綾辻行人さんの『人間じゃない』が出ちゃいました。
もうタイトルからして好き。表紙も美しい。あー面白い。
先日、2月24日に発売した『人間じゃない』は、綾辻さんの今までの単行本に収録されていなかった短編・中編、合わせて5編を収録した作品集となっております。
結論から言いまして、綾辻さんファンには最高の一冊です。ホントに(*´∀`*)
『人間じゃない 綾辻行人未収録作品集』
収録されているのは
1.「赤いマント」
2.「崩壊の前日」
3.「洗礼」
4.「蒼白い女」
5.「人間じゃない――B〇四号室の患者――」
の5編。
今回は、その中の三つのお話を簡単に見てみましょう。
1.「赤いマント」

メインとなるのは「赤いマント」という学校の怪談的なもの。トイレに入っていると「赤いマントをかぶせましょうか」という声が聞こえてきて、「はい」と答えると血まみれになって死んじゃう、みたいな。
で、ある夜。
道沢希早子(『人形館の殺人』の登場人物)が帰宅していると、彼女の教える塾の生徒・水島由紀とばったり出会う。
お腹が痛いので公園のトイレに入りたいらしいのですが、そのトイレは「赤いマント」の噂で有名なので怖くて入れないとのこと。
じゃあ私が見張っててあげましょう、ってことでトイレの前で待つ希早子。が、どこからともなく聞こえてきました。「赤いマント」の声が。
パニックになる二人。なかなか開かないトイレのドアがやっと開いたと思ったら、個室の中には真っ赤に染まった水島由紀の姿が・・・。
一体誰が?どうやって?何のために?
なんとこの「赤いマント」は、「館シリーズ」の四作目『人形館の殺人(講談社文庫)』の後日譚に当たる物語。もうこれだけでワクワクですよね〜。
とは言っても内容は『人形館の殺人』が大きく絡んでくるわけでもありません。
『人形館の殺人』の登場人物である架場久茂と道沢希早子が登場しますが、人形館を読んでいなくても楽しめる非常にまっとうなミステリとなっております。
3.「洗礼」
僕の元に届いた手紙と一冊のノート。そこに書いてあったのは一つの小説。
大学生バンド「YellowZombie/イエローゾンビ」のメンバーの一人が殺害された。
死体が握っていたのは、ボーカル・我猛のギター。しかも五弦と六弦だけを掴んで。このダイイングメッセージが示すものとは?!
という犯人当てミステリ。読者への挑戦も挿入されています。
今作は超難問犯人当て作品集『どんどん橋、落ちた(講談社文庫)』の番外編。五話で終わらせるつもりだったのにもかかわらず、書かざるをえなかった中編とのことです。
ありがたい、ありがたい。。
5.「人間じゃない――B〇四号室の患者――」
精神病棟で語られる、ある事件。
「星月荘」という別荘にやってきたのは、ぼくを含めて4人。
そのうちの一人が、完全な「密室」でありえない姿で発見された。
折れ曲がり、捩れた身体。ちぎれかけた四肢と頭部。あたりを染めたおぞましい色。加えてーー。
P.184より
彼女のーー肉体はまさしく、何か異常な、人ならぬものの怪力によって破壊されたようにしか見えなかった。どう考えても、事故死は自殺ではない、ありえない。
P.185より
このような姿になる前、彼女が口走った「人間じゃないものが、いる」とはなんだったのか。
詳しく言えませんが、私この作品大好きです。笑
ぶっ飛び具合が最高です。後味も好き。さすが表題作!といったところでしょう。
精神病棟を舞台にした『フリークス (角川文庫)』の番外編とのことで、ほんとに『フリークス』の世界観が好きな私にはたまらない内容でした。
もともと漫画原作であり、「漫画だからこそ成り立つ仕掛け」をどうやって小説にするか難題だったそうです。
綾辻さんの作品が好きなら読むべし!
他にも、『眼球綺譚 (角川文庫)』に収められている「バースデー・プレゼント」の姉妹編『崩壊の前日』や、
『深泥丘奇談・続々 (幽BOOKS)』に収録されている「減らない謎」の前に位置するエピソード「蒼白い女」が収録されています。
つまりは、綾辻行人さんの作品を読んできた方にとっては最高の一冊ってわけですね!
これは皆さん読むしかありませんねえ……。ふっふっふ。
とはいえ「赤いマント」とか「人間じゃない――B〇四号室の患者――」など、元の作品を読んでいなくても楽しめるなーという印象でしたね。
もし未読でしたら、この機会に元の作品も読んでみちゃってくださいな!