国内ミステリー小説

【2019年版】本格ミステリ・ベスト10紹介

さて、遅くなってしまいましたが、2019年版本格ミステリ・ベスト10の紹介です。

毎年の事ながら、このミスとの違いも楽しいですよね。

どうぞ参考にしてみてくださいな(*´ω`)

2021年版はこちら!

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10位.東野圭吾『沈黙のパレード』

町で愛されていたにも関わらず、突如行方不明になっていた女性が遺体で発見された。

被疑者は過去に別の事件にも関わっており、状況証拠は黒を示している。

しかし決定的な証拠は見つからず、不起訴になってしまう。

そんな被疑者・蓮沼への感情が高ぶっていく中、お祭りの最中にその蓮沼が死んだというニュースが入ってくる。

誰が蓮沼を殺してもおかしくない状態で行われた犯行。

ガリレオが不可能な犯罪のトリックと、その周りに隠された沈黙に隠されたものを暴いていく。

感想

ガリレオと言えば誰もが知る人気シリーズで、ドラマ化もされてますね。

それゆえにどうしても福山さんのイメージが出てくる一冊ですが、内容はまさしく本格派ミステリです。

最新刊であるこの作品は、前の作品との繋がりを感じさせながら、ここから読んでも違和感はないつくりに。

トリックの見事さと、それを解決するガリレオ先生の推理力は凄いの一言です。

何故その事件が起こったか、人の感情や行動を丁寧に描いているのが印象的。

複雑に絡み合った人間関係の深さを感じさせる一冊でした。

人がどこでどう繋がっているかはわかりません。

人間の感情の面白さや複雑さを感じさせてくれる名作でしょう。

ドラマ化されているからと嫌厭している方にもぜひ読んでみてほしい一冊です。

9位.倉知淳『ドッペルゲンガーの銃』

ミステリ作家を目指している女子高校生の灯里は、小説のネタを探すため、事件現場に潜入することにする。

警視監である父とキャリア刑事である兄がいるので、それを利用しようという魂胆だ。

兄は少し抜けた所があると思っていたが、実は先祖の霊が兄の手助けをしてくれたいた?!

実際の事件現場で彼女が遭遇した、奇妙奇天烈な三つの事件が収録されている一冊。

・「文豪の蔵」:密閉空間に突然現れた死体を巡る事件が描かれる。

・「ドッペルゲンガ-の銃」:痕跡を一切残さずに空中飛翔した犯人について、二つの地点で同時に同じ拳銃から放たれた銃弾が事件を引き起こす。分身したような犯人との対決。

・「翼の生えた殺意」:空中を飛んだとしか思えないほど証拠を一切残さなかった犯人。そのトリックを解く。

感想

アイラブ倉知氏。

帯で「今年度ベスト級の謎」と書かれていたのでワクワクして読みました。

内容は非常に真面目で、心から本格ミステリを楽しむことができます。

きっちりと論理的に推理がされるものの、だからこそ少し地味な印象も受けました。

ミステリ好きの人であれば、自分でトリックを推理し当てることもできると思います(私は無理でした)。

妹と兄の会話もテンポが良くサクサクと読める一冊で、堅苦しくないのがいいですね(*´∀`*)

