澤村伊智さんの『ぼぎわんが、来る』が映画化されるようで、このたび文庫化されました。素晴らし。
いままでオススメのホラー作家さんを聞かれたらまず三津田信三さんの名をあげていたのですが、
いまでは澤村伊智さんの名前なしではホラー小説は語れない、というくらいオススメしているホラー作家の一人です。
今作『ぼぎわんが、来る』は澤村さんのデビュー作にして、第22回日本ホラー小説大賞受賞作。面白さはお墨付きというわけ。
私的にも傑作ホラー小説の一つなんです。
内容も超王道のジャパニーズホラーなので、ホラー小説から遠ざかっていた方にもこの機会に「久々にホラー読もうかなあ」なんて思っていただけたら幸いです。
『ぼぎわんが、来る』
幸せな新婚生活を営んでいたサラリーマン・田原秀樹。
ある日。彼の会社に、来訪者があった。
後輩曰く「チサの件で」とのことで、秀樹に会いたがっていたらしい。
チサ。
それはまだ生まれていない娘の名だった。
チサという名前をつけたことはまだ誰も知らない。知るわけがない。誰にも言っていないのだから。
なぜだ?と思う暇もなく、その伝言を受け取った後輩が目の前で血まみれになって倒れた。
「あの傷、噛み傷だって言うんですよ、担当の先生が」
「えっ?」
「重明の腕は、噛まれたって言うんです。傷口からしてそうとしか考えられないと。重明はそんなことはない、知らない間に血が出てんたんだって言い張るし、私にはもう何が何だか……」
P.43より
何かに噛まれた?
自分の目の前で?
そんなことありえない。
そして思い浮かぶのは、小学6年生の夏休み。
認知症の祖父と留守番していた秀樹の家へ、何者かがお訪れてきた。
その時は、認知症でまともな会話ができないはずの祖父が「帰れ!」と叫んで撃退したけれど。
あの時の奴が、また来たのではないか。
だとしても、なぜ今になって来た?
はたして、ぼぎわんを撃退できる方法があるのかーー。
ど直球の本格ホラー
ぼぎわん。
もう言葉の響きからイヤですよね。
気持ちの悪い、得体の知れない不気味さが伝わってくる四文字です。
澤村伊智さん他作品も『ずうのめ人形』の「ずうのめ」や、『ししりばの家』の「ししりば」など、聞いたことのない言葉だけど不気味さがよく伝わる怪異が登場しますね。
どこか似ているようで、それぞれ別の怖さがある。
つまり上手いんです。「怪異」の書き方が。
恐怖の根源である「ぼぎわん」は、「古くから伝わる得体の知れない何か」というスタンダードな設定だからこそ良いし、安定した怖さがあります。結局スタンダードが面白いのです。
そして「人を怖がらせる」演出が上手い。
第1章の終盤はドキドキを止まらなくさせるし、第2章のあるシーンでは見事に絶望を押し付けてきます。こんなのに勝てるわけないじゃん!と思わされます。
御守りが引きちぎれていくシーンとかね。ガクガクブルブルですよ。
私たち人間が何を怖がるか、を完全に熟知してないとできない芸当です。
さらに怪異だけでなく、人間の怖さまでもをしっかり描き出しているから恐ろしい。
特に1章から2章へと視点が切り替わった時は、今まで見ていたものをひっくり返すような感覚にとらわれます。
1章だけ読むと、平凡なサラリーマンの日常が怪異の登場により突如崩れ去った、だけのように見えますが……。
視点を変えてみるとどうでしょう。あーっなんてことだ!(ノ∇≦*)
最強霊媒師とのバトルも見所
子供の頃に出会った得体の知れない怪異。
返事をしてはいけない。
その怪異が再び襲ってきた。
御守りが効かない。
霊媒師が登場するも「つ、強すぎる……!」と手も足も出ない。
最強霊媒師、登場。
怪異と最終決戦。
っていう王道すぎるくらい王道な設定と流れ。
ミステリでいうなら、
クローズドサークルとなった孤島の館で見立て殺人が起きて、ダイイングメッセージあり、密室あり、首なし死体あり、最後は名探偵役が容疑者全員を集めて推理を披露する、ってくらい贅沢な設定です。
こんなの絶対読んでみたくなりませんか?
