柄刀一『或るエジプト十字架の謎』国名オマージュがピリリと活きるシンプルな短編小説集!

柄刀先生の人気シリーズ、南美希風(みなみ みきかぜ)シリーズの最新刊である、『或るエジプト十字架の謎』。

どこかで聞いたことのあるタイトルだとミステリ好きなら勘付いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そう、このタイトルはエラリー・クイーンが1932年に発表した作品、『エジプト十字架の謎』をオマージュしているのです!

しかし、クイーンの作品を読んでいなくても読んでいたとしても楽しめる作品となっています。

そんな今作品を詳しくご紹介していきます!

柄刀 一『或るエジプト十字架の謎』のあらすじ

全体を通したあらすじをご紹介します。

トランクルームの密室。白い粉が舞い散る殺人現場。足跡なき泥濘の逃亡者。案内板に磔にされた首のない死体―。南美希風が、奇跡を偽装した不可能犯罪の数々に挑む!世界法医学交流シンポジウムのために来日したアメリカ人法医学者エリザベス・キッドリッジ。美希風にとって、彼女は恩人の娘にあたる。法医学のための実地検分として、謎めいた事件現場に赴くエリザベスと、ガイド役として付き添う美希風は、神の悪戯としか思えない不可能犯罪を解明できるのか!?
引用:(「BOOK」データベースより)

この南美希風という人物は、OZの迷宮 ケンタウロスの殺人(2006年既刊)から登場し、元医学生でギャンブラーだった月下という男性から探偵業を引き継いでいます。

実はかつて心臓を患っていた過去があり、心臓移植で一命を取り留めたという設定があります。

正直本書も、南美希風シリーズを読んでいた方が南の人間性やストーリー性にのめり込める部分が大いにあります。しかし、そうでなくても楽しめる作品ですのでご安心を!

オマージュした作品たちの紹介

この小説は短編集となっています。

収録されているのはこの4編。

・或るローマ帽子の謎
・或るフランス白粉の謎
・或るオランダ靴の謎
・或るエジプト十字架の謎

クイーンの国名シリーズのタイトルをなぞっているため、面白いタイトルとなっています。

本書では日本で起きた事件となっており、また本書を読んだとしてもクイーンのネタバレにはならないので安心してください。

それぞれのオマージュ元の作品の紹介をしていきましょう!

或るローマ帽子の謎

クイーンの国名シリーズ「ローマ帽子の秘密」のオマージュ。

クイーンの作品では、ブロードウェイのローマ劇場で異常事態が発生し、劇の進行中にほぼ満席状態の観客席から男の毒殺死体が発見されるというもの。

或るフランス白粉の謎

クイーンの国名シリーズ「フランス白粉の秘密」のオマージュ。

〈フレンチス百貨店〉のショーウィンドのベッドから女の死体が転がり出た。

その女性は百貨店の社長夫人!彼女のハンドバッグからは不審な白い粉が入った娘の口紅が見つかる。

そしてほぼ時を同じくして娘は失踪。娘が犯人かと思われたが、容疑者はその時デパートにいた全員。

そして、誰もが犯行の動機を持ち……。

白い粉が舞い散る殺人現場という部分では本書もなぞらえている部分があります。

或るオランダ靴の謎

クイーンの国名シリーズ「オランダ靴の秘密」のオマージュ。

オランダ記念病院に救急搬送された一人の患者。

だが、手術台に横たえられた彼女は既に何者かによって絞殺されていた。

犯行が可能だったのは手術前のたった数十分だけ。

状況証拠から執刀医が犯人だと疑われたのだが、執刀医本人は何者かが自分に変装したと主張したのだ。

実際に数々の証拠が見つかるも不審な点も多く…。

本書ではこの章がかなり人気でした。

正直にお伝えすると、ふたを開ければ一番単純な真相なのにも関わらず、あっという間にまんまと騙されてしまったという声が多かったです。

或るエジプト十字架の謎

表題作。クイーンの国名シリーズ「エジプト十字架の秘密」のオマージュ。

ウェスト・ヴァージニアで、T字型のエジプト十字架を模して道標に磔にされた、奇怪な首なし死体が発見された。全て “T”に関わる連続殺人。真相はどこに隠されているのか。

本書では案内板に磔にされた首のない死体が登場。

原作と同様に頭部を切断され、T字型で磔にされた死体となっているため、クイーンのシリーズを読んでいるとより楽しめるのかなと感じます。

柄刀 一『或るエジプト十字架の謎』の口コミ【読者の感想】

 

読者A

かなり難解な作品でしたが、一度読み始めると止まらなくなります。
シンプルであり完璧なトリックには、思わず鳥肌が立ってしまいました。
ところどころに色気のあるシーンがあり、そこがオアシス的に感じました。
謎が更に新たな謎を呼び、ラストまで目が離せません。

 

ミステリーの名作といっても過言ではないエラリー・クイーンの一連の作品のオマージュとなっていて、
各話にそれぞれ技巧の限りを尽くした殺人トリックが登場して飽きさせず、
やはりミステリーの醍醐味は「トリック」に尽きると思わせてくれる。

読者B

 

読者C

ホワイダニット(なぜそうなったのか?)が非常に練られている。
全短編とも高品質だと思います。クイーン作品のネタバレをしていないところも良いです。
しかし、タイトルに登場するアイテムがしっかりと活かされていました!

過去作も読みたくなるしクイーンも読みたくなるミステリの架け橋!

今までの南美希風シリーズを知っているともっと楽しめた気もしますし、クイーンの作品を知っていればもっとにやにや出来た気もする本作品。

いろいろな作品を架け橋のようにつなげ、興味を持たせてくれる不思議な短編集でした。

口コミを書いて下さったどの方も「ホワイダニットが優れている」とのことでしたが、実際私も同じ意見です。

ストンと原因と結果が落ちてくる、すっきりする短編集になっています。

シンプルなのに騙される、シンプルだからこそ謎解きも鮮やかにキマる、という印象がとても強かったです。

多少中だるみしかける部分もありますが、独立した短編小説ですので深く考えずに次に進んでいくとさらりと読み切れる作品となっています。

総ページ数も295ページと少な目ですから、少しまとまった時間があれば読み切れるので、休みの日にサクサクとすっきりしたいミステリー好きにはおすすめします!

是非クイーンが好きな人もそうでない人もぜひ一度読んでみて下さい!

エラリー・クイーン『国名シリーズ』の読む順番とおすすめについて

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