三津田信三さんの『どこの家にも怖いものはいる』が先日文庫化しました!
まず読んですぐ思ったのは「やっぱり三津田信三さんのホラーは好きだわー」ってことですね。
三津田さんのホラー小説は『赫眼』『のぞきめ』『ついてくるもの』『怪談のテープ起こし』などいろいろあるんですけど、まあどれもハズレなしの面白さなんですよ。
三津田さんといえばホラーとミステリの融合が見事な〈刀城言耶シリーズ〉が有名ですが、やっぱり純粋なホラー作品もいいと改めて思いました。
夏ですし。谷川千佳さんの表紙イラストも最高ですし。おすし。
そんなわけで『どこの家にも怖いものはいる』はホラー小説として非常に面白いのですが、最初に忠告しておきますと、これ、夜中に読んじゃいけないやつです。
わずかな物音にもビクッ!!ってなります。ほんとに。注意してください。
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『どこの家にも怖いものはいる』
「まったく別の二つの話なのに、どこか妙に似ている気がして仕方がない……という薄気味の悪い感覚に囚われた経験が、先生にはありませんか」
P.7より
作家の三津田信三は、自身の大ファンだという編集者・三間坂秋蔵と喫茶店で話していると、三間坂からそのようなことを聞かれた。
実は、三間坂はそのような話を持っているという。
一つは、とある一般家庭の主婦が書いた「日記」。もう一つは、一人の少年の体験談を他の者が書き残した「速記原稿」。
この二つは時代も場所も人間も全く関係がない。当然、話の内容も全く違う。しかしどこか似たようなものを感じるというのです。
それがあまりにも奇妙なので、三津田さんにぜひ読んでほしいとの事でした。
1.「向こうから来る 母親の日記」
念願の新築一戸建てに引っ越してきた一家(父、母、三歳の娘・夏南の三人暮らし)。
はじめはウキウキ気分だったものの、掃除してもすぐにホコリが溜まってしまったり、屋根の上で「ぱらぱらっ」という音が聞こえたり、娘が誰もいない壁にむかって誰かと話していたり、と奇妙な出来事が起こり始める。
娘を問いただすと、壁の向こうに「キヨちゃん」という友達がいると言い始めた。
「キヨちゃん」にただならぬ不安を感じた母親は対策を練るものの、ついに大きな事件が起きてしまう……。
2.「異次元屋敷 少年の語り」
友達と森でかくれんぼをして遊んでいた少年。
しかしその途中、村で噂されていた「割れ女」という怪物と出会ってしまう。
全力で逃げる少年はある屋敷に身を隠すのですが、この屋敷がまた、様子がおかしくて……。
そんな「日記」と「原稿」の二つを三間坂からもらった三津田さんですが、この時は仕事が忙しくなかなか読む気になれていませんでした。
が、そうこうしている間になんと「三つめ」の話が三間坂から届く。
どうやらインターネットの掲示板に載せられた体験談らしいのですが、読んですぐに例の二つの話と奇妙な繋がりを感じたといいます。
3.「幽霊物件 学生の体験」
アパートで一人暮らしを始めた大学生。部屋の広さの割には格安の家賃の物件ということで浮かれていました。
しかし、こんな条件の良いアパートなのに空室が目立つことに違和感を感じ始める。
さらに夜眠るとき、屋根の上から「パチ、パチ、コン、カンッ」と音が聞こえることがあった。奇妙に思った大学生は音の正体を確かめようとしますが……。
というように今作は、三津田さんの元に集められた「時代も場所も人間も全く関係がないのに、奇妙な繋がりが見えるお話」の謎を追っていくという物語です。
今まで「向こうから来る 母親の日記」「異次元屋敷 少年の語り」「幽霊物件 学生の体験」と三つのお話がありましたが、なんとあと二つあります。
全部で五つの怖い話に、どこか不思議な繋がりがあるのです。おお、こわ。
しかも短編ひとつひとつがちゃんと怖くて、それぞれが不気味な繋がりを見せていくから、読んでいくたびに恐怖が重なっていくんです(泣)。
三津田ホラー好きなら必見!
