市川憂人『ブルーローズは眠らない』は期待通りの本格ミステリしまくり名作でした-感想あらすじ

待ちに待った日がようやく来ました。

市川憂人さんの『ブルーローズは眠らない』が先日発売されましたー!

新時代の『そして誰もいなくなった』とも言われた『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第二弾なわけですが、まず一言。

 

うん。このシリーズ好きだわ。

 

というか市川憂人さんの作品好きです。

ジェリーフィッシュにしろブルーローズにしろ、私の好きなミステリの「ツボ」をぴったりおさえてくるんですよね。これはシリーズずっと追いかけていくやつですわ。

ジェリーフィッシュがとても好みだったので、続編はどうなっちゃうのかなーって少し不安もあったんですけど、心配無用の面白さでした。

市川憂人さん、ありがとうございます(ノω`*)

 

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目次

市川憂人『ブルーローズは眠らない』

 

まずあらすじですが、今作は〈エリック〉という少年と、このシリーズの探偵役である〈マリア&漣〉の、二つの視点で物語は進められていきます。


両親に虐待され、ついに耐えきれなくなった少年は家から逃亡。

倒れていたところをテニエル博士の一家に保護され、〈エリック〉という名前をつけてもらい、博士の助手として暮らし始めることになりました。

しかし、まだ不安が消えていないというのも事実。エリックは、博士一家にはまだ明かしていない秘密を抱えていました。

それに研究所の地下室には「怪物」が眠っているらしく……。


一方でマリアと漣は、他の刑事から「幻の青いバラを同時期に開発した、テニエル博士とクリーヴランド牧師を調査してほしい」と依頼を受けます。

これまで長い間、「青いバラ」を作ることは不可能だと言われていました。

なのに、クリーヴランド牧師は〈偶然〉に、テニエル博士は〈研究〉によって、同時期に青いバラの開発に成功してしまう。

そんなことがありえるのかーー?

バラの蔓に囲まれた、密室。

というわけで、両者の調査を始めたマリアと漣ですが、なんとテニエル博士が温室で殺害されてしまいます。

しかも、首だけを残した状態で。

さらに現場は密室であり、アイリーンという学生が一緒に閉じ込められていました。

アイリーンは目隠しと猿轡(さるぐつわ)をされており、明らかに他者に施されたものだった、といいます。

 

そして発見時、現場となった温室は、出入り口の扉、窓、天窓すべてが内側から施錠されていました。

でもそれだけなら、糸などを使って簡単に密室にすることはできそうです。

問題は、バラの蔓(つる)です。

その温室の窓は、至る所なくバラの蔓によって覆われていました。これでは窓からの侵入、及び脱出は難しそうです。

しかも出入り口の扉には、内側から『実験体七十二号がお前を見ている』という血文字が書かれていました。扉を開け閉めすれば痕跡が残るはずですが、その様子もない。

 

なぜ密室にする必要があったのか?

①博士を殺害し、②わざわざ首を切断し、③胴体を持ち去り、④学生を拘束し閉じ込め、⑤扉に血文字を書き、⑥蔓に囲まれた温室から消えた犯人。

どうやって密室から消え失せたのか?というハウダニットはもちろん、なぜ密室にする必要があったのか?というホワイダニットも気になるところです。

首を切り取った時点で、自殺に見せかけるためではないことは明らか。

博士と一緒に閉じ込められた学生に罪を着せるためでしょうか。いえ、それなら「明らかに他者に施されたもの」と判断されるくらい手足をきつく縛り上げたりしないでしょう。

そもそも、なぜ学生アイリーンを拘束して博士の死体と一緒に閉じ込めたのでしょうか。

謎は深まるばかりです。

 

ここで、第一の殺人で浮かび上がった「謎」をまとめてみましょう。

・博士はなぜ首を切り取られたのか、

・胴体はどこに行ったのか

・扉に書かれた血文字『実験体七十二号がお前を見ている』の意味は。誰に向けたものなのか。

・なぜ犯人は学生アイリーンを博士と一緒に閉じ込めたのか。そしてなぜ「明らかに他者によるもの」とわかるくらいにきつく縛り上げたのか。

・ドアにも窓にも内側から鍵がかかり、さらにバラの蔓に覆われた密室から犯人はどうやって抜け出したのか。

 

うーん!ワクワクしますねえ!

