さて、『マツリカ・マトリョシカ』で見事な密室推理劇を見せてくれた、相沢沙呼さんのおすすめ小説をご紹介です。
相沢沙呼さんの描く作品は、青春の苦味、それも女性をメインとしたものが多く、その描きかたがお上手。
すでに青春小説として面白いのに、質の高いミステリまで加わっているんだから、青春ミステリ好きとしては黙っていられません。
読みましょう、まずはマツリカシリーズから。
参考にしていただければ幸いです。
1.『マツリカ・マジョルカ』
相沢沙呼さんを代表する《マツリカシリーズ》の一作目です。
ひとりぼっちの冴えない高校生・柴山祐希が、廃墟に住む謎の少女マツリカと出会い、身近で起きた謎を解決していく連作短編集。
現場を見ず、事件の話を聞いただけで解決してしまう「安楽椅子探偵」ものです。
マツリカさんがなんともミステリアスで魅力的。そしてドS。
事件の内容も世界観も、全体的に暗く苦味が残るタイプの青春ミステリーです。
苦味が残る青春ミステリといえば米澤穂信さんの『古典部シリーズ』などがありますが、それとはまた別の苦さでキツい。
柴山祐希、高校1年。クラスに居場所を見付けられず、冴えない学校生活を送っていた。そんな彼の毎日が、学校近くの廃墟に住む女子高生マツリカとの出会いで一変する。
2.『マツリカ・マハリタ』
《マツリカシリーズ》の二作目。一作目『マツリカ・マジョルカ』と同じ連作短編集。
ミステリ小説としてもキャラクター小説としても安定感が増してきており、最終話では思わずアッと声をあげてしまった。
だいたいシリーズものって二作目まで読むと、主要人物のこの先が気になってきてもう逃れられないですよね。
相変わらず、マツリカさんホント良いキャラしてるなあ。
柴山祐希、高校二年生。彼には、人に言えない秘密がある。実は、学校の近くにある廃墟ビルに住み、望遠鏡で学校を観察している美少女・マツリカさんに命じられて、学校の怪談を調べていた。
3.『マツリカ・マトリョシカ』
マツリカシリーズの最高傑作です。
ビックリしました。
一作目二作目と順番に読んできて、マツリカシリーズは私的に「キャラクター小説」寄りの作品だったんです。
そしたらなんですか、三作目にして超本格ミステリやっちゃってるじゃないですか。
中心となるのは、「密室で発見されたトルソーの謎」と「過去に起きた密室」の二つの事件。
いつもならマツリカさんに頼りっきりの柴山くんなんですが、今回は自分の力だけで解こうと奮闘する。
でも最後にマツリカさんが登場して、これぞ本格ミステリな論理的推理を披露してくれます。ニヤニヤが止まりませんでした。
あの推理シーンは本当に最高。目にしないと損するレベルです。

校内にある「開かずの扉」で事件が発生!現場は密室の上、過去にも似たような事件が起きていて…二つの謎を、マツリカさんはどう解く!?男子高校生・柴山と、廃墟に住む妖艶な美女が織り成す、青春学園ミステリ!!
4.『午前零時のサンドリヨン』
さて、マツリカシリーズと雰囲気が変わります。《酉乃初の事件簿シリーズ》の記念すべき一作目。
高校のクラスメイトであるマジシャンの酉乃初と、その彼女に一目惚れした須川くんが織りなす青春ミステリです。
マツリカシリーズとはタイプの異なる苦さがある、これぞボーイミーツガールな王道青春ミステリーですよ。
ミステリとしてもライトだし連作短編集なのでサクサクーっと、なんて油断してると後半から伏線回収の鮮やかさに驚く。
ポチこと須川くんが、高校入学後に一目惚れしたクラスメイトの女の子。他人を寄せ付けない雰囲気を纏っている酉乃初は、実は凄腕のマジシャンだった。
5.『ロートケプシェン、こっちにおいで』
《酉乃初の事件簿シリーズ》の第二弾、『午前零時のサンドリヨン』の続編となる作品です。
前作に比べて「青春小説感」が増している。苦い意味で。
イジメがテーマであり、色々考えさせられながらもイヤな気持ちにもなったけど、「この二人はこの先どうなるの?!」が気になってページを読む手が止まらない。
そして、あの真相。
いやいや、完全に油断してた。まんまとやられました。これだから相沢沙呼さんは面白い。
やっと酉乃の本心を受け止める事ができたと思ったクリスマスのあの日。勢いと雰囲気の力を借りて告白した僕は、なんと彼女の返事はおろか、連絡先さえ聞き忘れたまま冬休みに突入してしまった。
6.『ココロ・ファインダ』
