有栖川有栖さんの「学生アリスシリーズ」第2弾、『孤島パズル』です。
シリーズ2作目であるとともに、有栖川有栖さんのデビュー第2作でもある今作。
第1弾の『月光ゲーム』の次にすぐ読み、私が「このシリーズは絶対に読み続けよう」と確信した作品でもあります。
今作だけでも独立しているので楽しめることには楽しめますが、やはり第1弾『月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)』から続けて読むことを強くオススメさせていただきます(*´ω`)ノ
有栖川有栖『孤島パズル』
さて、シリーズ第2弾となる今作では、推理小説研究会のメンバーにある人物が加わることになります。
僕の名は有栖川有栖。ここ英都大学法学部二回生で国籍は日本、性別は男である。ーー僕を見下ろしている赤毛のセミロングの彼女の名が有馬真里亜、同じく英都大学法学部二回生で国籍は日本、性別はもちろん女性である。
P.9より引用
それが有馬真里亜(ありままりあ)です。
男だらけのむさ苦しいサークルにようやく訪れた春。よかったですね。
で、夏休み。マリアの招待で、南の島にある伯父の別荘に一週間のバカンスに行くことになった江神部長とアリス。
しかもただのバカンスではありません。「宝探し」付きなのです。
マリアの祖父が島のどこかに宝石(5億円相当)を隠したものの、突然の脳梗塞で亡くなってしまい場所はわからずじまい。残ったのは遺言状と宝の地図。
今回はそれを探しに行こう!ってわけです。ミステリ好きならワクワクするのも当然ですね。
そしてここで宝の重要な鍵を握るのが、島のあちこちにある「モアイ像」。
「全部で二十五体立ってます。イースター島のモアイはほとんどのものが島の内側を向いているそうですけど、ここの木のモアイはてんでんバラバラの方向を向いています。このあたりに秘密を解く鍵があるんじゃないかとも思うんですけどねぇ。」
P.14より引用
バラバラの方向を向くモアイ像。うーん意味ありげですねえ。
しかもマリアの従兄(いとこ)がこの宝探しに挑戦して、かなりいい線までいったところで急に溺れて死んじゃったんですって。水泳が得意なはずだったのに。
超怪しいですね……。
嵐の中、第一の殺人が起きる。

さて、そんなこんなで南の島にやってきたアリスたち。
1日目は楽しく過ごしたものの、2日目の夜、台風が到来。そこで、悲劇が起きてしまいます。
なんと二人もの人間がライフルで撃たれ殺されたのです。密室状態の部屋で、しかも死体が重なり合っていて……。
と、いうのが今回のあらすじです。
この「死体が重なり合っている」というのがまたややこしくなって面白いんですよね。ま、何が面白いかはお楽しみに( *´艸)
さらにさらに、無線機が壊されて島の外との連絡が取れなくなります。宝探し、嵐の孤島、密室殺人。何という楽しいクローズドサークルでしょうか!
もちろん殺人はこれだけでは終わりません。さらに惨劇は続き、膨大な謎がアリスたちに襲いかかります。
和人は右手を僕たちに向かってグッと突き出した。その手に何か紐のようなものが一束握られている。
「コードが引きちぎられている。機械本体も無茶苦茶に壊されてるんだ。」
悲鳴に近い叫びがいくつも上がった。
P.131より引用
どんでん返しなんて必要ないほど面白い

ミステリー小説の中でも「どんでん返し」が好きな方は多いですよね。私もどんでん返しは大好きです。
しかしあえて言いますと、この『孤島パズル』では超ど派手なトリックや大どんでん返しなどはありません。どちらかといえば地味な方かもしれません。
けれど残念がらないでください。
終盤、ありとあらゆる数の謎を一つ一つ丁寧に、論理的に解決していく美しさ。バラバラに散らばったピースが一つ一つカチッとはまっていくあの感じ。まさに、パズルのよう。
派手なトリックや大どんでん返しに頼らずにして、確実に面白いのです。
一度読めば「面白い本格推理小説とはこういう作品の事をいうのか」というのがわかっていただけるはずです。ド派手などんでん返し中毒に陥っている方にこそ、読んでみていただきたい作品です。
読者への挑戦もあるよ!

