イギリスに留学中のリセ・ミズノはとあるパーティーに招かれる。
それは薔薇をかたどった“ブラックローズハウス”と呼ばれる館で催されるものであり、そこには貴族であるレミントン一家が住んでいた。
リセはパーティーに招いてくれた友人・アリスやその家族と交流を深めていくが、その近くでは恐ろしい事件が発生する。
事件はパーティーの最中に起こった。
あろうことか屋敷の敷地内で首と胴が切断された遺体が発見されたのである。
「祭壇殺人事件」と名付けられたその事件は、まるで“とある凄惨な事件”をなぞらえたかのようだった―。
果たして事件の真相とは?
そして語られていく“聖杯”にまつわる物語とは?
猟奇的殺人事件の謎に主人公・リセが挑む。
大人気の水野理瀬シリーズ最新作!
恩田陸の作品の中でも人気の水野理瀬シリーズの最新作です。
このシリーズでは主人公である水野理瀬が全寮制の学校に転入し、学園内で起きるさまざまな事件を解決していくというもの。
全寮制学校ならではのミステリアスな雰囲気と、水野理瀬の痛快な推理を楽しみにしているファンも多いのではないでしょうか。
既に外伝含め8作品が登場していますが、今作「薔薇のなかの蛇」では水野理瀬の登場シーンは少な目。
物語の舞台はレミントン家の薔薇の形をした館で、そのレミントン家の長男、アーサーの視点で物語が進行します。
水野理瀬シリーズでは水野理瀬がほとんど登場しないストーリーもいくつかありますが、このシリーズを読んだことのない方にとっては少し情報不足を感じるかもしれません。
他の作品も面白いものばかりですので、先に一作目の「三月は深き紅の淵を」から読んでみてもいいでしょう。
反対にすでに水野理瀬シリーズを読んだことのある方にとっては、また違った視点で水野理瀬を見ることができる内容になっています。
これまでの作品の内容を彷彿とさせる描写もあり、ファンにとっては嬉しい面もあるでしょう。
まだまだ謎の多い水野理瀬が今作でどう活躍するのか、今後どんな面を見せてくれるのか、さらに期待が高まります。
イギリスの洋館で繰り広げられるゴシックミステリー
これまでの水野理瀬シリーズの舞台は国内でしたが、新作となる今作の舞台はイギリスです。
ブラックローズハウスという薔薇の形をした屋敷で繰り広げられる殺人事件には不穏でミステリアスな雰囲気が感じられ、古い海外映画を見ているような気持ちにさせてくれます。
村の雰囲気の描写も丁寧にされており、イギリスやヨーロッパ、さらにそのような国々の都市部ではない小さな村に訪れたことがない方でもすっと物語の舞台に入り込むことができるでしょう。
霧雨の降る街の空気感、閉鎖的な一族、小さな村で起きる残忍な殺人事件など、ゴシックミステリー好きにも嬉しい要素がたくさん詰まっています。
殺害方法や怪現象には少しホラー要素もあり、物語を緊迫感のあるものにしてくれています。ホラー小説が苦手な方は明るい時間帯に読むことをおすすめします。
ですがこれまでの水野理瀬シリーズが好きな方はもちろん、海外の古典ミステリー小説が好きという方にもハマる内容です。
続編はいつ?の声もすでに多数!
水野理瀬シリーズは今作「薔薇のなかの蛇」が最新作ですが、前回が発表されたのはなんと17年前です。
ファンの間ではもう続編は出ないのではないかとも言われていました。
シリーズの初期ではまだ少女だった水野理瀬も、今作では大人びてより一層美しく、賢明な女性に成長しています。水野理瀬の成長を感じながら読むのもいいでしょう。
17年ぶりの新作ということもあり、過去の作品を知らないという方も多いですよね。
今作単品で読んでも、物語としては非常に重厚で面白いのですが、水野理瀬の人となり、なぜそのような人物に育ったのか、何がしたいのかという点についてはわかりにくいかもしれません。
すでに多くのファンから続編を期待する声が多数寄せられていますので、次回作を待つ間に過去のシリーズ作を読んでみるのもいいでしょう。
「三月は深き紅の淵を」、「麦の海に沈む果実」、「黒と茶の幻想」、「黄昏の百合の骨」の順番で読むのがおすすめです。
外の世界と遮断された空間の中で事件が起きるクローズドミステリーが好きな方や、全寮制の学園という特殊な設定に古典的な懐かしさやかつての少女漫画のような魅力を感じるという方は、ぜひチェックしてみてください。
コメント