国内ミステリー小説– category –
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芦辺拓『名探偵は誰だ』- 変化球的なフーダニットを楽しめる本格ミステリ短編集
私が旅好きなのは、ホテルの朝食が楽しみだからだ。 今回も、気持ちの良い目覚めととびきりうまい朝食を堪能できるはずだった。 しかし私の気分は最悪で、食事どころではなかった。 この席から、いや、相席となった四人の宿泊客の前から、逃げ出したくて仕... -
五十嵐 律人『六法推理』- 法律知識で事件に挑む、学生版リーガル・ミステリ
法学部4年の古城は、大学内で無料法律相談を受け付けている。 ある日、経済学部3年の戸賀が相談しに来た。 「2年半ほど事故物件に住んでいるが、今まで何もなかったのに、最近になって奇妙な現象が起こるようになった」 とのことだった。 夜中に赤ん坊の泣... -
近藤史恵『ホテル・ピーベリー』- いわくありげな宿泊客が次々に死んでいく。
小学校教諭だった木崎は、不祥事から退職した後、日々を無気力に過ごしていた。 ある日友人からハワイ島の小さなホテル「ピーベリー」を紹介され、興味を抱く。 そこは、一度利用したら二度目はないという、リピーターお断りのホテル。 さっそく泊まりに行... -
烏丸尚奇『呪いと殺しは飯のタネ』- 創業者一家に隠された恐ろしい秘密とは
オリジナル作品を書けない作家・烏丸尚奇は、生活のために伝記を執筆するという退屈な日々を過ごしていた。 ある日、大企業の創始者である深山波平の伝記を書く依頼が来た。 報酬が破格の高さであり、しかも「刺激を約束する」という興味深いメッセージが... -
『紙鑑定士の事件ファイル 偽りの刃の断罪』- 紙とフィギュアの蘊蓄が真相を暴き出す
紙の銘柄、厚み、密度など、紙のことなら何でもござれの紙鑑定士・渡部のもとに、新たな依頼が来た。 小学3年生の女の子からの依頼で、「紙粘土の鑑定をしてほしい」というもの。 紙は紙でも、紙粘土はさすがに専門外。 しかし依頼の目的が、 「可愛がって... -
『紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人』- 紙とプラモデルの専門知識で謎を追うミステリ
紙の銘柄を鑑定する渡部の事務所に、なぜか浮気調査の依頼が来た。 依頼主の女性はどうやら「紙鑑定」を「神探偵」と間違えたらしい。 話を聞いてみると、浮気を疑っている理由は、彼氏が急にプラモデルに凝り始めたこと。 渡部は小遣い稼ぎのつもりで依頼... -
阿津川辰海『入れ子細工の夜』- アイデアが光る、読み出したら止まらないミステリ短編集
ある作家が、編集者を名乗る男にひとつの提案をした。 「とっておきのミステリーを執筆してやろう。ただしリアリティを追求するために、物語の人物を一緒に演じてみてほしい」 編集者は二つ返事で了承し、さっそく作家の指示に従って演じ始める。 しかし演... -
紺野天龍『神薙虚無最後の事件』- いくつもの真相が興味をそそる多重解決ミステリー
大学で名探偵倶楽部に所属している白兎(はくと)と志希(しき)は、ある日道端で倒れそうになっていた唯を助ける。 彼女はミステリー作家・御剣の娘で、20年前に父が著したベストセラー『神薙虚無最後の事件』に残された謎を追っていた。 この本は実在の高校... -
村崎 友『風琴密室』- 二度読み必至。犯人の名が明かされるとき、世界は一変する
小学校5年生の夏、リョータの楽しかった日々は悲しすぎる終わりを迎えた。 好きになりかけていた女の子・雨ちゃんが転校し、兄・コーちゃんが川で溺死したからだ。 6年後、高校2年生になったリョータは、廃校となった母校で雨ちゃんと再会する。 戸惑いつ... -
浅倉秋成『俺ではない炎上』なりすまし被害で殺人犯にされたサラリーマンの逃亡劇
山縣泰介は、50代のサラリーマン。 それなりに出世しており、妻子もいて、順風満帆な日々…のはずだった。 それがもろくも崩れたのは、何者かが泰介になりすまして女性を殺害し、遺体の写真をTwitterでアップしたからだ。 ツイートはたちまち拡散され、炎上... -