とにかく、面白いホラー小説を読みたいなら、澤村伊智さんで間違いなしです。
今のところ、
『ずうのめ人形』
『恐怖小説 キリカ』
『ししりばの家』
の4作品を書かれているのですが、どれも本当に面白いんです。打率100%ですよ。
今後のご活躍に期待するばかりです。
ああ、早く映画版を観たい。
あのシーンはどうやって撮影するのだろうか。



コメント
コメント一覧 (8件)
ししりばの家は読みましたね。ぼぎわんには挑戦する気になれない笑
ひらがな四文字でこわがらせてくるのはぜひともやめてほしい
ししりばも良いですよねー!
ぼぎわんは本当に怖いです笑
本気で夜中トイレ行くの怖くなります。
その四文字のセンスが絶妙ですよね。なんか気持ちの悪い感じが伝わってくる。。
二度目のコメント失礼します。
楽しみにしていたぼぎわん読みました\(^^)/
anpo39さんのお陰で読むようになった三津田信三さんと並ぶ位に良質なホラー小説で面白かったです。
あの不穏な余韻を残す終わり方は日本のホラーぽいなと思いました。後トイレが怖くなりますね。
anpo39さんの紹介もあって他の作品も読みたくなりました!
あおいさんこんばんわ!(´∀`*)
ぼぎわん読まれたんですね!
そうそう、デビュー作と思えないくらいの完成度でびっくりしました。
もうすでに三津田信三さんと並ぶくらいホラーを期待している作家さんです。
あの終わり方は結構好きです笑。私も読んでしばらくは電気たくさんつけてトイレいってました(´、ゝ`)
澤村伊智さんの作品は今のところ全部面白いです。ホントに。ぜひ他も読んでみてください!
久しぶりにコメントさせていただきます。
こちらのサイトで澤村さんの存在を知り、以来文庫化をそれはそれは楽しみにしていたのですが…
読み終わった今は『もうホラーなんてこりごりだぁ!!(泣)』という心境です!
私史上最恐のホラー小説です。
でも、次作もまた絶対読んでしまうんだろうなぁ…。(^-^;)
トイレに行けなくなったのが自分だけでなくて良かったです!!!
アッチョンブリケさんこんにちは!
とても楽しんでいただけたようで何よりです笑
冗談抜きで、ぼぎわんはホラー小説の中でもトップクラスの怖さだと思います。
これ読んで普通にトイレ行ける人はおかしいですよ……。
澤村伊智さんの作品は本当にハズレなしですのでぜひ読んでみてください。そして震えてください!笑
ぼぎわん、読みましたー。いやー、ほんと直球ホラーでした。物の怪的な怖さもありつつ、人間の怖さもありました。読みやすくてかなり一気読みできました!
かつてリングシリーズは読みましたが、活字ホラーは人間のイメージや想像力で怖さを増しと思います。自分が怖いと思うもののイメージを重ねてしまう気がします。
映像化はまた違った怖さ、楽しみがあると思うので、来る、もいずれ観てみたいと思います。ちなみに、リングは小説のラストで頭に描いていたイメージが映画のラストの映像とほぼ重なって、さらに怖さを感じました。
しかし、シリーズタイトルのひらがな4文字はなぜか不気味さを感じさせますね。
読まれましたかー!
いいですよね、こういう直球ホラーは。
活字ホラーは人間のイメージや想像力で怖さを増す、というのはすごくわかります。
私も映画化した『来る』がどんな風になっているか観てみたいですね。文章で読むあの怖さをどれだけ表現されているのか。。
まさに、ぼぎわん、不気味です。