『堂シリーズ』の1番の魅力はトリックでしょうか、キャラクターでしょうか。
私は「建物」そのものだと思います。
実際にはこんな建造物はありえない。
現実にはありえないからこそ、作品の中に登場する館に興奮し、図面を見てワクワクするのです。
シリーズ一作目の『眼球堂の殺人』のあとがきで、周木律さんは次のように述べています。
だが、ひとつだけ自信を持って言えるのは、この建物はきっと、読者をわくわくさせられるだろうということだ。
こんな建物はあり得ない、だが、あり得ない建物で起きるあり得ない事件だからこそ、きっと読み手の心も躍るに違いないということである。
『眼球堂の殺人』あとがき P.544より引用
まさにその通り。
あり得ない建物で起きるあり得ない事件に、私たちの心は踊るのです。
※『堂シリーズ』は絶対に順番に読まなくてはいけませんので、ぜひ参考にしてください。
1.『眼球堂の殺人 ~The Book~』
堂シリーズの記念すべき一作目。
天才建築学者・驫木煬(とどろきよう)から謎の招待状を受け取った天才数学者・十和田は、ルポライターの藍子と共に「眼球堂」に向かう。
そこに集まったのは、世界を代表するような物理学者や芸術家、大物政治家などなど各界の天才たちばかり。
そんな中で殺人事件が起きることになります。
・招待状によって奇妙な館に集められた天才たち
・そして起きる奇怪な殺人事件
・外には出られない、電話も通じない、完全なクローズドサークル
最高の舞台です。
森博嗣さんが【懐かしく思い出した。本格ミステリィの潔さを。】と帯にコメントしているように、どこか懐かしい本格ミステリのお手本のような作品です。
結局、こういう王道が好き。ロマンですよ、ロマン。
館モノが好きならまず手にとってみてください。
関連記事:これぞ本格!周木律『眼球堂の殺人』は館モノ好きなら必読の作品です
2.『双孔堂の殺人 ~Double Torus~』
十和田は、初対面の俺に向かって、自信満々に、しかしとんでもないことを言ってのけた。
「犯人は僕だ。そうでしかありえないんだ」
『双孔堂の殺人』 P.26より引用
というように、前作『眼球堂の殺人』で見事な推理を見せた今シリーズの探偵役・十和田が犯人だという衝撃の冒頭。
しかも自分が犯人だと認めていて、警察に連れて行かれてしまった。
そして事件が終わった後、警視庁に努める宮司司(ぐうじつかさ)が事件に関わった人物に話を聞いたり館内を調べたりして、真実を突き止めていきます。
謎の人物が建てた奇妙な館で殺人事件が起きる、というのは綾辻行人さんの「館シリーズ」、「建築&理系」の要素を前面に押し出しているこの作風は、森博嗣さんの「S&Mシリーズ」の影響をモロに受けているでしょう。
賛否あるようですが、私は「館シリーズ」や「S&Mシリーズ」の影響をモロに受け継いでいるこの作風が大好きなんです。
この懐かしさが良いんです。
というわけでシリーズ2作目も結局おすすめ。
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3.『五覚堂の殺人 ~Burning Ship~』
今作では探偵役の十和田は、五覚堂の監視カメラに映った事件の映像を見て事件を解決する、という形式をとっています。
つまり殺人事件が終わった後に、カメラ映像を見て推理するって事ですね。
しかもその五覚堂の中で見せられているのです。この構成が今作の面白いポイント。
思いっきり力技なトリックも大好きです。これだけぶっ飛んだトリックを目にできるのも堂シリーズの醍醐味ですね。
また今作には図解がこれまで以上に挿入されており、舞台の分かりやすさが増すと共にワクワク度も急上昇。
この作品まで読んでしまえば、もう堂シリーズの虜。
今後シリーズがどう進んでいくのか、楽しみで仕方なくなってきます。
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4.『伽藍堂の殺人 ~Banach-Tarski Paradox~』