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8位.白井智之『少女を殺す100の方法』

名門女子中学校で、2年A組の生徒20人が死体で見つかった。

鍵のかかった教室で起こった事件に、教頭は警察より先に犯人を見つけようと試みる。

密室の教室で20人の14歳を皆殺しにしたのは誰なのか。

推理をしていくにつれて、話はどんどんと不思議な方向へと向かい始める。

“少女20人の死”をテーマに紡がれる、5つの本格ミステリ。

感想

タイトルでまず引き込まれました。「少女を殺す100の方法」とは。

1人の少女を100回殺すという意味なのか、100人の少女を殺すという意味なのか。

元々エログロやホラー、スプラッタは得意な方ですが、期待半分怖さ半分でした。

内容は、これでもかというほど少女たちが酷い目にあいます。白井さんが凄いのは、そこにきっちりとミステリを乗せてきている点です。

これだけ大量の人が死ぬお話で、本格的なミステリは非常に難しいと思いますが、きっちりと5つのミステリを成立させています。

5つの短編という形で描かれているので、まだ良かった。これが長編だったら心臓が持たなかったかも。

7位.早坂 吝『探偵AIのリアル・ディープラーニング』

AI研究者であった父親が自宅のプレハブで焼死した。

密室で死亡した父親を「事故死」として扱う警察に、輔は疑問を持つ。

父屋の遺品を整理していると『警察』のAI・相以が現れる。

AIが得意とする情報の収集と分析で数々の事件に挑む。

やがて相以を狙うテロリストの集団も登場し、AIを巡る対決へと話は変化していく。

感想

AI、いわゆる人工知能が私達の生活には数多く使われています。AIに仕事を奪われるなんて話も出るくらいです。

そのAIを推理にも使ってしまおうというのがまず斬新。

全然詳しくない私でも、AIたちがどうやって学習し、推理をするのか興味深く読むことができました。

子供が学習するかのように、相以は徐々に人間のことを理解していきます。

段々と人間らしくなるのを見ていると、このまま進化したらどうなるか非常に楽しみです。

とても分かりやすく書かれているので、知識がなくても問題ありません。

まるで近未来を垣間見たような気分になれるお話で、今後こんな世界になるのかと思うとワクワクしますね。

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6位.阿津川辰海『星詠師の記憶』

山間の寒村で紫水晶に予知画像を写し撮ることができる星詠師がいた。

その紫水晶に記録されたのは、星詠師が殺される映像だった。

真犯人も犯行現場も記録されているのに、説明することが難しい。

予知能力をめぐる因縁と鉄壁のアリバイが立ちはだかる。行き詰まる推理を解くことはできるのか。

感想

SFとミステリがうまく組み合わされた作品は傑作が多い気がします。

この作品もまさにそんな作品の一つ。

未来に“自分が見る映像”を水晶に残せる星詠師という存在がストーリーの鍵になります。

ただでさえ難しいミステリに、特殊な設定を織り込むと物語を収拾させるのが大変です。

それでも微塵も無理をせず、論理的に読ませる阿津川さんの腕は見事!

最初から最後まであっという間に読んでしまう一冊でした。

5位.有栖川有栖『インド倶楽部の謎』

すべての運命が予言され記されているという「アガスティアの葉」というものがある。

そこには前世から自分が亡くなる日まで、全てが書かれているらしい。

神戸の異人館街の外れにある屋敷で、この神秘の葉を一目見ようと、インド倶楽部の七人が集まっていた。

その後、港で変死体が揚がり、殺人事件が相次いで起こってしまう。

アガスティアの葉には何が書かれていたのか?