 

細かいことは言えませんが、これはまだまだ事件の始まりにすぎませんからね。

これからさらに事件の謎は深まっていき、マリアと漣は大変なことに巻き込まれていくわけです……。

 

ジェリーフィッシュに次ぐ、これぞ本格なミステリー。

最初にも感想をサクッと述べましたが、これは本当に面白い「これぞ本格ミステリ!」という作品でした。

完全にツボです。

中盤あたりから「おっ、なんとなく全貌がわかってきたぞ……」なんて思っていましたけど、全然違いました。そこから二転三転して大変でした。

最後の最後まで犯人もトリックも見当がつかなくて、明かされた時に「ええええ!」ってなる本気で楽しめたミステリでしたね。

メインとなるあの仕掛けには「おおおお!」でしたし、博士殺害の密室トリックには「ふええええ!」でした(なんだこの幼稚な感想)。これは良い密室です。

読みながら、「ああ、面白い本格ミステリ読んでいるなあ」としみじみしてしまいました。

少年エリックとマリアたちの二つの視点から進む物語、不可能と呼ばれていた青いバラの同時開発、地下室に眠る怪物、バラの蔓に囲まれた密室、首だけを残して発見された博士、扉に書かれた血文字、現場に取り残されていた学生アイリーン……

などなど、魅力的で不可解な謎がすべて絡み合っていき、綺麗に収束していくラスト!

そしてまさかの犯人!!

もう気持ち良さすら感じます。

これは、あれだ。私の好きな、本格ミステリだ。

 

おわりに

前作『ジェリーフィッシュは凍らない』と同様、非常に完成度の高いミステリでした。

それでいて読みやすく、マリアと漣のコンビの掛け合いも楽しい。これからも二人の活躍を追って行きたくさせる作品ですね(私は間違いなく追いかけます)。

これでは次回作の期待値がどんどん上がっていってしまいます。今からシリーズ第三弾が楽しみー(´∀`*)

 

それでいて、ミステリとしてもそうですが、とても心に残る物語でもありました。

まさかこんな読後感になるとは……。


これまで青いバラは自然界に存在せず、花言葉は『不可能』とされていていました。

しかし現在、技術の発達のより青いバラが開発され、花言葉は『夢 かなう』に変更されたそうです。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (10件)

  • さきほど返信にもしましたが、
    ジェリーフィッシュも読んでないのに、第2段が(○_○)!!
    バラっていう時点でかなり惹かれます❗
    順番に読んだほうがいいんですかね?
    でも、なかなか積ん読が!本の山が!(笑)

    • いやー出ちゃいましたね!第二弾!
      そうですねー、本当にどちらも面白い作品ですので、できれば順番に読むことをオススメしますよー(*´ω`)

  • いやはや、ちょうど一年ほど前でしたか。このブログで「ジェリーフィッシュ」が紹介されたのを見て読み始めた僕には感慨深いというか何というか。謎は魅力的だわ展開は面白いわと最高でしたね。こういう本格ミステリが読みたかったんだよ!って感じで。前作と比べても遜色のない出来栄えで感嘆させられることしきり。トリックの衝撃といったらもうお腹いっぱいでした。今後とも追いかけ続けたいシリーズですね。

    • おお、まさかこのブログでジェリーフィッシュを知っていただけたとは……!ありがとうございます。
      そうなんですよ、ジェリーフィッシュを読んだ時、まさに「こういう本格ミステリが読みたかったんだよ!」という思いでした。
      そして第二弾も安定の面白さ。トリックもキャラクターも物語も申し分ないです。これは、間違いなくシリーズを追いかけていきますねー(ノω`*)

  • ジェリーフィッシュが最高に面白かったので、こちらも期待して手に取りましたが・・・うーん。なんだろう。無理にこねくり回しているというか、頑張って小難しくしているような印象でした。作者は頭の良い方なんでしょうね。私が頭の良い読者だったらもっと楽しめるんでしょうか。。。

