麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』-笑いを超えて恐怖さえ感じさせるブラック麻耶ミステリー

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先日、麻耶雄嵩さんの『あぶない叔父さん』が文庫化しました。

一言でいうと、「麻耶さんらしさ溢れるブラックミステリ」です。

とにかく、面白い。ミステリとしてはもちろん、笑っちゃう方の意味でも。

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麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』

 

舞台となるのは、山に囲まれ一年中霧に覆われている霧ヶ町。

語り手は、この町に住む高校生・優斗(ゆうと)。

彼の家には離れがあり、そこに優斗の叔父さんが住んでいた。

35歳になっても独身でフラフラしており、町の人からの頼まれごとを受け持つ「なんでも屋」をやっている。

周りからの評判はあまり良くはないが、優しくて相談にも乗ってくれる叔父さんが優斗は大好きだった。

このコンビが中心となり、霧ヶ町で起き事件を解決していく……という王道のパターンです。

衝撃の1話目『失くした御守』

町で有名なお嬢様・恭子さんが駆け落ちした、という噂が流れてすぐのこと。

それは駆け落ちではなく心中事件だったと判明した。

さらに、心中事件ではなく殺人事件らしいことがわかった。

現場は雪の積もった公園。

恭子さんは短刀で胸を刺され、男のほうは後頭部を鈍器で殴られており、被害者が持っていたであろうカバンもなくなっていた。

 

しかもその日、恭子さんの部屋には見張りがついていて、部屋から出てきたことを誰にも目撃されていない。

恭子さんは見張りつきの部屋からどうやって抜け出したのか。

 

密室からの人間消失と、雪の足跡問題を絡めた短編です。

 

いたってシンプルな、むしろ贅沢すぎるくらいの本格もの。

しかし、叔父さんがこの事件について語り始めたとき、衝撃の事実に言葉を失うことになります。

抱腹絶倒、ツッコミ不在の恐ろしさ

初めて1話目を読んだとき、正直お腹を抱えて笑いました。

いやいやいやいや、なに言ってるの?!

と驚きながらも全力でツッコミを入れていました。

おそらくほとんどの人がそうなるでしょう。

 

だって〇〇が〇〇なんですよ?

ここは語り手の優斗がツッコミを入れなくちゃならないのに。天然なのかな?優斗もスルーしちゃうんです。

笑っちゃいますよ。

でもね。

初っ端の方はまさかの展開に笑っていたんですが、最終話まで読んでいるとだんだん怖くなってくるんですよ。

この状態を当たり前のように受け入れている叔父さんと主人公を。

そこらへんのホラー小説よりよっぽどこちらの方が怖いです。

 

じゃあトリックはどうなのよ?ってことですが、ミステリ面にしては結構本格っぽく仕上げているからにくいです。

ユーモアとのバランスが絶妙なんですよねえ。

青春ミステリの一面も

その他、『転校生と放火魔』『最後の海』『旧友』『あかずの扉』『藁をも掴む』の計6編が収録。

『転校生と放火魔』では小学校のころに付き合っていた元彼女が町に戻ってきて、現在の彼女と三角関係を築いたり、以降では友人・陽介と一緒に推理合戦をしたり、青春ミステリとしても楽しめるものとなっています。一応。

あくまで一応ですからね。青春ミステリを期待してはいけませんからね。

こんな方にオススメ

・普通のミステリに飽きちゃった

・一筋縄にはいかない変わったミステリが読みたい

・麻耶ミステリを味わいたい

という方には最高の一冊でしょう。

すでに麻耶ミステリが好きな人にも全力でオススメします。

 

にしても、麻耶さんはまともな探偵が書けないんですかね(賛美)。

これからどんな探偵が登場してくるのか、楽しみで仕方ありません。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (2件)

  • こんなえげつないミステリは麻耶さんにしか書けないでしょうねえ。予備知識なしではイカれてやがると思うでしょうが、作者を聞いたらきっと納得すると思います(笑) まあしかし、万人ウケする探偵ものなんて麻耶さん書かないだろうというか、書けないだろうとさえ思います。こういう、訳の分からん世界観でやばい物語を繰り広げてくれるのが、僕らの愛すべき麻耶さんだと思っています(僕もかなり重症)

    • ですよね笑
      麻耶さんだってわかっていたから多少は耐えれましたけど、知らないで読んだら吹っ飛びそうです。
      麻耶さんがまともな探偵書いてたら、それこそ恐怖ですよ。
      そう、このヤバさがあっての麻耶さんですからね。この道を突っ走って行っていただきたいですね。私はその後を全力で追っていき、受けとめていきます(私も重症)

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