国内ミステリー小説– category –
-
荻堂顕『擬傷の鳥はつかまらない』- 希望と絶望の狭間を映し出す、切なく美しいミステリ
新宿歌舞伎町でネイルサロンを経営している幸。 しかしそれは表向きで、真の稼業は逃がし屋。 現実に絶望し、過去を消して逃げたがっている人々に、偽の身分証明書を作っているのだ。 ある日、ヤクザに追われる二人の少女・アンナとメイが、幸に逃亡を依頼... -
降田天『朝と夕の犯罪』- 2つの事件が描き出す重厚サスペンスミステリー
かつて父親と車上生活をしていた兄弟のアサヒとユウヒ。 父親が亡くなり離れ離れになって以降、2人は別々の人生を歩んでいた。 そんな2人は、ある日10年ぶりに再会を果たすが、その再会は偶然ではなかった。 アサヒはユウヒに脅迫される形で、ある理由から... -
皆川博子『インタビューウィズプリズナー』 – 三部作の傑作歴史ミステリー完結編
1775年の独立戦争勃発中のアメリカ。 新聞記者・ロディは、収監されているイギリス兵のエドワード・ターナーに会いにいく。 エドワードは大富豪の息子アシュリーを殺害した容疑をかけられており、事件に関する情報を求めてロディは顔を出したのであった。 ... -
西澤保彦『偶然にして最悪の邂逅』- ミステリーのベテランによる珠玉の短編集
1979年、高校生だったぼくたちは、夜に廃校舎に忍び込んでは、向かいのアパートで暮らす女性教師・蛭田美由紀の私生活を覗き見していた。 美由紀は毎日男を連れ込んで性交渉をしており、ぼくたちはその様子を眺めることが、日課のようになっていたのだ。 ... -
結城真一郎『救国ゲーム』- 陰謀とテクノロジーが日本を襲う!新世代ミステリー
時は202X年、日本は地方の過疎化と少子高齢化により、経営破綻の危機に陥っていた。 そんな折、動画投稿サイトに謎の仮面人物パトリシアが現れ、テロを予告。 「日本政府は60日以内に地方を切り捨て、資本を大都市に集中させろ。さもなくば地方を無差別に... -
伊吹亜門『幻月と探偵』- 戦前の満州を揺るがす連続毒殺事件を追え!
舞台は1938年の満州。 日ソの国境紛争で緊張が高まる中、ある事件が起きた。 元陸軍中将・小柳津義稙の邸宅で行われた晩餐会で、官僚・岸信介の秘書が毒殺されたのだ。 私立探偵・月寒三四郎は、岸からの依頼を受けて真相究明に乗り出す。 しかし捜査を進... -
夕木春央『サーカスから来た執達吏』- 財宝探しの道中で描かれる本格ミステリー
時は大正時代。 大震災の影響で莫大な借金を抱えた樺谷子爵家を取り立てに訪れたのは、晴海商事からの使いであるサーカス出身の少女・ユリ子だ。 借金返済に応じてくれないことを悟ったユリ子は、樺谷家の三女・鞠子を担保に差し出し、2人で「財宝探し」を... -
若竹七海『パラダイス・ガーデンの喪失』 – 複数のストーリーが紡ぎ出すサスペンスミステリー
コロナウイルスが蔓延している最中にある2020年秋。 葉崎市の見晴らしの良い高台にある個人庭園・パラダイスガーデンで身元不明の老女の遺体が発見された。 この事件をきっかけに、葉崎市で生活を送っている住人たちの思惑が交錯し始め、新たな事件が繰り... -
大島清昭『影踏亭の怪談』- 実話怪談と謎解きが組み合わさった本格ホラーミステリー
僕の姉は怪奇実話作家・呻木叫子である。 彼女は、これまで培ってきたフィールドワークの経験を活かし、怪談ルポライターとして数々の作品を残してきた。 ある日姉の自宅を尋ねた僕は、密閉空間の中で両手両足を拘束され、自身の髪の毛で両瞼を縫い合わさ... -
芦辺 拓『大鞠家殺人事件』- 昭和戦時下の本格推理小説
時代は戦下の昭和18年。 陸軍軍人の娘・中久世美禰子は、大鞠家の長男・多一郎に嫁ぐことになった。 多一郎の家系である大鞠家は、婦人化粧品販売の事業で成功を納めたことで富を築いていた。 夫と幸せに過ごすことが予期されたそんなある日、軍医である多... -
有栖川有栖『捜査線上の夕映え』- 旅情サスペンスとしても楽しめる火村英生シリーズの決定版
一見ありふれた殺人事件が、主人公の登場によりまるで「ファンタジー」と化す、エモーショナルなミステリー作品となっている本作。 今年で30周年となる「臨床犯罪学者 火村英生シリーズ」の最新作となっていますが、前作との繋がりもないので本作から読ん... -
市川憂人『断罪のネバーモア』- 警察小説と本格ミステリーが奇跡の融合を果たす
度重なる不祥事から警察の大改革が行われた日本。 変革後の警察にブラックIT企業から転職した新米刑事の藪内唯歩は、茨城県つくば警察署の刑事課で警部補の仲城流次をパートナーとし殺人事件の捜査にあたります。 しかし刑事課の同僚たちの隠しごとが唯歩... -
矢庭優日『エゴに捧げるトリック』- 本書に仕掛けられた人類の存亡を左右するトリックとは?
