綾辻行人『Another 2001』-ホラー&ミステリの決定版!〈夜見山現象〉史上最凶の〈災厄〉に、想と鳴はどう立ち向かうのか

夜見山北中学校三年三組を襲う「災厄」について描写した第一作目「Another」、第二作目「Another エピソードS」に続く、待望の第三作目です。

過去のとある事件が原因で、二年に一度もしくはそれ以上の頻度で不気味な<現象>に見舞われている夜見山北中学校三年三組。

その<現象>がある年には、毎月最低一人、クラスの関係者が病気や事故などで命を落としてしまうのです。

<現象>を防ぐにはとある対策をしなければなりません。

何度目かの<現象>を経て、今作の生徒たちは今までの対策にさらに輪をかけて対策を施し効果が表れたかに思えたものの、何故か<現象>は起こり続けて……。

前二作を超える壮絶な殺戮シーン、読者の恐怖を最大限にあおるホラー演出と、期待を裏切らない綾辻ワールドが繰り広げられます。

約800ページのボリュームではあるものの、簡潔明瞭な展開と絶妙なタイミングで発生する「災厄」のおかげで読み手を決して飽きさせません。

目次

綾辻行人『Another 2001』

三年三組の中に「死者」が紛れ込むというのが「Another」シリーズ共通の設定であり、前作「Another エピソードS」まではその「死者」が誰なのか、なぜ死んだのかという種明かしが最大の見どころでした。

しかし本作「Another 2001」では、「死者」の正体や死の原因はひとまず序盤のうちにあっさりと解明されてしまいます。

生徒たちの考えた<現象>への対策は例年よりも厳重で、<現象>は起こらないのではと思われました。

しかしそれでは終わらないのがAnotherシリーズです。

回避できたと思われた<現象>が再発し、さらに前作や前々作を超える凄まじい死が生徒を襲います。

前作以上に今作でも犠牲者の数がハンパないです!

特に後半加速度的に死者が増えていくのはまるでパニック小説のよう。『現象』に関する災厄と対策のルールを上手く利用した、ホラーとミステリの融合も素晴らしいです。

読者にとってはこの殺戮シーンの残酷さもある種の楽しみとなっているのではないでしょうか。

もはや通常の病気や事故ではない、目を背けたくなるような惨状が読者を襲います。

また、二人目の「死者」の存在が判明してからは、その正体や死因の特定という新たなミステリー要素が登場。

一人目の「死者」の正体を見破れたとしても、この二人目の「死者」の正体はなかなか解き明かせないはず。

「対策」の効果や一人目の死者の正体など、最初はある程度推理しながら読み進められた読者も、後半の怒涛の展開には驚かされること請け合いです。

じわじわと読み手の恐怖をあおるホラー描写、これでもかと満載された残酷な殺戮シーン、「死者」や被害者の最期の瞬間の悲しさなどのバランスがよく、分厚い書籍ながら引き込まれて一気に読み切ることができるはずです。

全体的に漂う緊張感と不安感。死者を死に還し、一件落着かと思えば、そこから始まる怒濤の展開に目が離せなります。

シリーズに共通する設定と作品固有のギミックの組み合わせは面白く、さすが綾辻さんと言ったところ。

相も変わらず残酷な死に方がホラー風味を漂わせますが、しっかりとミステリも忘れていない。

何よりも解決したかに見えた災厄が再び起きるという2段構え。

そしてなぜ災厄は止まらないのか、にしっかりと答えを出す伏線。初めの方からしっかりと種明かしはされており、納得する結末が用意されているのが素晴らしいです。

シリーズの続きものである「Another 2001」。

この巻のみでも読むことは出来るものの、やはり前作・前々作を読んでいると話の理解のしやすさが断然変わってきます。

第一作・第二作・第三作と順々に内容もパワーアップしているので、このシリーズを読んだことが無いという方は出来れば第一作目から読むのがオススメです。

内容としては、「死者」の正体やなぜ<現象>を防げなかったのかというミステリー要素はもちろん、極限状態における生徒間の疑心暗鬼、誰がどんな死に方をしてしまうのかという恐怖、記憶が捏造されても気づかないという薄ら寒さといったホラー要素を楽しむことができる小説となっており、ホラー展開が好きという方には特にオススメと言えます。

今までシリーズを読んできたファンにとってはこれまでの衝撃を超えられるのかという不安もあるかもしれませんが、それは全くの杞憂!

綾辻ワールドが好きであれば好きであるほど、驚かされそして納得させられるでしょう。

このシリーズはすでに次の巻を構想中という作者自身の発言もありますので、ぜひこの機会に「Another」シリーズそして「Another 2001」に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 待ってました、待ってましたよAnotherを!

    今回は結末をどうするだろう…と、読む前からその事だけが気になってたんですが、まさかね… そうきたか と毎度毎度綾辻本というのは予想通り行くことがないですねw

    今回のハードカバーはそのめちゃ綺麗な装丁も見どころの1つだと思いました 表紙とかって凄く大事だと思います(▰╹◡╹▰)

    あと1回続編あるということですし、また首を長くして待つ日が来そうです

    • Anothermとうとうきましたね!!私も待ってました!
      本当良い意味で予想通りに行かないですよね(*’▽’*)

      わかります、この表紙めっちゃ好きです。飾っておきたいくらいです。

      続編楽しみですねー、今からもうワクワクです!

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