーンの冒険」などの短編集でしょう。
新訳が出版されており、古いものは翻訳が苦手で挫折してしまったという方でもチャレンジしやすくなっています。この機会にぜひ手に取ってみてください。

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