2105年現在、Extraordinary Ghost Octopus – 通称「EGO」と呼ばれる怪物達に世界を支配され、人類は危機に瀕している。 そんな時代の中、「エスペリオン」と呼ばれる催眠術師の養成校に、「僕」こと、吾妻福太郎という一人の転校生がやってきた。 福太郎が... -
矢樹純『マザー・マーダー』- 全方位に仕掛けられた罠に、あなたは何度も騙される
ある日、中古住宅に引っ越してきた瑞希は、来月で1歳半になる陽菜の育児で忙しい日々を送っていた。 瑞季が住んでいる地域には高齢者の住人が多かったため、時間帯によっては車通りも少なく、静かな空間を作り出していた。 そんなとき、隣の家に住んでいる... -
逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』- 復讐と葛藤から見出した真の敵とは
1940年代、ソ連とドイツが血みどろの戦いを日夜繰り広げていた時代。 モスクワ近郊の農村が、突如ドイツ兵に襲撃される。 たった一人生き残った少女セラフィマは、強姦寸前のところを赤軍の女兵士イリーナに救われる。 「戦いたいか、死にたいか」 との問... -
陸秋槎『文学少女対数学少女』- 華文青春本格ミステリの新たなる傑作!
今作の主人公となるのは、高校2年生の文学少女である陸秋槎(りくしゅうさ)と、孤高の天才数学少女である韓采蘆(かんさいろ)の2人。 秋槎はひょんなことから、自作のミステリー小説の評価を采蘆に依頼します。 しかし、采蘆は秋槎ですら予想出来なかっ... -
『名探偵に甘美なる死を』- VR空間と現実世界を行き来する、特殊設定ミステリーの決定版
VRミステリーゲームの試遊会で“館”に招かれた登場人物たちが、生死を賭けてVR空間と現実で起きる殺人事件の謎に挑む、謎解きと特殊設定が入ったミステリです。 「2020年SRの会ミステリーベスト10」第1位に選出されている前作『孤島の来訪者〈竜泉家の一... -
伏尾美紀『北緯43度のコールドケース』- 江戸川乱歩賞受賞作は流石に面白い!
博士号を持ちながら、紆余曲折を経て30歳で北海道警察の警察官となった主人公・沢村依理子。 まだまだ男性社会の警察で、しかも異色の経歴を持つ彼女に、なんとなく周囲からの当たりは強い。 それでも、沢村に対して操作方法や取り調べの方法を教えてくれ... -
『弔い月の下にて』- 異常なロジックと奇矯なトリックが炸裂する傑作変格ミステリ
壱岐沖に浮かぶ、かつて隠れキリシタンの島民が大量死したという孤島。 そこに見物に出かけた主人公たちが、隠れキリシタンの末裔の富豪が築いたという異形の館を舞台に、異常なロジックと奇矯なトリックが炸裂するミステリー作品となっている、凝った作り... -
『みんな蛍を殺したかった』- 少女の心を繊細に描くミステリ
時は2007年、京都の底辺女子高のさらにスクールカースト底辺の生物部に所属する三人のオタク女子高生たち。 親に隠れて小説を書く「栞」、母親の愛を期待する「雪」、オンラインゲーム上の彼氏がいるという「桜」。 そんな通称「オタク部」の元に、東京か...