これまでに三津田さんのホラー作品を読んで面白いと思ったことがある方なら必見です。これぞ「三津田ホラー」です。
実話怪談集風っていうんですかね。三津田さん他の作品でいうなら『のぞきめ (角川ホラー文庫)』に近いタイプで、作家の三津田さん本人が奇妙な話に巻き込まれていく過程が非常にリアルなため実話感が半端ないのです(ほんとにこれ、実話なのかもしれない)。
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そして「これらの繋がりは一体なんなのか?」というミステリめいたストーリー展開が、怖いのにもかかわらず読む手を止めさせてくれません。
この作品で語られるのはどれも「家にまつわる話」なのですが、「家にまつわる怖い話」といえば小野不由美さんの『残穢 (新潮文庫)』という名作があります。
今作は、その展開や構成などを含めて『残穢』を彷彿とさせる物語でした。
なので『残穢』が好みな方なら絶対『どこの家にも怖いものはいる』も好きなはずですし、逆に『どこの家にも怖いものはいる』が好きなら『残穢』も絶対気に入っていただけるでしょう。
あともうひとつ。
この手のもので郷内心瞳さんの『拝み屋郷内 花嫁の家 (MF文庫ダ・ヴィンチ)』っていう作品があるんですけど、これも半端なく怖いのでホラー小説がお好きならぜひ読んでみてください。
怖いというより「エグい」という感じで、私が今まで読んできたホラー作品の中で「最も怖い」と思えた作品です。
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おわりに
なんか最後は『残穢』『拝み屋郷内 花嫁の家』のオススメになっちゃいましたけど、『どこの家にも怖いものはいる』も純粋にオススメできるホラー小説です。
内容ももちろん、序章で行われる三津田さんと三間坂が繰り広げる「奇妙な共通点を持つ歴史上の出来事」の話だけでも非常に面白いんですから(暗殺された大統領の二人の話やタイタニック号の話)。
この世には奇妙な共通点がある話って結構あるものなんですね。一つ二つならまだしも、ここまで共通点があると恐ろしさを感じてしまいます。
最近暑くなってまいりましたので、これらのホラー作品を読んでヒヤリとして見ませんか?(ヒヤリじゃすまない)

コメント
コメント一覧 (4件)
文庫化されたんですねコレ!
単行本で読んだのですがどの話も不気味でおぞましくラストの展開も日記や本というものの特性を生かしたものになっていて面白かったです
主さんも「残穢」について触れていますが「残穢」を三津田さん風にアレンジするとこんなふうになるんだなぁという印象でした。
・・・読んでいるときに屋根からパラパラと音がしたのですが主さんは大丈夫でしたか・・・
8823さんこんにちは!
そうなんですよ〜つい先日文庫化されまして、すぐに購入してしまいました。
ほんと三津田さんのホラー小説は面白いですね。8823さんさんのおっしゃる通り、まさに「残穢」の三津田さん版という感じで大好物です。
!!!!!!
8823さん!!!!それは危険ですよ!!!笑
大丈夫ですか?!屋根の上で老婆が踊っていないですか?!
私は読んでいるあいだ、パラパラ音がするんじゃないか気になってなかなか読書に集中できなかったくらいビビリなので、そんな音が聞こえた瞬間心臓が止まります笑。
お久しぶりです。僕はここで初めて三津田先生の作品を知り、この『どこの家にも怖いものはいる』を読んでからどっぷり三津田先生にハマってしまいました!!もう怖いのレベルを遥かに超えていまして、しかもミステリー要素が入ってるので、怖いし面白いしと読む手が止まらないです。本当にいつも最高の読書を紹介して下さり主さんには感謝です!
今は『のぞきめ』を読んでいますが怖過ぎて、泣きそうになります。
もう夏本番なんで、ホラー小説特集第2弾みたいの是非是非やって頂きたいと切に願っております。
今後もお体に気をつけて下さい!応援しています!
裏庭ボーイさんお久しぶりです!
おっ、三津田先生にはまっていただきましたか!私も大好きな作家さんですので、共感していただけて非常に嬉しいです。
『どこの家にも怖いものはいる』を読んだらそりゃハマってしまいますよね。。本当に面白いですもん。
あー『のぞきめ』も良いですね!ただし、得体の知れない視線を感じたらすぐに本を閉じてくださいね。注意してください。
ホラー小説特集第2弾!!いいですねえ。夏ですもんねえ。やってみようと思います!
夏の間に仕上がらなかったらすいません笑
とてもお暑いので、裏庭ボーイさんのお体におきお付け下さいね。いつもありがとうございます(´∀`*)