捜臨床犯罪学者の火村と推理作家の有栖川有栖は、謎に包まれたインド倶楽部の例会と連続殺人事件の関係を捜査し始める。

感想

13年ぶりに発売された『国名シリーズ』の作品です。

インドというだけで、ミステリアスな雰囲気を感じてしまうのは私だけでしょうか。

内容もインド感満載で、前世の話が具体的に描かれていたり一風変わった雰囲気を受けます。

登場人物たちが自分の事情から嘘をつく場面は、人間についてよく表されていました。

トリックは面白いですが、根拠が薄く感じる部分もあります。

そういった部分も含めて、物語として非常に面白くまとめられているのが流石です。やっぱり国名シリーズは良い。

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4位.市川 憂人『グラスバードは還らない』

マリアと漣は大規模な希少動植物密売ルートの捜査を担当していた。

その捜査の途中で、取引先に不動産王ヒュー・サンドフォードがいることを掴む。

彼には以前から自分の豪邸で、秘蔵の硝子鳥や希少動物を飼っているという噂があった。

捜査打ち切りの命令が下る中、無視してタワーを訪れた二人をテロが襲う。

最上階では殺人事件が起き、ビルの内部では爆破事件が起きる。

崩れていくビルの中で二人は、不動産王の秘密を暴くことができるのか。

感想

タイトルの通り、『硝子鳥(グラスバード)』といわれるものが物語の核となるお話です。

大富豪が秘密の趣味を持っていて、その裏におぞましい事件が隠れているというのはミステリの鉄板の一つだと思います。

大体、お金にものを言わせてろくでもない事をやっているのですが、この話もそんな内容です。

硝子鳥の正体が明らかになったとき、あまりことにしばらくフリーズしてしまいました。

美しいもののために、どれだけの犠牲を払えるかは人類の命題なのかもしれません。

マリアと漣の上司部下シリーズ第3弾ですが、前から読んでいる読者はもちろん、このお話から入っても違和感なく読める作品です。

私の大好きなシリーズで、『2018年はこのミステリーがすごい面白かった!私のベスト15』の1位。

3位.霞 流一『パズラクション』

和戸隼は殺し屋をしている。秘密裏に依頼された人物を仕留めるのが仕事だ。

その晩も完璧な準備でターゲットを仕留めるはずだった。

しかし、まさかのターゲットを先に殺されてしまうというアクシデントが起きる。

その後も偶然が偶然を呼び、次々とハプニングに襲われる和戸たち。

密室連続殺人事件を利用しながら、悪人たちを捕まえることができるのか。

捜査のために仕掛けを施すが、事件は予想外の方向へ転がっていく。

感想

あらすじだけを読んでもよく分からなかった作品。

とりあえず読んでみようと思い読み始めると、次々と起こるハプニングとそれに四苦八苦する主人公たちを楽しむことができました。

殺し屋を家業としながら、悪人を退治するという設定は必殺仕事人のような雰囲気があります。

あれほど明快な勧善懲悪にはなりませんが、そこにミステリを組み合わせるという荒業をやってのけた作品です。

その都度、論理を組み上げ、最終的に一網打尽を目指しているのですが、結構粗い部分も見られます。

まるで映画を見ているような気分に慣れるので、エンタメ性が高いミステリを読みたい人にはオススメの作品です。

2位.三津田信三『碆霊(はえだま)の如き祀るもの』

昔ながらの共同体が色濃く残る昭和。

刀城言耶が祖父江偲らとやって来たのは、険しい地形に囲まれ閉ざされた犢幽(とくゆう)村だ。

険しい山々には鬼が棲み、海上に出れば彷徨する亡者に遭遇すると言われる怪談に溢れた村だ。

刀城言耶は民俗採訪のためこの地にやって来た。

そこで次々と起こる不可解な殺人事件は、村に伝わる「怪談」をなぞるかのようだった。

謎が謎を呼ぶ殺人事件が連続で起こる。「怪談」の解釈の奥にある事件の真相に刀城言耶が迫る。

感想

これも私の大好きなシリーズ。

まるでホラーか怪奇小説のようなタイトルですが、中身はれっきとした本格ミステリです。

元々怪談や民俗学が好きなので、そのような怪談がどうミステリに繋がるかワクワクしながら読むことができました。

特に最初の100ページ近くは創作怪談になっており、それだけで読み物として成立しそうな濃度です。

刀城言耶シリーズの一冊ですが、他のシリーズ作品と比べてホラー感は薄めかもしれません。

それでもミステリとして読む分には十分に怪奇さを感じることができる内容で、思う存分楽しめました。満足です。

ミステリ要素に関しても、密室や不可能殺人などが綺麗に組み合わさり、独特な展開にページをめくる手が止まりませんでした。