『あれは子どものための歌』- 本格ミステリの興趣を巧みに織り込んだ、異色のミステリ連作集
美しい声の代わりに「賭けに必ず勝つ魔力」を手に入れたエミリア。 大金を稼ぐことが可能になったが、それゆえに父親が殺されたり仲間に恐れられたりと、うまくいかないことも増えた。 ある時エミリアは、上流階級のタシットと恋に落ち、結婚を意識する。 ... -
『神とさざなみの密室』- 密室と死体の謎に迫る密室監禁ミステリー
政治団体に所属する女子大生・三廻部凛は、自身の両手首を頭上で縛られた状態で目を覚ました。 彼女は、何者かによって密室に監禁されてしまっていたのだ。 そんなとき彼女は、顔を焼かれた謎の死体と、凛と対抗する思想を持つ男・大輝が一緒に閉じ込めら... -
逸木裕『五つの季節に探偵は』- 隠された本性を暴きたがる探偵の物語
女子高生のみどりは、父親が私立探偵だという理由で、クラスメートから何かと厄介事を頼まれている。 ある日いじめに悩んでいる怜に、英語教師の清田を調べ、弱みを握るよう依頼された。 いじめの主犯である好美が清田を慕っているらしく、清田を利用すれ... -
石持浅海『風神館の殺人』- 復讐に集まった者たちが次々に殺されていく密室ミステリの秀作
欠陥商品を販売し、多くの人々を不幸に追いやった株式会社フウジンブレード。 復讐を遂げるために、恨みを抱く者たち10名が保養所「風神館」に潜入した。 彼らは協力体制を敷き、綿密な殺害計画を練り、まずは一人目、開発部長の笛木を浴室で自殺に見せか... -
『スクイッド荘の殺人』- 断崖絶壁の閉鎖空間で忍び寄る殺人者!烏賊川市シリーズ13年ぶりの長編
暇を持て余していた私立探偵・鵜飼杜夫のもとに久しぶりに依頼が来た。 有力企業の社長・小峰が「脅迫状が届いたためボディガードをしてほしい」というのだ。 鵜飼は喜んで引き受け、小峰がクリスマスに過ごす予定の高級宿泊施設「スクイッド荘」に、助手... -
『記憶の中の誘拐 赤い博物館』- 幼少時の誘拐事件に隠された真実とは?緋色冴子シリーズ第二弾
未解決事件の捜査資料や遺留品が保管されている施設、通称「赤い博物館」。 館長の緋色冴子はそれらの整理や管理をしつつ、改めて事件を推理してみる日々を過ごしていた。 緋色の推理力はずば抜けて高く、誰もが匙を投げた難事件でも遺留品を見るだけで真... -
『時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2』- その犯行は本当に不可能だったのか?
どれほど怪しい容疑者でもアリバイがある限り、犯人として逮捕することはできない。 そんな時に格安料金で「アリバイ崩し」をするのが、時計屋探偵・時乃だ。 今回時乃が請け負ったのは、ある資産家の溺死事件。 乗っていた高級車ごとダムに沈められており... -
『密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック』- ミステリ作家が遺した山荘で次々に起こる惨劇
ミステリー好きの男子高校生・香澄は、幼馴染に誘われて「雪白館」に泊まりに来た。 そこはミステリー作家・雪城白夜が遺した山荘で、かつて白夜が作家仲間や編集者たちを集め、推理ゲームを楽しんでいたという。 その時に白夜が作り出した密室トリックは... -
内山純『土曜はカフェ・チボリで』- くつろぎながら謎解きを楽しめる日常ミステリー
児童書の女性編集者・香衣が常連客として通う〈カフェ・チボリ〉は、一風変わったカフェだった。 珍しいデンマーク料理が出され、営業日は土曜日のみ、そして天才高校生のレンがオーナーをしているのだ。 特に変わっているのは、お客たちが食後のデザート... -
近藤史恵『歌舞伎座の怪紳士』- 観劇から始まった人生の転機を描く物語
仕事を退職し、家事手伝いとなった27歳の久澄(くすみ)。 日々を鬱々と過ごしていたが、ある日祖母からもらったチケットで歌舞伎を観たことをきっかけに舞台に興味を持つようになる。 その後もたびたびチケットをもらい観劇するたびに久澄はのめり込み、...