さて、今回は2021本格ミステリランキング・ベスト10の海外編です。
一体どの作品がランクインしたのでしょうか。
早速見てみましょう(*゚∀゚*)
国内編はこちら

1.アンソニー・ホロヴィッツ『その裁きは死』
このミステリーがすごい!でも一位だった『その裁きは死』が今回も一位。さすがです。
謎の男、ホーソーンはなんだかちょっぴり嫌な奴かもしれない。
そんな印象を抱く、シリーズ2作目です。
推理小説と言えば、誰もがシャーロックホームズを思い浮かべると思いますが、本シリーズはホームズ&ワトスンコンビのように、ホーソーンとホロヴィッツがコンビを組んで事件を解決していくスタイルで話が進みます。
今作は、離婚を専門に請け負う弁護士がワインボトルで殴殺された事件の謎を紐解いていく物語です。
現場には、「182」という謎の数字が残されていて、それをヒントに謎解きを進めていきます。
読者もホロヴィッツと一緒に謎解きを進めていくのが本書の楽しみ方の一つ。
散りばめられた伏線をしっかりと回収して、ラストはしっかりと落とす物語の構成の仕方は、まさに王道ミステリー。
誰もが納得できる展開でありながら、「あ~!そうだったのか!」と虚を突かれること間違いなしです。
2.陳 浩基『網内人』
事件は女子中学生の飛び降り自殺から始まります。
シウマンは自宅のアパート22階から飛び降り、その尊い命を落としました。
実は、電車内で痴漢事件に巻き込まれた上に、その犯人と思しき男の甥っ子からネット上で誹謗中傷を受けていたのです。
シウマンがそんな状況であったことを死後に知った姉のアイが、ネット専門探偵として名高いアニエに事件の捜査を依頼します。
ネット関係の部分も適当ではなく、しっかりと具体的に記述されており、リアリティのある構成となっていて、まさに現代社会の闇を浮き彫りにし、その問題を読者へ訴えかけてくるような作品となっています。
物語の中で生じる謎を解決する中で、人間のドロドロとした部分が如実に表現されていくので、最後もドロドロしているのかと思いきや、スッキリとした清々しい気持ちになれました。
この結末を迎えることができて、2020年の良い締めくくりとなったと言っても過言ではありません。
3.ポール・アルテ『殺人七不思議』
世界七不思議と呼ばれる7つの建造物があることを、みなさんはご存じでしょうか?
一番有名なものでいうと、ギザの大ピラミッドです。本著は、そんな世界七不思議になぞらえて起こる連続殺人事件を暴くミステリー作品となっています。
オーウェン・バーンズシリーズの3作目となりますが、名探偵バーンズでも事件の解明に手こずるほど難解な事件となっています。
読者なりに謎解きを頑張ってみようと思いますが、本著ではなかなかそれが難しくもあります。
バーンズでさえ解けない事件の謎は、意外にも単純かつシンプルに解決されていきます。
さて、世界七不思議と不可能犯罪がどのように絡み合っていくのでしょうか?
不可能犯罪小説と言えばアルテ!と評されるほど、数々の作品を生み出してきた著者ならではの発想ではありますが、ファンの中ではやや肩透かし気味の感想が多く、次回作への期待が高まるところです。
4.M・W・クレイヴン 『ストーンサークルの殺人』
イギリスのカンブリア州を舞台にしたミステリー作品です。
ストーンサークル内で次々に発見されれる焼死体はどれも、酷い有様。
そんな連続焼死体事件の3番目の死体には、数字の「5」ととある名前が刻まれていました。
刻まれていた名前なんと国家犯罪対策庁、通称NCAの警察官「ワシントン・ポー」!
彼は不祥事を起こして停職中でしたが、この事件があって停職を解かれて捜査に加わることとなります。
さて、この事件とポーにはどんな関係があるのでしょうか?
捜査が進むまでの前段部分はやや長く退屈に感じる人もいるかもしれませんが、操作が進み始めると途端にスピード感が出て、物語に入り込みやすくなります。
殺人方法が残忍過ぎて、心がどよんとしてしまいますがそこを乗り越えて最後まで読むことで、思いがけない展開に胸が躍ることでしょう。
5.周 浩暉『死亡通知書 暗黒者』
中華ミステリーを読んだことはありますか?本著の作者は中国生まれ。
2009年に「死亡通知書」がシリーズとして刊行され、世界から注目されています。
本作はシリーズ26冊目となりますが、物語としては3部作の第1部となります。
ネット上で名を馳せる予告殺人者「エウメニデス」。この存在によって、裁かれざる罪人が募られ、殺されていきます。
そんな中、とある刑事が殺される事件が起こりました。
この事件に介入していくのが、主人公である刑事。彼は、殺された刑事と因縁があるのです。
389ページと読み応えのある作品ですが、スラスラ読めてしまう翻訳で、非常に飲み込みやすい話となっています。
情景を想像しやすく、登場人物の一覧表がしっかりついているので読みにくい人物名もしっかり入ってきてとても親切です。
中華ミステリーに初めて挑戦するという人におススメしたい作品です。
6.イーアン・ペアーズ『指差す標識の事例』
上下の2部に分かれる長編ミステリー作品です。
舞台は1663年のイングランド。相当古い時代ですが、この頃はクロムウェルが亡くなり、王政復古によりチャールズ二世が国を統治していました。
そんな時代に、オックスフォード大学で起きた毒殺事件に遭遇したのが、主人公のヴェネツィア人コーラ。犯人が見つかり、一件落着と思えたが実は真相は違って…。
この作品の面白さは、一つの事件を4人の視点で書かれた手記によって描かれているというところにあります。
それぞれの視点で違った様相を呈してくる事件の真相は一体どれが正しいのでしょうか?
