『二壜の調味料』とは、ロード・ダンセイニの名作ミステリ短編。
そして、乱歩が絶賛した「奇妙な味」の代表的作品です。
「奇妙な味」の作品は数あれど、これほど強烈な余韻を残すものは滅多にないでしょう。
これは読まなきゃ損というもの。読まずして死ねるかい!ってレベルです。
なので簡単にご紹介させてください( ´∀`)
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『二壜の調味料』あらすじ
主な登場人物。
・「ナムヌモ」という調味料のセールスをしている青年・スメザーズ(ワトソン役・語り手)。
・頭脳明晰な探偵役リンリー。
スティーガーという男が、お金持ちの女性と同棲していました。
しかし、その女性は持っていた財産を全てスティーガーに奪われ、その後失踪してしまいます。
警察も捜査しましたが、女性の行方が全くわかりません。
どう考えても怪しいのはスティーガーですね。
警察が捜査してわかったのは、
①スティーガーが「ナムヌモ」という調味料を二壜購入していた。
②女性が失踪してから、スティーガーは庭より外に一歩も外に出ていない。
③女性が死亡したと思われる頃から、二週間にも渡って庭の木を一本ずつ切り倒し始めた(倒した後は、綺麗に積み上げて放置)。
④死体を火葬した形跡もない。排水管に不審なものを流した形跡もない。
ということ。
状況から見てスティーガーが女性を殺害した可能性は非常に高いわけですが、死体を処分した形跡もなく、どこからも死体を発見することができません。
確かな手がかりなのは、スティーガー自身が切り倒した大量の木。
スティーガーはなぜ、大量の木を切り倒したのでしょうか?
いつまでも後を引く余韻。
「ラストで明らかになる真相」も大変よろしいのですが、この作品の素晴らしいところは「物語の運び方」と「真相の暴き方」と「後味」でしょう。
「ただ単に真相を暴き、それが衝撃的だった」という話ではないのです。最後に強烈な一撃を残す作品は他にも多くありますが、『二壜の調味料』はそれとはまた別物。
言ってしまいますと、最後まで読んでも女性の行方はハッキリと読者へ提示されません。
明らかになるのは、木を切り倒した理由だけです。
だからこそ最高なのです。
これがどういう意味なのか、ただ「読んでください」としか言いようがないのですが。。
〈女性がどこに行ったのか〉ではなく〈なぜ木を切り倒したのか〉という謎をメインに持ってきているところが素晴らしい。
この「木を切り倒した理由」の提示の仕方もニクイんですよね〜。ずるいわー。
真相がわかっていながら改めて読みなおすと、物語の運び方のうまさにウットリしてしまいます。ぜひ二度読んでみてください。
おわり
さて、この『二壜の調味料』はなにも表題作だけではありません。
探偵リンリーが活躍する短編九作品を含めた、全二十六編からなる作品集です。
ミステリーだけでなく、著者お得意のファンタジー風味な物語も収録されており、ロード・ダンセイニの世界観を存分に楽しむことができますよん。
ミステリ短篇というより「面白い短篇集」として読むのが良いでしょう。
ま、やはり表題作がずば抜けていますけどね( ゚∀゚)
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