    特に、犯人が事件を起こした動機にいまいち共感できず・・・入念に準備してそんなヒョエーなトリックで事件を起こさんでも、憎んでいるXさんをグサッと一撃して葬るとかで良くない?ダメなの??わざわざ大事件を起こす必要なくない?と思ってしまいました。

    とはいえ、ノンストップで時間を忘れて一気読みしてしまいました。市川さんの文章は引き込まれるものがありますね。シリーズの次作に取り掛かっているようなので、そちらを待ちます(また1年後かな~)。

    • ジェリーフィッシュが面白すぎた感じはありましたよね。笑
      確かに無理やり難しくしていると言われると、そう思えますね。頭の良さが伝わってきます。私は追いついていくのがやっとでした(ノω`*)
      動機に共感できないのは、こんなトリックをお見舞いしてくれたのだから、まあいいか!という感じです笑。
      ですよねー。このシリーズは本当に読みやすいし、物語に引き込ませる魅力があります。私も第三弾が楽しみで仕方ありません!1年も待てるでしょうか。。いや、1年に1作出してくれたら良いペースなんですけどね。。楽しみすぎて( ´∀`)

  • 読みました!たしかに第一弾の衝撃が強すぎましたが、この作品も十分面白かったです!まさかの犯人&トリックにポカーン…でした(笑)
    マリアと蓮のコンビが大好きです(o^^o)脇役陣のキャラもいい味出してますし。私はホラー系やグロテスク系、官能系な描写のあるミステリー小説は苦手で、本格といわれている王道のミステリーが好きなんですが(わがままですね、すみません苦笑)、それだけじゃなくて、こういうキャラクターに魅力があるミステリー小説が好きなんだなぁと認識させられました。第三弾も楽しみなシリーズものです☆

    • さくらっころんさんこんにちは(´∀`*)
      読まれたのですね!そうそう、第一弾と比べてしまうと衝撃度的には控えめですが、1つの本格ミステリとしてすごい面白い作品だと思います。
      ですよねーマリアと蓮のコンビ良いですよねー!私も今本気で楽しみにしているシリーズの1つでして、これからもどんどん活躍を見ていきたいです。
      私はグロイのはなんとか大丈夫ですが、結局こういう王道本格ものが一番好きです。いやほんと、キャラクターの魅力って大事ですよね。
      というわけで、やっぱりこのシリーズは最高だということです!

  • こんにちは。ブルーローズも読みました。最高でした。
    途中、こんなに魅力的な謎がてんこもりでどうなるんだ〜って嬉しくてドキドキしましたが笑、
    すごく見事な結末で、青い薔薇っていうモチーフも、マリアたち、博士一家たちのキャラクターも、ミステリーも全部大満足でした。
    第1作、第2作がこんなに質が高いって本当に凄いですね。

    そして、年末ですのでanpo39さんに改めて御礼を。
    今年は、偶々こちらのブログを知り、とっても読みたくなるご紹介のおかげで、市川憂人さんの作品の他にも、ミステリーアリーナ、時限病棟、満願、ロートレック荘、他沢山の作品に出会う事が出来ました。
    まだまだ読みたい作品は沢山あって、こちらのブログはまさに宝の山です^^
    面白い本を読んでいる時って本当に幸。本当にありがとうございます。

    • おはようございます林檎さん!
      ブルーローズ、最高ですよね。
      あふれんばかりの魅力的な謎、舞台設定、キャラクター、何もかもがツボです。
      本当に市川 憂人さんはすごいと思います。これからのシリーズが楽しみで仕方ありません。
      いえいえ、こちらこそありがとうございます!それだけたくさんの本を読むきっかけになれて本望です。ブログをやっていてよかった。。
      もう、宝の山なんて、私にとって最高の褒め言葉です。本当にありがとうございます。
      やっぱり面白い本を読んでいる時って幸せですよね!!
      来年もたくさん面白い本を読んでいきましょう!良い読書ライフを!(*´∀`*)

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