たった一つの事件がこうもクルクル変わっていくのに大変面白さを感じます。
また、世界史好きにはたまらない、クロムウェルだけでなくロックやボイルといった歴史的人物が出てくるのも魅力の一つです。
2部に渡る長編ですが、最後まで一気に読みたくなる作品です。
7.ミネット・ウォルターズ『カメレオンの影』
一人の軍人と、とある事件が絡み合って構成される話は、一見するとどこでつながるのかわからないような構成のしかたをしているので、最初の方は別の話なのではないかと疑ってしまうほどです。
しかし、この長い物語を終えた後には「なるほど!」と膝を打つ爽快感が待っています。
この物語の主人公は英国軍中尉のアクランド。
彼はイラクで被弾して、片目を失ってしまうほどの重傷を負います。
彼はこのケガが原因で、性格がガラッと変わってしまい暴力的な側面が強く出たり、極端に女性を嫌ったりして、周囲の人間を困らせていきます。
そんな彼と、彼の近隣で起きる軍歴のある一人暮らし男性の連続殺人事件の2つの側面から話は進んでいきます。アクランドが犯人なのでしょうか?
アクランドだけでなく、彼を取り巻く脇役たちがまさに名バイプレーヤーといえるほどの魅力を持っていて、それだけで読み応え十分の作品です。
600ページにものぼる長編ですが、是非最後まで読み切って欲しい作品です。
8.フィン・ベル『死んだレモン』
海外作品としては珍しい、ニュージーランドからのミステリー小説です。
珍しいも珍しい、この作品は翻訳者の安達眞弓先生が、是非日本の読者にも読んで欲しいと言って出版社に持ち込んだ作品なんだそうです。
原作者のフィン・ベルは南アフリカの出身で、刑務所で精神鑑定やカウンセリングをしていた経験の持ち主です。
死んだレモンとは主人公のことで、人生の落伍者のことを指します。
彼は、飲酒運転をした時に起こした事故によって下半身不随となり、車いすで生活するようになりました。
心機一転新たな生活を送るためにニュージーランドに移住したものの、なんと隣に住むのは26年前に起きた未解決殺人事件の容疑者ではないかと噂される不気味な三兄弟。
事件について調べ始めた主人公は、ついには三兄弟に命まで狙われるようになってしまいます。
現在パートと過去パートを行ったり来たりしながら読み進めていく、王道ミステリー作品です。
登場人物それぞれに魅力がある反面、かなり残酷な描写もあるなど心にズッシリと残るものがあります。
9.ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』
彼女は「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれていました。
その少女、カイアはたった6歳でノースカロライナの湿地帯に家族に置き去りにされてしまい、一人で生きていかなければならない苦境に立たされていました。
それでも彼女は、大自然の中で強く生きていました。
どれほど心細く、寂しかったでしょう。
差別や貧困と闘いながら生きる少女は、ある事件の容疑者として逮捕されてしまいます。
湿地帯で青年チェイスの死体が見つかったのです。彼女は本当に、チェイスを殺したのでしょうか?
作品は、1960年代のアメリカノースカロライナ州を舞台にしていて、当時の差別や貧困など様々な社会問題を切り取りつつも、カイアが必死に生きる様子を描いていることで話題となりました。
殺人事件が起き、その謎が解明されていく部分はしっかりミステリーと分類されますが、それ以上に心に残るものや考えさせられることがあります。
「読んだ良かった」と誰もが思える深みのある作品です。
10.アルネ・ダール『時計仕掛けの歪んだ罠』
スウェーデンで売上1位を誇る、傑作犯罪サスペンスです。
物語は、3つの少女失踪事件を主体に進んでいきます。
事件の目撃通報があるにも関わらず、現場に行けば何もない状態が三度続き、担当刑事のサム・べリエルは苛立ちと焦りに苛まれていました。
べリエルは連続殺人事件だと主張しますが、彼の上司は全く取り合おうとせず、組織の中でのズレが所持ていきます。
しかし、そんな中でべリエルは一人の容疑者へとたどり着くのでした。
タイトルにある通り、「時計」が絡んでくるこの物語。作中では、何度も出てくる時計の部分を注意深く読んでみてください。
ちなみに、日本人としてはやや読みにくい印象があるこの作品。
ページ数もやや多く、途中で中だるみしてしまう部分もありますが、迫真の取り調べシーンは息をのむこと間違いなし。
予想外の展開と、衝撃の結末に驚きを隠せません。
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