写真部に属する4人の女子高生を中心とした連作短編集。
もうこれは、ミステリは一回忘れて青春小説として読みましょう。最高です。
高校生らしい葛藤や悩みと共に成長する彼女たちを鮮明に描きつつ、程よいミステリー要素が加わって相沢沙呼さんならではの面白い作品に。
ミステリー要素は薄いんですけど、このバランスが絶妙なんですよ。
表紙絵からすでに「いい作品感」が溢れ出てますけど本当にその通りいい作品なんです。
そもそも「写真部の女子高生4人の青春物語」って設定、いい話になるに決まっているじゃあないですか。
こんな写真部があったら見てみたい。
高校の写真部に在籍する四人の少女、ミラ、カオリ、秋穂、シズ。それぞれの目線=ファインダーで世界を覗く彼女たちには、心の奥に隠した悩みや葛藤があった。
7.『卯月の雪のレター・レター』
様々な境遇の女性たちを主人公とした短編集です。
ほかの相沢作品が好みであれば間違いないでしょう。
一応ミステリー要素はあるけれど、やはり青春小説として読むのがいい。相沢さんは女性を魅力的に描くのが本当にお上手だ。
なんでこんなに女性の心の中身を書けるんでしょう。
表題作『卯月の雪のレター・レター』と『チョコレートに、躍る指』がベスト。素晴らしい短編です。
小袖は読書が好きなおとなしい高校生。法事で祖父のもとを訪ねた際に、従妹から奇妙な質問をされる。「死んだ人から、手紙って来ると思う?」
ミステリではないけれど
ミステリー要素はないんですけど、他にもおすすめしたい作品があるんです。
一つ目が『雨の降る日は学校に行かない (集英社文庫)』。
中学生を主人公とした物語が収められた連作短編集です。
青春小説ですが爽やかさはなく、あの頃ならではの悩みや葛藤などの「生きにくさ」が描かれた物語です。
楽しいこともたくさんあったけど、そのぶん苦い思い出もあった。それも含めて青春なのだなと、改めて思い出させてくれる。
早朝の教室で毎日手帳に書いていた架空の遺書。その手帳を偶然にも人気者の同級生が拾ってしまう―(『死にたいノート』より)。揺れ動く6人の中学生の心を綴る6つのストーリー。
そしてもう一つが、『小説の神様 (講談社タイガ)』です。
学生で作家デビューしたものの、作品は売れず、無名作家のまま淡々と日々を過ごしている高校生・千谷 一也(ちたに いちや)。
そんな彼の前に、同時期にデビューした美少女売れっ子作家・小余綾詩凪(こゆるぎしいな)が転校生としてやってきた。
一也と詩凪はタッグを組み、二人で小説を書き始めるが……。
私は小説を書いたことがないですが、それでも「小説家としての苦悩」がヒリヒリと伝わってくる。
この作品を読む前と読んだあとでは、一つの「小説」に対する想いが大きく変わってきてしまうほどに。
ジャンル問わず「小説を読むことが好きな人」にはぜひ読んでいただきたい作品です。
おわりに
というわけで、相沢沙呼さんのおすすめ小説のご紹介でした。
ミステリー小説が好きな方はとりあえずマツリカシリーズ(特に『マツリカ・マトリョシカ』)と「酉乃初の事件簿シリーズ」を優先的に。
青春要素が強めが良いなら『ココロ・ファインダ (光文社文庫)』や『雨の降る日は学校に行かない (集英社文庫)』、『小説の神様 (講談社タイガ)』をどうぞ。
参考にしていただければ幸いです。
それでは、良い読書ライフを!
コメント
コメント一覧 (2件)
「超本格ミステリやっちゃってる」とか言われちゃったらもう・・・。
キャラメインのライトミステリだろうと侮っていたのに。
しかも大好きなロジック系統らしいですね。
有栖川氏や青崎氏と同じ流れの作品という事で良いんですね。
買っちゃって良いんですね。
追伸:
「オーパーツ」読みました。
謎が魅力的で、髑髏のやつ驚きました。
全体的に解決前にちょっとヒント与えてくれ過ぎかなとも思いましたが。
次作以降が楽しみですね。
ふっふっふ。ちぃさん、買っちゃって良いんです。
その流れなんです。
私もライトミステリだろうと侮っていましたから、そのぶんテンション上がりました。我々の大好物のやつです。
確かに序盤はキャラ小説感がすごいありますが、最後の推理は本当に良いです。
お、早速オーパーツを。あの髑髏はメフィスト感あって良いですよね。
確かに、私もそう思いました。読者に優しいというか、丁寧というか。
個性の強い探偵なので、パワーアップした次作を期待しちゃいますなあ(´∀`*)