かつて宗教団体の施設だった孤島の館に招待された天才たち。しかも電話はないし、船もこない。
という見事なまでに本格ミステリな舞台設定ですが、さすが堂シリーズ。もう普通の推理小説ではなくなってきています。
帯に【堂シリーズはついにここまできたか】と書いてありましたが、まさにその通りだと思いました。
毎回とんでもないトリック使ってくる堂シリーズですので、ある程度は覚悟していたのですが、予想を超えてきました。これだけ破天荒な大仕掛けは滅多にお目にすることができません。
そんなトリックうまくいくわけないだろう!って感じですが、このくらいのバカミスが大好物なので私は絶賛します。
そしてラストのまさかの展開。「え、堂シリーズこの先どうなっちゃうの?」と心配になってしまうくらいの衝撃が待っています。
良い意味でワクワクが止まりません。
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5.『教会堂の殺人 ~Game Theory~』
シリーズ4作目で「まさかの展開」を迎えましたが、今作でも「まさかの展開」を迎えることになります。
これまでのシリーズを読んできたファンなら、あの展開に思わず絶句してしまうでしょう。
周木律さんやりやがったな!という感じです。
さて、この教会堂も魅力的な館ですが、今作では館が殺しにかかってきます。
館に罠が仕掛けてあって、訪れる人が次々に犠牲になっていくのです。
まさにタイトル通りの「教会堂の殺人」って訳ですね。
なので今作は推理小説ではなくなっていて、あくまで『堂シリーズ』の機転として楽しむ作品になっています。
推理小説として読もうとしてはいけませんが、『堂シリーズ』としてはかなり面白く、実際かなりの衝撃を受けました。
この先シリーズがどうなっていくのか気になって仕方なくなります。
しかしまあ、あんな展開になってしまうとは……。
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6.『鏡面堂の殺人』
まさにクライマックス。
前の事件で悲劇に見舞われた百合子の前の元に、善知鳥神から電話が掛かってくる。
それは異形の建築家:沼四郎が手掛けた初めての館、鏡面堂に来いという内容のものだった。
鏡面堂は百合子にとって因縁深い、Y市の森林公園に存在する建物だった。
今まで事件が起きたすべての館のルーツたる建物を訪れた百合子に、善知鳥からある手記が手渡される。
そこには、かつてここで起きたふたつの惨劇が記されていた。
26年前に起こった殺人事件を鏡面堂の管理人が克明に残した事件の解決を迫られる百合子。
消灯すると真っ暗な闇に閉ざされる鏡面堂で起きた密室殺人と消えた凶器。
沼四郎により館に張り巡らされた罠と数多く残された謎。
手記を読み終えた時、百合子は最後の事件に繋がる謎へと迫ることになる。
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おわりに
というわけで、周木律さんの『堂シリーズ』の読む順番とあらすじ、感想などでした。
館ミステリが好き、とにかく館の見取り図を見るとワクワクする、といった「館」が好きな人は必見です。
最初にも述べましたが、この『堂シリーズ』は順番に読まないとわけがわからなくなっちゃいますので、必ず一作目『眼球堂の殺人 ~The Book~』から読みましょう。
ぜひ参考までに。
コメント
コメント一覧 (3件)
前々から表紙のデザインがおしゃれで気になっていましたが、数学があまり得意ではないので読んでいませんでした。理系でなくても楽しめるのでしょうか?
ネコさんおはようございます!
私も全く理系じゃありませんが、一つのミステリー小説としてとても楽しめた作品です。
でも本当にわけのわからないくらい数学的な要素が出てくるので、そこらへんは「ふーん」程度に読み飛ばしても問題ありません笑
まずは『眼球堂の殺人』からお手に取ってみてはいかがでしょうか?ミステリとしてとても面白いですよ!
返信ありがとうございます!
積ん読をまずは片付けてから買ってみます笑