海外ミステリー小説

『誰かが嘘をついている』- 5人の高校生によって語られる青春ミステリー

アメリカのとある高校で、5人の生徒が授業中に携帯電話を使用していたことによるルール違反の罰として、教師に作文を書かせられていた。

放課後にやむなく居残りをしていた5人だったが、その中の一人であるサイモンが突如苦しみ出し、病院搬送後に死亡してしまう。

調査の結果、死因はアナフィラキシーショックであることが判明する。

サイモンはピーナッツアレルギーを患っており、彼が口にした水分の中にピーナッツオイルが含まれていたことで、このような事態を招いてしまったのだ。

後日、何者かによる計画的犯行であると判断した警察は、当時サイモンとともに過ごしていた4人の生徒に殺害容疑をかけることになる。

なぜ、サイモンは殺害されたのか。

そして、誰がどのような動機を持って、彼を殺害してしまったのだろうか……。

放課後の教室という閉鎖的空間で語られる、青春ミステリー。

謎解きと学園ドラマの要素を掛け合わせた青春ミステリー

本作では、一人の高校生・サイモンが何者かによって殺害され、当事者である4人の高校生が、事件発生当時の出来事を話すところから物語が始まります。

事件当初にあった出来事や推測などの証言が一人称視点で描かれていくため、読み始めて間もないうちから、臨場感を持って読み進めていくことになります。

客観的に物語の展開を見守るスタイルではなく、4人の高校生の思考が一人称視点で描かれている本作には、登場人物の感情変化や行動の動機が手に取るように分かる工夫が盛り沢山です。

まるで読者自身が4人の高校生の過去を体験しているかのような感覚で物語に没入できるため「自分ならどのように行動するか?」という想像を掻き立てつつも、登場人物に感情移入してしまうことでしょう。

また、事件の犯人探しで頭をフル稼働させる謎解き要素にくわえて、「高校」という舞台を活かした学園ドラマならではの描写が豊富に盛り込まれている点も注目しておきたいところです。

定番のスクールカーストや不器用でもどかしさを感じる恋愛描写は、読んでいる人に懐かしさと緊張感を与え、登場人物と過去の自分を照らし合わせてしまうなんてこともあるかもしれません。

謎解き要素を楽しむだけでなく、登場人物の過去を通じて、懐かしき青春時代の追憶に浸りたい方にもぜひおすすめしたい1冊です。

現代のデジタル技術で露呈する事件の奥深さ

登場する5人の高校生の間では、各自のゴシップをお互いに暴露するアプリが流行しており、アプリ運営者であるサイモンは、校内生徒の様々なゴシップ情報を把握していました。

その後、読者自身が探偵の役割を担い、事件の犯人や殺害動機などの有力情報を、4人の高校生から聞き出すストーリー展開が繰り出されます。

「サイモンが恨まれるきっかけになり得るアプリが存在する」という決定的な背景を知ったことで単純明快なストーリー展開がされていくのかと思いきや、そう簡単にはいかないのが、本作の面白いところです。

残された4人の生徒から語られる証言を把握していくにつれて、事件の真相はさらに奥深さを増していきます。

本作の深みのあるストーリーを際立たせているのは、SNSやインターネットなどのデジタル技術の存在です。

SNSで不特定多数の目に届いていたゴシップ情報は、事実とかけ離れた個人の勝手な解釈や噂へと変貌を遂げ、殺害容疑をかけられた4人の思惑がさらに誤解を生む形で、事件の方向性をねじ曲げていきます。

このように、古典的なミステリー要素にくわえて、SNSの拡散性の恐怖を煽る描写も豊富に盛り込まれているため、読者を最後まで飽きさせないストーリー設定が施されているのが、本作の魅力の1つといえるでしょう。

誰が何を隠しているのか?必読の現代本格ミステリ!

著者のマクマナスさんは、ザ・ホリー・クロス大学で英文学の学士号、ノースイースタン大学でジャーナリズムの修士号を取得した後に、本作の発表で作家デビューを果たします。

本作は彼女のデビュー作であるにもかかわらず、着実に注目を集め、「ニューヨーク・タイムズ発表のヤングアダルト向け小説ベストセラーに60週連続ランクイン」という偉大な功績を残しました。

彼女には学生時代から英文学や報道関連の文章に触れていた経験があり、そこで培われた知見が、現在の執筆活動に活かされているのかもしれません。

そんなアメリカの人気作家が出版した「誰かが嘘をついている」の認知度はますます広がり続け、現在は、動画配信サービス「Netflix」での原作ドラマ化もされているほどの人気ぶりです。

原作とドラマのいずれも楽しめるのは間違いないですが、両方の作品の世界観に浸ることで、想像力と視覚情報の差異から生まれる、気付きの変化を堪能することができます。

本作は、古典的ミステリーとデジタル技術が絡んだストーリー展開が特徴的ですが、登場人物の心境の変化や成長過程を度々実感できる描写もまた、見逃せない点といえます。

残された生徒の青春溢れる高校生活を一人称視点で描く物語は、犯人探しの材料集めの役割を担いながらも、どこか懐かしい気持ちを感じ、つい感情移入してしまうことでしょう。

単純な推理だけでは事件の真相に辿り着けないようなミステリー小説を求めている方はもちろん、個性的な登場人物が作り出す甘酸っぱい高校生活に浸りたい方も、ぜひ読んでみていただけたら嬉しいです。

ABOUT ME
anpo39
年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)
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