原作をオマージュしてさらにおいしく調理してしまう法月先生マジックにはいつも脱帽してしまうのですが、今回ご紹介する『赤い部屋異聞』もとにかく面白いと話題です。
1つの本の中に9作品も入っているのでひとつひとつの話は短くなっているはずなのに、その限られたページ数の中の起承転結のすばらしさと、恐怖を感じさせる手腕はさすがと言えるでしょう。
今作品は、電車での移動中や休みの日、テレワークの一息に読むにはちょうど良い長さの短編集ですので是非読んでみることをおすすめする作品です。
そこでこの記事ではどんな点でおすすめなのか、そして魅力的なのか、あらすじや口コミも含んだ解説でさらに深堀して語っていきたいと思います!
法月綸太郎『赤い部屋異聞』のあらすじ
赤い部屋異聞は、江戸川乱歩の作品「赤い部屋」など、過去のミステリ作品をオマージュした作品を9作含んだ短編集となっています。
9作品のタイトルはこちら。
1.赤い部屋異聞
2.砂時計の伝言
3.続・夢判断
4.対位法
5.まよい猫
6.葬式がえり
7.最後の一撃
8.だまし舟
9.迷探偵誕生
それぞれ有名作品というよりは、知る人ぞ知る怪作品と呼ばれるものをオマージュしています。
この本では、オマージュ元の作品がわからなくても充分に楽しめる工夫がされているのですが、各短編の終わりに法月先生の「細断されたあとがき」というコーナーがあります。
そのあとがきの中でわかりやすく解説されています。
この法月先生の自作解説は、元ネタの紹介だけにとどまらず、制作過程での苦労した点や独特なエピソードまで掲載されていますので、法月先生の裏側を読んでいるようなドキドキ感もあります。
しかも、法月先生らしいどこか自虐的な文章で描かれているのが大変面白いのです。
正直このあとがきが楽しみで短編を読んでいる人もおり、これを読むだけでも面白くてお腹いっぱいになるくらいです。
このあとがきを読んだら、原作も読んでみたくなると思います。その楽しみは奪わないようにここでは原作のネタバレは伏せておきます。
では、ここでは9作品のうち、表題作の『赤い部屋異聞』のあらすじをご紹介いたします。
赤い部屋異聞
表題作であり、江戸川乱歩の作品のオマージュ。
日常に退屈した人々が集まり、世の中に隠されている猟奇譚や珍妙不可思議な話をするための場所、それが「赤い部屋」。
この部屋の新会員であるT氏が語ったのは『殺人遊戯』。全く法に触れずに安全に人を殺すという不思議な殺人方法とは?これまで奪った99人の命はどのようにして奪われたのか?
そしてT氏に待ち受ける仰天の結末を見逃すな!
忍び寄ってくるゾクゾクする恐怖感、背筋をなぞっていくような、次のページを見たくなるような見たくないような・・・夜中に読むのは少し注意したくなるような作品です。
短編なのに見事にお腹がいっぱいになれるオマージュ作品です。
原作をしっかりと読み込み、文章力と作風に定評のある法月先生ならではの『赤い部屋』を楽しめる作品となっているでしょう。
法月綸太郎『赤い部屋異聞』口コミ【読者の感想】
それでは実際にこの本を読んだ読者の方の感想や口コミをご紹介いたします。
『数々の人気作家に対するオマージュ的な作品で、様々な楽しみかたができます。
なかでも、「赤い部屋異聞」は、江戸川乱歩の作品である「赤い部屋」を作者ならではの解釈で描かれていて、1つの作品なのに2つの作品を読んでいるかのような面白さを感じることができます。
ヒタヒタと恐怖が近づいてくる感じがしてかなり面白かったです』
『あらゆるミステリーのオマージュ作品なのですが、元作品がわからなくても楽しめました。
特に「最後の一撃」が印象的で、背筋がゾクッとして、いつまでもその余韻が残っているような感じでした。
ミステリーとホラーを両方楽しめました』
『あとがきがとにかく面白い!
本編を読んだ後のあとがきを含めて作品だと言えると思います。
この本を読んだ後、原作を読みたくてすべて手に入れてしまいました。そして、原作を読んでからもう一度読むと、さらに違った味わいで深みを感じます!
どれか気に入った作品ひとつでもいいので、原作も読んでみることをお勧めします』
やはりゾクゾクとした、恐怖を感じたという声が多く集まりました。
原作を読まなくても皆楽しめているようですが、原作を知ると二度おいしいと話題です。
最近ではkindleなどでも原作を手軽に購入できますから、これを機に手を出してみるのもいいかもしれませんね。
味付けのマジシャンと名付けたくなる素晴らしい作者
私の勝手な解釈なのですが、法月先生は素材の味をしっかりと活かしたとにかく腕の良い料理人のような作者だと思います。
原作という材料をどのように調理したらよりおいしくなるのか、材料そのものの味をしっていても法月先生の腕にかかるとそれが何倍にもおいしさとして舌を襲ってくる、そのような感覚にとらわれるのです。
普通であればオマージュというのは、「パクリ」と一蹴されてしまう危険性もはらんでいるのですが、確かに参考にしているのはわかるのですが、全く違うテイストに変わっていたり、原作を知っているからこそより深いところまで物語を理解できるようになっているので、逆に面白さをアップさせているのが特長だと感じられます。
今作もミステリファンもホラーファンも、そして法月先生ファンもすべてを唸らせるような珠玉の短編が怒涛のように襲ってきますので、是非その波にのまれてみてください!