芦辺拓『異次元の館の殺人』が文庫化!推理を間違えれば最初からやり直し?!

 

さて今回は、芦辺拓(あしべたく)さんの『異次元の館の殺人』のあらすじや感想などをご紹介させていただきます。

『異次元の館の殺人』は2015年の「このミステリーがすごい!」で10位にもなった作品。

 

館ミステリの中にSF要素を取り入れた非常に面白い試みの物語となっております。

この度めでたく文庫化いたしましたので、ぜひご参考にしていただければ幸いです(●>ω<)っ

目次

芦辺拓『異次元の館の殺人』

今作の主人公は検事の菊園綾子(きくぞの あやこ)。

彼女は先輩検事の無罪を晴らすべく、弁護士の森江春策と共に洋館「悠聖館」に行くことに。

そこにある世界最大級の放射光研究施設で事件の証拠品を鑑定してもらい、先輩検事が捕まってしまった事件の真相を突き止めようとしたのです。

 

だがしかし!ここで大事件。

鑑定に使用していた放射光装置が突如暴走してしまったのです。

それによって、なんと菊園綾子は「パラレルワールド」へと飛ばされるようになってしまう・・・。

証拠品鑑定のため、粒子加速器をもつ研究施設を訪れた検事の菊園綾子。だが鑑定中に加速器が暴走し始める。一方、調査のため弁護士の森江春策と共に西洋館を訪れた菊園は、密室殺人事件に遭遇する。

推理を間違えればまた最初から!!

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「パラレルワールド」というのは、今いる世界から分岐して、その世界と並行して存在する別世界のこと。

やはりこの作品の面白いのはココですよね。

機械の暴走の後、菊園綾子たちは殺人事件に巻き込まれてしまうんですが、それを皆の前でズバッと菊園綾子が推理するんです。

が、その瞬間に世界が揺らぎ、綾子は光に包まれてしまう。

そして気がつくと、推理を披露する前に戻っていた!ってことなんですが、何か様子がおかしい・・。

一見、SF小説でおなじみの「ループ」とも思えるこの現象ですが、実はちょっと違うんです。

微妙に変化してしまう状況

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推理を間違えると、推理する前に飛ばされてしまうというこの現象。

似たような作品で、西澤保彦さんの『七回死んだ男』という名作ミステリ小説があります。

『七回死んだ男』では「殺人が起きる前」に戻ってしまう。この場合は「同じ日の過去」に戻るわけですよ。同じ日を繰り返す。つまり「ループ」するんです。

 

でもこの『異次元の館の殺人』では、単に過去に戻るのではなく「パラレルワールド」に飛ばされるわけで。それも事件がすでに起きた後の世界に。

で、パラレルワールドということは元の世界と微妙に違いが生じるんです。

登場人物の名前はもちろん、なんと事件現場の状況までも。

前回にはあったアレがない。

アレがコレに変化している。

などなど、状況が変化してしまっているので前回した推理が全く使えないものになってしまうんです。

この微妙な違いが実に面白く、この作品の大きなポイントとなっています。

多重解決も楽しめるよ!

推理を間違えれば推理をする前に飛ばされてしまうし、さらに事件現場の状況が変わってきてしまう。

ということは、その度にまた新しい推理をしなければならないことになります。

つまりこの「パラレルワールド」というSF要素を取り入れることによって、この作品では「多重解決」が楽しめることになるんです。

「多重解決」といえば複数の人物がそれぞれ推理を披露する、というイメージが強いかもしれませんが、『異次元の館の殺人』では一人の探偵で「多重解決」ができちゃうんですね〜( ´∀`●)

おわりに。

というわけで今回は、芦辺拓さんの『異次元の館の殺人』を簡単にご紹介させていただきました。

今作『異次元の館の殺人』は「森江春策の事件簿シリーズ」の一作となります。

ですが、いきなりこの作品から読んでも十分に楽しめるようになっていますのでご安心くださいませ。

登場人物のキャラもとても良いので、お気に召していただけた方はぜひ他のシリーズ作品も読んでみてくださいな〜!(*´ω`)ノ

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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