『アイネクライネナハトムジーク』は伊坂さん好きなら絶対読むべき連作短編集でした

好きな作家さんなのになぜか読んでいない作品があった、っていう時ありません?

全部読んでいたと思っていたのに不思議と抜けていた、みたいな作品。

それが今回あったんですよ。

伊坂さんの作品はどれも好きで、新刊が発売されたらすぐに読んでいたつもりだったのだけど、なぜか『アイネクライネナハトムジーク』だけ読んでいなかったんですね。

それが最近文庫化したようで、本屋さんをプラプラしてたらズラーッと並んでいるのが目に入って。

しばらく考え込みましたよ。

「ん?タイトル見たことあるのに内容が思い出せないぞ」って。

そりゃそうですよ。読んでいないんですから。

 

焦ったー( ´∀`)

 

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『アイネクライネナハトムジーク』

6編の短編が収録されており、それぞれの話が少しづつ繋がっている連作短編集となっております。伊坂さん得意のやつです。

1.「アイネクライネ」

職場で起きた大きなミスに巻き込まれ、責任として街中でアンケートを取る羽目になった佐藤。

そこでアンケートを受けてくれた、一人の女の子。

バインダーを持った彼女の手には「シャンプー」の文字。携帯電話には、宇宙飛行士の出来損ないのようなキャタクターのストラップがついていた。

そのころ街ではボクシングの試合中継が流れており、その後もアンケート続ける佐藤は人ごみの中、ボクシングを観戦しながら体を揺らす彼女を見た。

 

その後、大学時代の友人・織田一真の家に遊びに行った佐藤は、あの女性のストラップについていたキャラクターが『トイストーリー』の「バズライトイヤー」だと知る。

絶対見たほうがいい、と、織田夫妻から『トイストーリー』のDVDを借りる佐藤……。


互いにファンであるミュージシャンの斉藤和義さんから「出会い」をテーマに作詞を頼まれ、「作詞はできないけど小説なら」と書いたという短編。

完璧なまでにストレートな出会いの物語であり、作中でも「出会い」に対するいろんな言葉が飛び交います。

特に、「なかなか出会いがない」という佐藤に対しての織田一真の言葉は良いですね。

「俺、出会いがないって理由が一番嫌いなんだよ。何だよ、出会いって。知らねーよ、そんなの」

P.26より

「ようするに、外見が良くて、性格もお前の好みで、年齢もそこそこ、しかもなぜか彼氏がいない女が、自分の目の前に現れてこねえかな、ってそういうことだろ?」

P.26より

「そんな都合のいいことなんて、あるわけねーんだよ。しかも、その女が、お前のことを気に入って、できれば、趣味も似ていればいいな、なんてな、ありえねえよ。どんな確率だよ。ドラえもんが僕の机から出てこないかな、ってのと一緒だろうが」

P.27より

 

グサーーー!!!( ゚∀゚)(何かが心臓に突き刺さる音)

 

伊坂さんってそんなストレートに恋愛論を述べる方でしたっけ?っていうくらい直球なセリフじゃあないですか。

 

「いいか、後になって、『あの時、あそこにいたのが彼女で本当に良かった』って幸運に感謝できるようなのが、一番幸せなんだよ」

P.28より

ここら辺のくだりが実に深くて、面白いですね。

このあと、

2.『ライトヘビー』
3.『ドクメンタ』
4.『ルックスライク』
5.『メイクアップ』
6.『ナハトムジーク』

と短編が続くわけですが、これはあらすじを知らずに読んでいただきたいです。

読んで初めて作品同士の「繋がり」を知った方がより楽しめると思いますので。

 

ちなみに私は2.『ライトヘビー』が特に好きです。完全にノックアウトでした。

 

世界は繋がっている。

テーマは「出会い」と「繋がり」ですかね。

優しい。とにかく優しい作品でした。

伊坂さんの作品って何気に人が死んだり殺されたり(それでも気軽に読めるけど)するものが多いけれど、今作では全く人は死なず。

しかも死神や強盗団、殺し屋、未来が見えるカカシ、なんていう特殊な人物も出てこない。

登場人物はみんな普通の人。

そんな普通の人たちの、普通の日常の中に起こる小さな奇跡を描いてる。

なんでこんないい物語になっちゃうの!!!

数ある伊坂作品の中でも読後の「ほっこり感」が高めで、そういう意味ではいつもの伊坂さんらしくないのかも。本当に暖かい気持ちになれる。

だからと言ってストーリー展開の巧さはいつも通りで、衝撃的展開っていうものはないけれど「はい出ましたー!!」って感じの伊坂感は満載です。

 

じゃあどんな人に読んで欲しいかって、男女関係なく、人を好きになったことがある全ての人ですよ。

なんかね、大切なものをいろいろ思い出します。ああ、そういう気持ちって大切だなあ、って思わされます。

いや、まだ人を好きになったことがないという人にも読んでほしいですね。こういうのを読むと、きっと恋愛をしたくなっちゃうんではないでしょうか。

恋愛小説ってあまり読まないもので、久しぶりにこういうの読んでハッとしましたよ(ノω`*)

私このままなんの出会いもなく死んでいっていいのか!笑(笑えない)とも思いました。

 

「出会い」とか「人との繋がり」を大切にしよう、と改めて感じさせてくれる作品です。

私のようについうっかり未読な方は、文庫化の機会にぜひ読んでみていただけたらと思います。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (4件)

  • 私も伊坂幸太郎の作品は全部読んだつもりだったんですけどアックスとそれはなかなか手に入らないです。早く読みたい。

    • いやあ、なんででしょうね。私も『アイネクライネナハトムジーク』だけなんか文庫化するまで読んでいなかったんですよ。
      結局、良いですよコレ。やっぱり伊坂作品だなあ、という感じです。

  • 伊坂さんのお話の優しさって、さりげなくていいですよね!(*^^*)
    胡散臭くないというか、いかにもな感じがないというか……
    『夫婦は外交と同じ』は笑ってしまったけど、納得!!

    • アッチョンブリケさんこんばんは!
      そうなんですよー、この絶妙な感じの優しさって良いですよね!
      ほんと、いい作品です(*´ω`)

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