ここ最近1ヶ月くらいの間に読んだ新刊の中で面白かったおすすめ作品を5作品紹介させていただきます。
どうぞ参考にしてくださいな!
1.榊林 銘『あと十五秒で死ぬ』
殺害された「私」が、死神から与えられた十五秒を使って、自分を殺した相手に対し反撃を仕掛ける。
わずか十五秒で「私」は何をすることを選ぶのか。十五秒で死ぬという共通の設定で描かれた全四篇収録のミステリー短編集。
死までの十五秒という一風変わったテーマで、それぞれ違う四つの事件が描かれる本作。
表題作である「十五秒」の他に、ドラマの最終回を観ていたときに、少し席を離れていた隙に予想もしていなかった結末になっており、何が起こったのかを推理する「このあと衝撃の結末が」。
事故に遭うまでの十五秒を何度も夢で見る「不眠症」。十五秒の間なら首が取れても生きている「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」等、それぞれ違った趣向の物語が楽しめます。
軽妙な文体で書かれており、気軽にミステリを楽しみたい方におすすめな作品です。
どの短編も面白いのですが、特に「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」が最高に面白かったですね。傑作です。これだけでも読む価値あり。
作者の榊林 銘さんはこの小説がデビュー作と言うことですが 、トリッキーな状況設定を上手く使い独自の世界観を構築しています。
今後の活躍が期待される作家さんです。
阿津川辰海『蒼海館の殺人』
辺りが水に囲まれた館での殺人事件。
前作の事件をきっかけに探偵であることを辞めてしまい、実家に引きこもる葛城。
そんな彼を説得するために、助手である田所は彼の元を訪ねる。しかしそこでまたしても殺人事件は起きたのだった。
前作、『紅蓮館の殺人』の続編となる本作。今度は蒼海館と呼ばれる館が舞台となるミステリー。
刻々と迫る洪水と、増える死体、そして悩み葛藤する「名探偵」葛木。
探偵とは何なのか。もし探偵の所業により、人の人生を狂わしてしまったらどうすれば良いのか。
単なるミステリーでは留まらない人間ドラマの物語。阿津川辰海先生の、ミステリー作家として本作にどれだけの思いを込めたのかが伝わってきます。
首のない死体、華麗なる一族、大人に信じてもらえない子供の目撃談、閉鎖的な空間で起こった悲劇など、読者の期待に応えるかのような王道な設定も健在で、物語を一層盛り上げてくれます。
600ページもの大ボリュームで読み応え抜群の小説です。
宇佐美まこと『羊は安らかに草を食み』
86歳になる都築益恵は、認知症を患い記憶を失いつつあった。
太平洋戦争末期、満州事変より命からがらたどり着いた祖国、日本。彼女は自分の人生をさかのぼる最後の旅をして、様々な土地を巡り歩いていく。
そこで浮かび上がってきた、壮絶な真実とは。
何度この本を読むたびに心を震わされたことでしょうか。
過去の記憶の断片によって苦しんでいる都築益恵こと、まあさん。
彼女の心のつかえ取り除いてあげたい一心から、長年友人でもある持田アイ、須田富士子はまあさんを最後の旅へと連れ出す物語。
ただ認知症の老人の話というわけではありません。戦争がひどいというような話でもありません。
生きるとは、生き抜くとはどういうことなのかという魂の本質を問いかけてくる物語です。
作者である宇佐美まことさんは、今年64歳になりますが、その年齢だからこそ辿り着ける境地であり、思いなのだなと深く考えさせられます。
タイトルも最初はよくわかりませんが、読んだ後に「あー、なるほどな」と納得することでしょう。
碧野 圭『書店員と二つの罪』
書店員である椎野正和は、とある少年犯罪者の告白本の存在を知り驚愕する。
その少年犯罪者とは、14年前に女子中学生を惨殺した張本人であり、正和の友人でもあった。
当時仲の良かった正和は、犯人の共犯と疑われてしまい、無実が証明された後も、誹謗中傷を受けた経験がある。
何故、今になってあの事件の告白本が出版されることになったのか。正三はその真意を探るべく名古屋に向かった。
書店を舞台にしたクライムミステリー小説。
書店員の仕事風景や、出版・書店業界の裏事情を交えつつ、告白本をめぐる謎の果てに待ち受ける意外な真実。
神戸で起きた連続児童殺傷事件の犯人、酒鬼薔薇聖斗が2015年に出版した告白本「絶歌」をモチーフとしたミステリーです。
当時、この本が出版されることの是非を巡って、世論を取り巻く大きな論争が起こりました。
売れればそれで良いのか。モラルや倫理観よりも、日本の犯罪史における歴史的価値を重視するべきなのか。
暗く重い展開が続く中で、人間の本質を突く卓越した描写力には思わず唸らされます。
後半で、とある人物が語る言葉に、作家の碧野圭さんの祈りのような思いが込められているのだろうなと感じずにはいられません。
折原 一『傍聴者』
交際した相手を次々に殺害した罪に問われた牧村花音。
彼女と付き合った男達は皆、金品を貢いだ後に練炭自殺に見せかけて殺害された。
ジャーナリストの池尻淳之介は、友人が彼女に殺されたことをきっかけに、真相を探るべく花音に近づく。そして思わぬ事件の全貌が表れたのだった。
折原一さんの「○○者」シリーズの最新刊。
婚活連続殺人事件の容疑者である牧村花音。特別美人というわけでもない彼女に男達は惚れ、金品を貢がされ殺害されます。
彼女の裁判を傍聴する4人の女性が結成した「毒っ子倶楽部」と、ジャーナリストの池尻淳之介を交え話は進ます。
2007年に起きた木嶋佳苗による婚活連続殺人事件がモチーフであると思われる本作。
折原一さんの描く倒叙ミステリーの、後半で全てがひっくり返る展開には、およそ誰も想像出来はしないのだろうかと思う程に秀逸です。
牧村花音の「花音劇場」と呼ばれる裁判では、所々コメディのようなやりとりもあり、存分に楽しませてくれる作品です。
おわりに
以上、最近読んで面白かった新刊まとめでした!
参考にしていただければ嬉しいです。
それでは、良い読書ライフを!(*’▽’*)
コメント
コメント一覧 (2件)
遅ればせながら、ブログ再開されたのですね!こちらのブログを参考に本を購入しているのでとても嬉しいです、ありがとうございます!
つい先日帯とあらすじに惹かれて紅蓮館と蒼海館を買ったのですが、ミステリーに留まらない人間ドラマ・読みごたえ抜群とのことでますます楽しみになりました。『あと十五秒で死ぬ』も気になります…!
このブログを読まなかったら出会わなかった本がたくさんあります。お体に気をつけてお過ごしください。
えーとさんこんにちは!
そうなんです、なんとか復活することができました!
参考にしていただけているようでとても嬉しいです、ありがとうございます(*’ω’*)
『あと十五秒で死ぬ』面白いですよ〜ふふふ、ぜひ読んでみてくださいな!
これからも更新していく予定ですので、よろしくお願いいたします!