『エラリー・クイーンの冒険』の【新訳版】が出ました!
嬉しいですねえ、嬉しいですねえ。
『エラリー・クイーンの冒険』は11編からなる短編集であり、それぞれクイーンの持ち味がしっかり楽しめる贅沢なものばかりが揃っております。
翻訳モノが苦手な方でも、短編で、しかも訳が読みやすいので非常におすすめの一冊ですよん。
まだ未読であればこの機会が最大のチャーンス!ということで宜しくお願いいたします( ゚∀゚)
『アフリカ旅商人の冒険』
大学で応用犯罪学を担当することになったエラリーが、三人の生徒を連れて殺人現場へと向かう。
そこで、彼らに自分自身の力でこの事件を推理させる。
という、三人の人物から三通りの答えが出る「多重解決」もの。
三人の答えはバラバラ。誰の回答が正しいのか?
「でも、クイーン先生」バロウズが言い返す。「僕たちの誰が正しいんですか?全員、違う結果を出しましたけど」
エラリーは手を振った。
「正しい?理論を構築するという作業において、そんなことは些末な問題だ。重要なのは、君たちが成し遂げた考察そのものですーー鋭い観察力を発揮し、まだまだ未熟とはいえ、原因からそれなりの結果を導き出した。ただし事件そのものについては残念ながらーー全員、間違っていますね!」
P45より
本物の殺人事件を生徒に推理をさせる、というエラリーの趣向が面白い一編。
そのおかげで短い中でも多重解決をキッチリとやってくれてます。
『首吊りアクロバットの冒険』
とある女性曲芸師がロープで首を吊られ殺害された。
しかし現場には、リボルバー、ペーパーナイフ、ガスコンロ、かなづちなど、首吊りなんかより殺害しやすいものが四つもあった。
それなのに犯人はなぜ、殺害方法に手間のかかる首吊りを選んだのか。
「マイラ・ブリンカーホフの首吊りですが、ぼくはそもそも事件の始まりから不思議でしょうがなかった。なぜ犯人は被害者の首を吊ったのか? 吊るすなんて方法より、もっとシンプルで、要領のいい、簡単な、余計の手間のいらない殺人の手段が、すぐそこに四つもあったのに。いいですか、犯人が彼女を殺すのに、簡単とは言えない、手間のかかる、回りくどい方法を取ったと言うことは、つまり、あえてその方法を選んだってことです」
P.85より
これは「謎」そのものが魅力的な一編ですね。
首吊りしなければならなかった理由って一体なんでしょうか。
『ガラスの丸天井付き時計の冒険』
骨董商マーチン・オールが、自分が経営する骨董店で殴り殺された。
現場の血の跡からオールは、死にそうな体で宝石がしまってあるケースのガラスを打ち砕いて、紫水晶をつかみ出して手に持ち、さらにそのあと床を這って石の台座にのせてあった、ガラスの丸天井付きの時計を引きずり落としたらしいと考えられた。
状況を考察しましょう。マーティン・オールは頭部を手ひどく殴られたあと、絶望的な最後の瞬間、火事場の馬鹿力を発揮して、宝石ケースがのったカウンターまでずるずる這っていき、この紫水晶を取り出してから、今度はあっちの石の台座まで這っていって、ガラスドーム付きの置き時計を引きずり落としました。これで謎のミッションが完了し、オールは息絶えます。
P.371より
水晶と時計、どちらも手の届きにくいところにあったものを、なぜわざわざ手に取ろうとしたのか。
もちろんそれは、犯人の正体の手がかりを残したかったに違いないのだが。
では、この不可解な行動の意味するものは……?
クイーン作品の中でも希少なダイイングメッセージもの。
クイーンらしい論理的推理が冴え渡る一編です。
紫水晶とガラスの丸天井付き時計の関係性から犯人を導き出す姿がカッコ良すぎますねえ。
この短編集の中でも一番のお気に入り。
『七匹の黒猫の冒険』
近所のペットショップへと出かけたエラリーは女性店主から、毎週1匹ずつ猫を買う老婦人の話を聞かされる。
詳しく聞いてみると、近くのアパートに住むその老婦人は猫が嫌いだというのに、毎週同じような黒猫を買っていくのだという。
その話を聞いたエラリーはさっそく老婦人の住むアパートへと向う……。
これは「謎」自体がとても魅力的な短編ですよね。
猫嫌いなのに、なぜ猫を買うのか。
なぜ一匹づつなのか。
うーん、凡人ではいくら頭をひねっても分からないですが、エラリーならスルッと解決しちゃうんですねえ。
これもかなりお気に入りの短編。
未読なら絶対に買うべき一冊!
他にも7編、合計11編の短編が収められています。
短い中でもエラリー・クイーンの持ち味がしっかり生かされており、短編になってもクイーンはクイーンだなあ、と実感させられるものばかり。
ミステリお好きなら間違いなく買って損する作品ではないので、新装版が発売したこの機会にお手に取ってみることをおすすめします。
コメント
コメント一覧 (4件)
これ探してるのに見つからないんですよね・・・。
カーの「九人と死で十人だ」は発売日に見つけたのに。
そうなんですか……なぜでしょう!
やっぱり「九人と死で十人だ」買いましたか!私も買いました!笑
いつも本選びの参考になる記事をありがとうございます!
出ました!エラリー・クイーン!!
11の短編がここまでハイクオリティって…これは奇跡としか言いようがありませんでした…。
個人的なお気に入りは「見えない恋人の冒険」です。ロジックを考えた本人しか看破できないほど複雑ではなく、だからと言って誰にでも分かるわけではない…そしてロジックが説明された際の説得力…。これぞ私がミステリに求めているものです!
装画もすごくいいですし。
こういう小物がいっぱい書いてある系の装画、大好物です。なんだかとても所有欲を掻き立てられます…。
嬉しいお言葉をありがとうございます!
やっぱりいいですよねこの冒険!
本当にどれも見事な短編でロジックが美しい。。
「見えない恋人の冒険」もいいですよねえ(´∀`*)
わかります!この装画の良さ!見ているだけで「どんな物語が詰まっているのだろう!」ってワクワクさせてくれますよね。。。