国内ミステリー小説

『アルファベット荘事件』- トリックメーカー北山猛邦さんが贈る幻想本格ミステリ!

巨大なアルファベットのオブジェがいたるところに置かれた『アルファベット荘』。

岩手県の美術商が所有するその屋敷には、オブジェの他に『創生の箱』と呼ばれるものが置いてあった。

『創生の箱』を所有したものはみな死ぬという不気味な伝説を持つ箱。

雪が舞う12月のある日、そこで開かれるパーティに10人の個性的な面々が集まった。

主催が一向に登場せず、不安からか悪くなっていく雰囲気。

そして夜が明けると『創生の箱』に詰められた死体が現れて──。

売れない役者、変人にして小劇団の看板女優、そして何も持たない探偵が、奇妙な屋敷の幻想的な事件を解き明かす!

当代きってのトリックメーカー・北山猛邦の、長らく入手困難だった初期長編が待望の復刊!

個性的なキャラクターによる本格ミステリー

この作品の見どころの一つは、作者によって形づくられたキャラクターたちの魅力的な一面です。

たとえば、不可能犯罪の解決のためだけに存在する探偵、通称ディ。

彼は名前も持たず、家族も友達も親戚も恋人もいない、ただ犯罪解決のためだけに存在する人物として登場します。

そしてディととある殺人事件を通して知り合った劇団『ポルカ』の看板女優とその後輩女優。

彼らはアルファベットのモチーフがたくさんあしらわれたアルファベット荘に向かいますが、そこにも犯罪と密接に関わる人物たちが。

これらの個性的なキャラクターが数多く登場し、本格ミステリーを展開していきます。

また、雪や山荘・実質的な密室であるクローズドサークルなど定番のミステリー要素が次々登場し、ストレートな本格ミステリーを楽しめるのも魅力の一つ。

本格ミステリーの名手として名高い作者の幻の初期作品ということもあり、所々粗削りと感じる部分もないわけではありませんが、それを補って余りあるほどの愉しさを得られるはず。

アルファベットのモチーフも、後の方でしっかりとトリックに関わってきます。

呪われた箱、倫理から外れた動機など薄暗い魅力にあふれる

本作のコアの一つである『創生の箱』とは、持ち主がみな死ぬといういわくつきのアイテム。

その不気味な伝説の通り、創生の箱からは突如バラバラ死体が。

この死体の発見から物語は急速に動いていきます。

作品全体が薄暗く幻想的でどこかホラーチックな雰囲気に包まれており、幻想小説・幻想ミステリーが好きな方にはたまらないはず。

明かされる犯人の動機もまた、倫理から外れたような一般には受け入れがたい歪んだ考え方で、それもまた作品全体の雰囲気づくりに一役買っています。

そしてプロローグからエピローグへとつながり明かされる、ある二人のもの哀しい物語。

キャラクターや事件、トリックなどすべてが合わさって一つの雰囲気を創り上げています。

伝説の怪しい箱につめられた死体、雪密室の状況下での『創生の箱』の移動、独特な館の雰囲気。

他のミステリーとは一味違う、不気味でホラーみのある独特のミステリーを読みたい方におすすめの作品と言えるでしょう。

待望の超初期作品が復刻!ファンなら読むべき1冊

本作は、本格ミステリーの名手として数多くの作品を発表し、これからも期待されている北山猛邦氏の幻のデビュー作品。

当時のレーベルが消滅した影響で長らく絶版だったところ、このたび約20年ぶりに復刻し、話題となっています。

2002年に『「クロック城」殺人事件』で第24回メフィストを受賞・デビュー後、「城シリーズ」「少年検閲官シリーズ」「名探偵音野順の事件簿シリーズ」など、さまざまな作品を発表してきた北山 猛邦氏。

【北山猛邦】《城シリーズ》の順番とおすすめとあらすじ北山猛邦さんが描く「城シリーズ」の順番やあらすじなどをご紹介です! 個人的にですが、私は「お城」などの雰囲気のある建物が舞...

ほとんどの作品において世紀末的・終末的イメージのある独特の世界観が構築されており、それが人気の理由の一つ。

また、北山氏のミステリーといえば有名なのが物理トリック。

物理トリックとは特殊な環境における物を使ったトリックのことであり、北山氏はその名手とされています。

やり過ぎればありえない、やらなさ過ぎればつまらないという扱いの難しい物理トリックを難なく扱う技量の持ち主なのです。

そんな北山氏の幻の初期作品が復刻しいつでも読めるようになったのですから、ファンにとってはたまらない作品なんですね。

読んでみると、その全体的な雰囲気であれ物理トリックであれ、現在において確立されている作風のさきがけのようなものを感じることができます。

これまで北山氏の著作を読んできてその作風にハマっている人、読んだことはないけれど興味のある人は、ぜひこの機会に手に入れて読んでみてはいかがでしょうか?

骨太のミステリーを読んだ時の読み応えと幻想小説を読んだ時の不思議な読後感が、読み終わった後のあなたを包み込んでくれるはずです。

北山猛邦『踊るジョーカー』- 世界一気弱な名探偵、音野順の第一の事件簿。推理小説家の主人公、白瀬とその友人、音野が次々に事件に巻き込まれ、そして解決していく連作短編集です。 「踊るジョーカー」では父親殺...
『密室から黒猫を取り出す方法』名探偵・音野順の五つの活躍を収めた短編集、シリーズ第二弾!臆病者の名探偵が再び事件を解決するシリーズ第二弾です。 「密室から黒猫を取り出す方法」では首吊り自殺に見せかけが殺人事件を、臆病者...
北山猛邦『猫柳十一弦の後悔』は、探偵のあるべき姿を考えさせられる名作本格ミステリですさて、「城シリーズ」が大好きな北山猛邦さんの『猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数』です。 表紙絵は「今時のライトミステリー」って感じ...
ABOUT ME
anpo39
年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)
あわせて読みたい

POSTED COMMENT

  1. orsaymn より:

    おおっ~! この復刊も嬉しいですね。表紙の雰囲気が幻想的で、とってもいいです。

    北山猛邦さんの「アリス・ミラー城」は、ミステリー・マイベスト3に入ってますからね~。(叙述トリック部門では1位!)

    これからも素敵な記事、楽しみにしてます。

    • anpo39 より:

      orsaymnさんこんばんは(*’▽’*)
      この作品もとても面白かったですよ〜!

      私も「アリス・ミラー城」は数あるミステリの中でもトップクラスで好きです♪

      楽しみにしていただきありがとうございます!
      これからもよろしくお願いいたします!

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。