最後の最後まで謎が多い一冊ですが、そのぶん推理や考えを深めることができ、幅のある一冊になっています。

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1位.大山 誠一郎『アリバイ崩し承ります』

美谷時計店には、一風変わった張り紙がある。

「時計修理承ります」だけでなく「アリバイ崩し承ります」というものだ。

時計にまつわるものであったら、何でも依頼を受け、アリバイ崩しを行うという。

新しく捜査一課に配属になった新米刑事は、この時計屋の店主に難事件のアリバイ崩しを依頼する。

ストーカーと化した元夫のアリバイ、郵便ポストに投函された拳銃のアリバイ、山荘の時計台で起きた殺人のアリバイなど、全部で7つの事件が待ち受ける。

美谷時計店店主の美谷時乃はこのアリバイを崩すことができるのだろうか。

新米刑事が頼りにしてしまう、時計屋の店主の鮮やかな謎解きが描かれた一冊。

感想

これほどまでに挑戦的な題名が付けられるミステリも珍しいのではないでしょうか。

ミステリの本質とも言っていい『アリバイ崩し』。それを承りますというのだから、探偵役には期待してしまいますよね。

そしてもちろん期待に答えてくれます。

最初はバラバラに思えた謎たちが、段々と繋がっていく様は心地良いものがあります。

新米だった刑事も段々と謎解きに慣れてくるに連れ、少しは頼もしくなった気がしますね。

内容は期待通りの、鮮やかなアリバイ崩しを見ることができます。

鉄壁のように見えたアリバイが崩れるのはミステリの醍醐味でもありますよね。

決め台詞や展開のテンポの良さなど、ドラマを見ているような気分で楽しめる一冊でした。流石の1位です!

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年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)
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POSTED COMMENT

  1. 林檎 より:

    anpo39さんこんにちは。昨年も沢山良い作品に出会う機会を頂きました。本当にありがとう!!今年もよろしくお願いいたします。
    『星詠師の記憶』すごく魅力的な設定ですね。

    • anpo39 より:

      林檎さんこんにちは!
      こちらこそ、参考にしてくださってありがとうございます!

      『星詠師の記憶』、面白いですよ。さすがベスト10に入るだけあります。ぜひぜひ(*´∀`*)

  2. カエデ より:

    anpo39さん今晩は。
    いつもこのブログを参考に本を読んでいますがコメントするのは
    初めてです。
    今回の記事で紹介されていた本は読んだ事の無いものが殆どでどれも
    とても興味を持ちましたが、その中でも特に
    『少女を殺す100の方法』にとても惹かれました。
    でも読むのが怖くもあります。私はミステリーやホラーは割と好きで
    よく読みますがエログロやスプラッタはあまり得意ではありません。
    でも面白い作品なら読んでみたいと思っています。
    だから教えて頂きたいのです。
    anpo39さんはこの作品を読んで、まず率直に感じた事は何ですか?
    面白い作品に出会ったという喜びよりも読まなきゃ良かったという
    後悔の方が上回ったという事はないでしょうか?

    • anpo39 より:

      カエデさんこんにちは!
      お返事が遅くなって申し訳ございません。
      コメントありがとうございます!参考にしていただきとても嬉しいです(*´∀`*)

      『少女を殺す100の方法』、確かに読む人を選ぶかもしれません。

      私はもともと作者である白井智之さんの作品が結構好きで、白井さんの特徴であるグロに耐性が付いていたので問題なく楽しめましたが、慣れていないとちょっと「え?」ってなってしまうかも。

      いやでも、白井さん他の作品と比べたらグロさは控えめというか、思ったよりサクッと読めたのです。

      じゃあ私がどう思ったのかといえば、読んでしまった後悔というのは全くなくて、新しい白井さんの作品が読めた嬉しさの方がはるかに上回っていました。

      ただグロいだけでなく、ミステリとしても白井ワールドを存分に楽しめる一冊ですので、私はオススメしちゃいます(*´ω`)

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