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辻村深月『青空と逃げる』-一本の電話に平穏な日常を奪われた、母と息子の再生の物語。

正直まだ『かがみの孤城』の余韻に浸っていたんですが、早くも辻村深月さんの新刊が発売となりました。

2015年5月から2016年5月にかけて、読売新聞に掲載されていた小説の単行本化。

読まないという選択肢はありません。

家族の、母と子の物語です。

表紙とタイトルをみた時点で「ああ、絶対いい物語だな」と察しましたが案の定でした。

声を大きくして言いたい。

 

 

やっぱり辻村作品は良い!!!

 

辻村深月『青空と逃げる』

 

本条早苗(ほんじょうさなえ)はかつて劇団に所属しており、そこで現在の夫となる拳(けん)と出会う。

そして二人の間に生まれたのが、息子の力(ちから)だ。

3人は平穏に暮らしていたが、深夜にかかってきた一本の電話が本条家を狂わせることになる。

 

夫の拳が交通事故にあったのだ。

しかも事故当時、拳は遥山真輝(はるやままさき)という人気女優が運転する車に乗っており、そのことから不倫報道が流れてしまう。

さらに追い討ちをかけるように、その事故で顔に傷を負ってしまった真輝はショックで自殺してしまった。

 

そんな大変なことがあり、そのまま拳は早苗の前に姿を表すことなく失踪してしまう。

 

そして現在。

拳を探している相手事務所の連中に、早苗は追われていた。

力と一緒に、逃げていた。

四万十にやってきた。

 

四万十は平和だった、はずだった。

 

悲しくも、すぐに平穏は崩れ去ってしまう。

母と子は、それでも成長していく

父親を探す連中に追われる「母・早苗」と「息子・力」の視点が交互に入れ替わり物語は綴られています。

視点が入れ替わることによって、お互いの気持ちが読者だけにわかるようになっており、親子のすれ違いや行動の変化が胸に響きます。

 

母と子の長い旅。逃走の旅。

その中で、母は親として、子は大人に向かって成長していく。

辻村さんは、そんな親子の心情を描くのが本当にお上手だ。

辻村さん自身が子を持つ母親だから、というのもあるけれど、ここまでリアルに、心が軋むような痛みを表現できるのが辻村さんの凄さでしょう。

序盤ですっかり心を奪われてしまった私は、「お父さんどこにいるんだ!」と気になってページをめくる手が止まらず。

しかし、途中で力のクローゼットからアレが出てきたときには本気でゾクっとしました。

「え!!そういう展開!?」と一人でパニックお祭り騒ぎ。

 

しかも終盤にはあの人が登場してーー……おおっと!これは言ってはダメだネタバレだ。

ただ一つだけ言わせてください。

辻村さんの作品は、中途半端に読むのではなく、絶対全部読んだほうがいい。

今作のようなことがしょっちゅうあるから、涙の数が違ってくる。

世界は優しくて、繋がっていて。

なんていうかなあ。

辻村さんの描く物語っていうのは、どうしてこんなに優しい人ばかり登場するのでしょう。

世界は優しさに満ちていて、この世には善人しか存在していないんじゃないかと思わせてくれる。

そんな世界に私は住みたい。

 

今作で私が一番強く学んだのは、

「困った人がいたら手を差し伸べる。自分が困ったら勇気を出して人に助けてもらう」

です。

つまり「助けてもらう勇気」です。

助けをお願いするということは、その人を信頼しなくてはならなくて、でもそれが不安で、一人で頑張ろうと抱え込んでしまうのが一番よくないんだ。

簡単なようで、難しいんですよねえ。

さっきもチラッと述べたけど、辻村作品っていうのは作品同士に繋がりがあったりすることが多くて、読むたびに「世界は繋がっているんだなあ」と実感させてくれるから大好き。

だからもし、自分が誰かを助けることができたら、その助けられた人がまた誰かをか助けてあげて、その繰り返しで優しい世界になっていくんだよきっと。

ABOUT ME
anpo39
年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)
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POSTED COMMENT

  1. hitomi より:

    やっと買いました!
    今から読む!
    読んだらまた来る!!

  2. hitomi より:

    読み終わったから来ました❗
    うん、やっぱり辻村さんはいい!
    助けてもらう勇気って、言葉が今回はグッときましたね。
    あと、一期一会の大切さ。
    四万十も、家島も、別府も、仙台も。
    人間ってもっと温かいって気づきました。
    出会いって大事にしたいよね。

    ただ、去年の、かがみの孤城がインパクトが強すぎて、、(笑)

    • anpo39 より:

      やっぱり辻村さんですよね!
      ほんとに今作に登場する人々がいい人たちばかりで、世界は優しさみ満ちているなあとしみじみしました。
      一期一会ですね。一つ一つの出会いを大切にしていきたいです。

      そうなんですよねー!かがみの孤城が強すぎる!笑

  3. ひつじ より:

    辻村深月さん!読むのが楽しみすぎて、まだ感想に目を通せてません 笑
    今日やっと買えたので、明日からは読書漬けです(*^▽^*)

    • anpo39 より:

      おー!買われたのですね!
      ぜひぜひ読書漬けになりましょう(´∀`*)

      • ひつじ より:

        しばらく忙しくて、先日やっと読み終わりました!
        今作もやっぱり泣けましたね 笑
        助けてもらう勇気。僕も大切にしたいです

        あとやっぱり、今作もよかったけど、かがみの弧状と比べたら確かに… 笑

        • anpo39 より:

          助けてもらう勇気って、なかなか難しいけど、大切ですよね。
          これもいい作品でした。

          でもかがみの孤城が強すぎる……!笑

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