東野圭吾『沈黙のパレード』-6年ぶりのガリレオシリーズ新作が超傑作でした

東野圭吾さんのガリレオシリーズ新作、『沈黙のパレード』がとうとう発売となりました!

このシリーズは毎回安定て面白いミステリを披露してくれるので楽しみにしておりましたが、期待を超えて傑作だったので興奮しています。

やはりガリレオシリーズは長編の方が相性いいのかなあ。

目次

東野圭吾『沈黙のパレード』

静岡県で行方不明になっていた女性が遺体で発見された。

被疑者とされた人物『蓮沼』は過去に別の事件にも関わっていた。

それは草薙に苦い体験をさせた事件だった。

その事件を再現するかのように状況証拠は揃う中、決定的な証拠は見つからず、蓮沼は起訴されなかった。

それどころか、わざわざ被害者の家族が住む町へと戻ってくる。

地元で愛される定食屋家族の前に現れた蓮沼は、まるで脅迫するような挑戦的な態度をとって去っていく。

蓮沼に対して怒りを募らせる人間が多数出る中、街を上げたお祭りの最中に蓮沼が死んだというニュースが街中を駆け巡る。

間違いなく疑いの目が向けられる家族たち。

蓮沼を実際に殺したのは誰なのか。そのトリックは?

複雑に絡み合う事件と人間関係をアメリカ帰りのガリレオが、持ち前の観察力と推理力で事件を解決する。

蓮沼の周囲は彼が関わった様々な事件の恐ろしい人間の感情に彩られていた。

複雑に絡み合う事件を一つ一つ解き明かしていく面白さ!

「あいつ、アメリカに行ったんだったな。それ以来音信不通だったが」

(P.38)

ガリレオシリーズといえばTV化もされた人気作品。

最新刊である『沈黙のパレード』では、さらにその面白さに磨きがかかっていました。

今回殺害された人物・蓮沼は別の事件で加害者として起訴されたことがある人物です。

しかし、起訴されてから『沈黙』を続けることで、裁判では無罪を勝ち取っています。

絶対に悪いはずの人間が無罪になる——この時点で物語は始まっています。

誰が見ても絶対に怪しい人間が、「黙っているから」という理由で無罪になればスッキリしませんよね?

この作品は、その法治国家だからこそ起こり得る憤りを上手に描いています。

物語の始まりから蓮沼の人間性について細かく説明されますが、一言でいえば「すごく嫌な奴」なわけですよ。

まさに殺されるべきして殺されたとも言える人物です。作中でもこう言われています。

「自分の家族が殺されたとして、どのように復讐したいかを考えてみました」

この作品は犯行の動機が非常にはっきりしている部分が面白さの大部分を構成しています。

動機と犯行がはっきりしているのに、トリックが暴けない——それを解き明かす推理の面白さを感じることができます。

また、人間の性格も非常にしっかりと描かれていて、それぞれの事件に対する想いも書かれています。

それにより誰が犯人でもおかしくないと思わせられながら話は進んでいきます。

真相が見えてくるたびに明らかになる人の感情は呼んでいるだけでドキドキしてくる強いものです。

どの人物に共感するかで、まったく違う感想を抱きますが、その分、様々な人間模様が楽しめる作品になっています。

エンタメ性を抜群に増やした推理モノの傑作!

事件は行方不明になっていた女性が焼死体で見つかるところから始まります。

静岡と東京という離れた県で見つかった行方不明者。なぜ、彼女はそんなところから発見されたのか。

そこから芋づる式に犯人と過去の事件が掘り起こされていきます。

次々と情報が与えられますが、東野圭吾先生の力量により、混乱することなく理解することができます。

犯人と思われる人物と被害者家族。

その2つの立場が入れ替わり立ち代わり場面を動かしていきます。

一人だと絶対成立させることができないトリックが、復讐を目的とした人たちによりパズルのように成立する興奮を味わうことができます。

それぞれがそれぞれの思惑で動くところに『人間の面白さ』を感じます。

特に、今回のキーワードは『沈黙』

「沈黙するだけです。沈黙は自由なんでしょ?」

(P.397)

多くのキャラクターがそれぞれの事情を隠して、沈黙しているわけです。

次々と出てくる人とそれぞれの事情に一度読み始めると手が止まらなくなる面白さです!

ただ登場人物が多いということは全員が円満な気持ちになることは難しいです。

善人だと思った人にも悪い部分はあるし、悪人だと思っていた人にも善良な部分もある。

そういう当たり前のことに気づかせてくれる作品です。

共感する人によっては読み終わった後はなんとも言えない気持ちになります。

人間の複雑さ、恐ろしさに感じ入ってしまう一冊

さすがの人気シリーズ!

推理モノの面白さをしっかりと感じさせながら、エンタメ性も非常に高い作品になっています。

推理の説明もわかりやすいので、文章が理解できないなんてこととは無縁。

登場人物たちがどういう気持でどういう行動をとったか丁寧に明かされます。

東野先生の力量がはっきりと感じられる一冊ですね。

ミステリーや推理モノが苦手な人であっても、登場人物の心情にも深く踏み込んでいるので楽しむことができます。

またシリーズ最新刊ながら、この一冊から入っても大丈夫な内容です。

もちろんシリーズの愛読者の方には、昔から変わらない登場人物たちのやり取りを楽しむことができます。

それに加えて、アメリカから帰ってきたガリレオの人情味に溢れる行動が見られる部分ばかりです。

湯川学先生の新しい一面を楽しみましょう!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 10月に入った頃に新作出るのを知り、発売日同時に購入しましたがじっくり読む時間がなく未読…..w

    ベタですがガリレオの最高峰はやはり容疑者Xだとずっと思ってて(真夏の方程式も大好きなんですが)、ぼくも同じくガリレオは長編派です 本当に待ちわびた一冊です

    今読んでる彼女の恐喝(藤田宜永さん)が終わり次第、早速沈黙の沈黙を破ろうと思います

    余談になりますが、ここで紹介されてるものを読んだ後、またこの記事を読むと 自分では気がつけなかった気持ちや登場人物像、人それぞれに思う読後感など気づかされる事が多いです それを照らし合わせるのも面白かったり

    読み終えたらまた来ますw彡(^)(^)

  • こはるさんこんにちはー!
    やっぱり発売日に買ってしまいますよね笑

    わかります、わかります。容疑者X、真夏の方程式など、同じくガリレオは長編の方が傑作多いですよね。共感していただき嬉しいです!

    ぜひぜひ読後もまた来て感想を教えてください!
    よろしくお願いします(´∀`*)

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