『ドッペルゲンガーの銃』-倉知淳さんの新刊はユーモア溢れる奇天烈作品集!

倉知淳さんの新刊『ドッペルゲンガーの銃』です。

今作は三つの中編とエピローグからなる作品集。

 

読んでみた率直な感想を一言でいうと、

「これぞ倉知淳!

です。

どういうことかというと、ユーモラスで楽しく読めつつ、肝心のトリックや伏線は上質であり読者に対してフェアである、って感じですかね。

やっぱり好きです倉知さん。

1.『文豪の蔵〜密室空間に忽然と出現した他殺死体について〜』

現役女子高生でありながらミステリ作家でもある灯里(あかり)は焦っていた。

老舗出版社が主催する短編の賞に佳作入選したのは良いものの、その次の作品がなかなか書けなかった。

いずれはミステリ作家として生活していけれないいなあ、とは思っているが、このままではあっという間に消えてしまう。

いいネタはないのか。

そうだ!刑事である兄(ポンコツ)に何か良いネタがないか聞けばいいのだ!

「ねえ、兄、なにか面白い事件はないの? とびきり不可解で思いっきり不思議な、謎に満ちた事件。できたらそんな奇々怪々なのがいいんだけど」

P.6より

すると、思った以上の収穫があった。

「蔵は完全に密閉されているんだ。扉がちゃんと閉まって鍵もしっかり掛かっている。だから誰も入れない。猫の子一匹入る隙間もなくて、絶対に誰も出入りできない、完璧に閉ざされている、そんな土蔵なんだよ」

「うんうん、それで?」

「その中に、忽然と死体が出現した」

「何それ」

10ページより

なんと、密室に死体が出現したというのだ!なんという良いネタ!

灯里は自分の目で事件を調査するために、早速現場へと向かったのであった。

謎は深まるばかり。

現場で話を聞くところによると、

・鍵はずっと蔵の持ち主である徳山氏が首からぶら下げていた。

・犯行時刻にも首に掛かっていたとの証言がある。

・その鍵がないと蔵は開かないのに、開かないはずの蔵のなかで絞殺された死体が発見された。

・他の場所から運ばれたのではないことは鑑識の捜査の結果でも明らか。つまり間違いなく蔵の中で殺害された。

などなど、なぜ密室に突然と死体が現れたのか、謎は深まっていきます。

兄が突然……!

しかし灯里は推理に推理を重ね、一つの結論へとたどり着く。

よし!これで間違いない!

早速警察へと報告しようとする灯里。

が、その時。兄(ポンコツ)の様子がおかしくなった!!

 

……いやはや、こうきますか倉知さん。

まさかの展開でしたね。

という訳で一発目の短編は「密室に出現した死体の謎」をメインとしています。タイトル通りですね。

果たして「誰に」「どうやって」密室で殺されたのか。

兄(ポンコツ)がどうなったのかは本作を読んでからのお楽しみ、ということでお話できませんが、

「おお、そういうパターンでくるのか」

と意表を突かれました。

そしてオチもナイス。普通に笑ってしまいました。やっぱり倉知さんのユーモア好きなんですよねー。

2.『ドッペルゲンガーの銃〜二つの地点で同時に事件を起こす分身した殺人者について〜』

東京の北と南の端で、ほぼ同時刻に事件が起きた。

一つはコンビニ強盗、もう一つは殺人事件。

二つの現場は遠く離れているはずなのに、その犯人が同一人物としか思えない事件だった。

それはなぜか。

 

銃には線状痕(せんじょうこん)というものがある。

銃から発射された弾丸につく、かすかな傷跡のことで、いわば「銃の指紋」。

この線状痕は当然銃によって異なるのだが、なんと今回の二つの事件で発砲された線状痕が全く同じだったのだ!

同時刻に遠く離れた場所で発砲された銃の線状痕が一致するということは、全く同じ銃が同時刻に二つ存在することになってしまう。そんなのありえないのに。

なので『ドッペルゲンガーの銃』という題。

魅力的な謎ですねえ(*´∀`*)

読者の盲点をつくトリック、フェアな伏線、共に上質で「ああなるほど!」と思わせてくれる。

さすが表題作だけあって一番好きかなあ。

14:01 コンビニ強盗が天井に向けて放った銃弾。

13:59 雑居ビルの中で探偵の命を奪った銃弾。

東京の北と南の端で、ほとんど同時刻に発砲された二つの銃弾は、

同じ銃から放たれたものだったーー。

帯より引用

3.『翼の生えた殺意〜痕跡を一切残さずに空中飛翔した犯人について〜』

今回兄から聞かされたのは「まるで翼が生えていたかのように犯人が現場から消えてしまった」奇妙な事件らしい。

しかし事件現場を検証してみと、どうやら自殺の可能性が高いらしい。

被害者は首を吊った状態で死んでいたのだが、人に閉められたのではなく、間違いなく自分の体重で閉まったものだということがわかった。

しかも現場は雪に囲まれており、周りには被害者の足跡かした残っていなかった。もしこれが他殺で犯人がいるならば、犯人は翼を使って飛んで行ったように思えても仕方がない。

これって完全に自殺じゃね?小説のネタにならないじゃん!

と思った灯里だったが、一つだけ不審な点があることを聞かされる。

被害者の手首に何かで縛ったような跡が見つかったというのだ。

 

灯里のテンションは上がる。これはとても面白い事態だ、と。

容疑者は3人

もしこれが殺人なら容疑者は被害者の息子3人の誰かになる。

しかし長男は両足を骨折中で車椅子生活、次男は右腕を骨折中、三男の極端に背が低く、いずれにしても被害者を釣り上げて結ぶことができない。

一体犯人は3人のうち誰なのか……。

 

いたってシンプルな「雪の足跡」問題を扱ったミステリですね。

純粋面白かったです。

真相はちょっと馬鹿馬鹿しいのですが、「確かにそうすれば可能だ」と納得させられてしまうのが倉知さんの腕ですよねえ。

 

今回どの作品もユーモラスでありながらあくまで読者に対してフェアな本格ミステリで、「やっぱり倉知さんだなあ」と思わされるものばかり。

帯には

小説のネタを求める、女子高生ミステリ作家の妹。

お勉強だけはできる、ぽんこつキャリア刑事の兄。

極上の謎を解くのはどっちだ?

なんて書いてあり、「どっちが解くのかなあ」なんてワクワクしながら読みましたがなるほど、「そう来ますか倉知さん!」って感じで楽しかったです。

とにもかくにも倉知ワールド全開ですので、ユーモアがあって上質な楽しいミステリが読みたい!というかたはぜひお手に取って見てくださいな(*´∀`*)

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