ぜひクリスマスに読んで欲しい作品があります。
それが『X’mas Stories(クリスマスストーリーズ)』です。
豪華作家さん6人によるアンソロジー作品で、どれも「クリスマス」をテーマとした物語になっています。
はじめに言っておきましょう。
良い。
実に良い。
良い物語しかない。
こんなに素晴らしい作品をクリスマスに読まなくていつ読むのか?という話です。
『X’mas Stories: 一年でいちばん奇跡が起きる日』
この作品に収められているのは
朝井リョウ さんの『逆算』
あさのあつこ さんの『きみに伝えたくて』
伊坂幸太郎 さんの『一人では無理がある』
恩田陸 さんの『柊と太陽』
白河三兎 さんの『子の心、サンタ知らず』
三浦しをん さんの『荒野の果てに』
の6編。
なんという素晴らしい作家さんたちでしょうか!もう面白いのは確定したようなものです。
今回はその中で4つのお話を少しご紹介させていただきましょう。
1.朝井リョウ『逆算』
なんでも「逆算」することがクセの女性・松本有季を中心とした物語。
彼女の誕生日は十一月四日。この事が彼女が逆算するきっかけとなり、悩みでもあった。
私にはこの誕生日が何を意味するのかわかりませんでしたが、読んでみてなるほど、と。
そして何よりオチが好き。ニヤリとさせられてしまうキレがいい。
ちなみに、この物語は朝井リョウさんの『何様』に収録されていたものです。
私の誕生日は、十一月四日だ。二十六年前の十一月四日に、私は生まれたのだ。
ーーなあ、知ってた? お前の誕生日逆算すると、
『X’mas Stories』収録「逆算」P.30より引用
3.伊坂幸太郎『一人では無理がある』
まず設定が面白い。
この物語では、サンタクロースが組織として成り立っている世界を描いているのです。言うなれば「サンタ会社」ですね。
で、その会社の人たちが子供達にプレゼントを配っていくのですが・・・という物語。
設定も面白ければ物語も面白い。実に伊坂さんらしい「おお!そう繋がるのか!」と言わせてくれる展開が楽しめます。
ちなみにこの物語は伊坂さんの『ジャイロスコープ (新潮文庫)』という短編集に収録されていたもの。
サンタクロースなる人物は存在しない。が、仕組みは存在する。
『X’mas Stories』収録「一人では無理がある」 P.131より引用
5.白河三兎『子の心、サンタ知らず』
この物語が予想以上に良かった。心の温まり具合が半端じゃない。
リサイクルショップを経営するシングルマザーの伊代子とその息子・匡(たすく)、その店でアルバイトをする27歳浪人中の太志。そんな3人を中心とした物語です。
この伊代子の息子・匡がなかなかの「クソガキ」で、10歳に満たない子供とは思えない言葉遣いと態度をとる。なんなんだこの子供は、と圧倒される。
しかし、
この子が最高にいい。
なんという良い物語でしょうか。もう私の心は寒くない(ノω`*)
匡には度々『十歳にもならない子供がどこでそんな言葉を覚えてくるんだ?』と驚かされる。口から先に生まれてきたように舌がよく回る上に小賢しい。近所や学校で大人を言い負かしてばかりいる。
『X’mas Stories』収録「子の心、サンタ知らず」 P.188より引用
6.三浦しをん『荒野の果てに』
江戸時代から現代にタイムスリップしてしまった卯之助と弥五郎を中心とした物語。
突然の時代の変化に戸惑う二人が面白い、っていうだけの物語ではないんですよね。面白い、というより「とても良い物語」。
二人がタイムスリップしたのが丁度クリスマスの時期っていうのが、この物語のポイント。だからこそのストーリーが楽しめるんです。
読後感も格別で。私も祈ってしまいました。二人のことを。
「ここはどこだ……?」
卯之助と弥五郎は知る由もなかったが、地下鉄千代田線明治神宮前駅のホームだ。
二人は江戸時代からタイムスリップしてしまったのだった。『X’mas Stories』収録「荒野の果てに」P.248
ぜひ、クリスマスの夜に。
冗談抜きでこのアンソロジーは他のどの日でもなく、ぜひクリスマスにぜひ読んでいただきたいです。
いまからでも遅くはありません。
いますぐ本屋さんに駆け込み、「新潮文庫の『クリスマスストーリーズ』っていう本どこに置いてありますか」と店員さんに聞くのです。よろしいですか?
そして出来ればイブの夜に読みましょう。
え?大切な人との予定があるって?
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予定はキャンセルしましょう。
読むのが最優先です。
、、、と、冗談はさておき、今作はクリスマスに読むにピッタリな本当に「良い」と思える物語ばかりが詰まっています。
きっと「読んでよかった」と思っていただける事でしょう。
ぜひ、今年のクリスマスを特別な日に。
さて、私は今年のクリスマスも読書三昧といきますか……\(^o^)
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