シリーズ第1弾の『月光ゲーム』に続き、今作でも「読者への挑戦」が挿入されています。
作者は、江神二郎が読者と同じ条件の下にたった今犯人を知ったことをお知らせするとともに、読者に挑戦する。あなたは犯人の名を直感ではなく、推理によって特定することができるはずだ、と。謎のすべてに答えを見出すことはできずとも、犯人は判る。
P.339より引用
正直に言いましょう。
わかりません。
なんとなく「あの人っぽいな」ではダメなのです。推理によって特定しなければならないのです。無理です。
でも江神部長は当然のように解決していきます。先ほども言いましたが、犯人を特定していく過程がとても論理的で鮮やかです。ぜひ目にしてください。
さらに『孤島パズル (創元推理文庫)』では、有栖川有栖さんのあとがき、そして光原百合さんの解説ならぬ「江神さんへのファンレター」がとても面白いです。これも忘れずにぜひ読んでください。
というわけで、今回は有栖川有栖さんの「学生アリスシリーズ」第2弾、『孤島パズル』をご紹介させていただきました。
次回は「学生アリスシリーズ」の中で最高傑作とも呼ばれる第3弾『双頭の悪魔 (創元推理文庫)』をご紹介させていただきます。
文庫にして700ページ近い大作ですが、第1弾、第2弾、と続けて読んだならば必然的に手が伸びてしまうことでしょう。
それでは、今回はここまで。最後までありがとうございました(* >ω<)
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➡︎学生アリス第3弾『双頭の悪魔』は、やはりシリーズ最高傑作と呼ばれるにふさわしい。
➡︎【有栖川有栖】学生アリスシリーズの順番やあらすじ【江神二郎】
前回はありがとうございます!孤島パズルはいいですよね〜。次々と論理的に謎を解く解決編は超カッコいい。江神さんの謎解きの途中の言葉が胸にしみるというか、ジーンとくるんです。江神さんなりの優しさですよね。
いえいえー!こちらこそ共感してくださって大変嬉しかったです!
本当に『孤島パズル』は良いですよね。推理の後味が半端ないですもん。。。名作すぎますよね。。
個人的にはシリーズ中のベスト!
なんて論理が美しいんだと惚れ抜きました。
直感的で良いのならいくつかの要素から犯人は解ったのですが、あの論理展開には唖然。
また、江神による自分の推理が間違っている事を望みながらの解明編は色気抜群です。
この作品を読んで、好きな名探偵第一位は江神二郎に決まりました。
パズルも良い出来だったし、アリスとマリアの夜のボートは噴き出す程甘いし(超褒め言葉)、読後しっとり重たくも良い余韻を残すし、全頁面白かったです。
ベストですか!私も『双頭の悪魔』か『孤島パズル』で悩みます・・・ムムム。
『孤島パズル』の論理の美しさは異常ですよね。そうそう、「そこまでやるか!」ってくらいの論理展開。感動モノです。
そう!それ!笑「自分の推理が間違っている事を望みながらの解明編」!たまらんです(ノ∀`)
あーそうだーアリスマリアのボートのシーンも好きでしたー。。書き忘れましたああ。。
論理の美しさが際立ってる作品でした!どの描写にもほんとに無駄がなくて、読んでて思わず感動してしまいました。もちろん犯人は分かりませんでしたが…(苦笑)間違っていてほしいと思いながら推理していくシーン、すごく好きです。ラストも切なくて。
火村シリーズばかり読んでいましたが、江神シリーズもいいですね。この作品を読んで江神さんの人柄に惹かれました。
次は双頭の悪魔を読んでみます!
さくらっころん!ほんっとすごい論理ですよね。もはや芸術と言っていいほどに美しいです。私も感動してしまいましたもん。
ですよねー!この推理シーンはとても記憶に残ります。私もこの作品で江神シリーズの大ファンになりました。こんなの読まされてしまってはねえ。。
ぜひ『双頭の悪魔』を!!これも本当に素晴らしい作品です!(*´ω`)