ビール×ファンタジー?!暖あやこ『14歳のバベル』-タイトルとのギャップも話題の作品を読む

ビールとファンタジーを交えてる?

そんな話を聞いた時点で、普段はミステリ小説しか読まない私の心が動いた。

それが、暖あやこさんの『14歳のバベル』。

 

タイトルは14歳だし、バベルは旧約聖書の混乱の意?それとも、バベルの塔?

そんな、まったく意味不明な状態から読み進めるワクワク感は、読書好きにとってごちそうですよね。

どう転ぶのか分からない「14歳のバベル」のあらすじや、見どころや魅力、読後の感想などをお伝えしていきます!(*´∀`*)

目次

『14歳のバベル』あらすじ

14歳のバベル」のスタートは、日本の神社から。

いきなりファンタジーの世界へ引き込まれるかと思いきや、まさかのです。

主人公は14歳の冬人。

なるほど、だからタイトルが14歳なのか、と単純に思いながら読み進めたら、違いました。

体の弱い冬人は、すぐに失神してしまう習性を持っているのですが、彼に意地悪するいじめっ子の姿を見ただけでも、発作が起きて倒れてしまう重篤レベル。

そうして気を失っている間、冬人は古代王国のような世界の夢を見ます。

夢の中で冬人は、同じ14歳ながらにして、ビール工場で指揮を行う「シルド」と出会うことに。

そうです。タイトルの14歳は、二人のことを指していたんですね。

やがて冬人は、虚弱な自分を克服したいと、医師の元を訪れます。

この医師は、治療で薬草を使うのですが、その効果で冬人は再び異世界と交流することになります。

困っているシルドに手を差し伸べながら、自分自身も成長していく冬人。

しかし、シルドにはビールを通じて、地下に住むシュメール人と、冬人が済む地上の人間を入れ替えると言う計画が。

そこへ、冬人と折の悪いビール会社勤務の父親の存在も絡むなど、人間ドラマやミステリー要素などがふんだんに盛り込まれた、テンポの良いストーリーでした。

二人の主人公の成長に注目

14歳のバベル」の見どころは、何といっても主人公「冬人」と「シルド」の成長でしょう。

最初は危ういだけの存在だった冬人が、どんどん大人びていく様子は、親になった気分でつい見守ってしまったほどです。

暖あやこさんの作り出す、独特の世界観も、「14歳のバベル」の大きな魅力。

「シルド」が暮らす地下王国のファンタジー感だけでなく、冬人の住む日本も、サイバーテロによってインターネットやスマホが禁止されるなど、現代は考えられないアナログな世界が展開されているんです。

調べ物をするのは本や図書館……小さい頃はそんな時代だったはずなのに、今ではとても考えられませんね。

関係が劣悪だった冬人と両親の関係や、シルドとの友情。

ハラハラさせられる展開の中で芽生える絆や信頼関係、親子愛など心的要素での見どころが満載ですよ。

14歳のバベル」を読んだ感想

14歳のバベル」を読み終えて……思ったのはもちろん「地ビールが飲みたい!」

というのは冗談ですが、不思議な世界観に引き込まれ、あっという間に読破してしまった後、現実に戻ってきた瞬間。

「良かった」

という、単純で何とも言えない、ほっとした気持ちになったのが印象的。

ちなみに、バベルとは目次にもありますが「バベルの塔」のことでした。

バベルの塔やバベルの呪いについて、事前にちょっと調べてから読むと、物語によりスパイスが加わりますよ。

主人公の父親が勤めるビール会社のキャンペーンと、地下の世界がつながっていく流れは圧巻です。

最初のうちは、意味が分からないのですが、終盤が近づけば近づくほど、

「どうなっちゃうの?」

とページを捲る手が止まらなくなります。

ファンタジーな世界観は、的確な風景描写のおかげもあり、「シルド」のいる場面も易々と頭に浮かべることができたのも嬉しい。

それにしても、シュメール人の作ったビール、一度飲んでみたいな。

14歳のバベル』総評

思いもよらない展開へ持っていくのが得意な暖あやこさんの世界。

一度読んだだけではわからない部分もあり、他ではない発想力でブチのめしてくれた気がします。

主人公の二人だけでなく、過剰な母や変化していく父子の関係など、それぞれの人間模様をどれもなおざりにせず、丁寧に書かれていました。

「すれ違い」「コミュニケーション」「信じあう」「友情」

これらのワードにピンときた方は、絶対に読んで損のない作品です。

もちろん、ビール党の方も!!

私自身、弱い主人公設定の作品は、普段あまり読まないのですが、冬人くんは別ですね。

気付けば、すっかり彼の魅力のとりこになってしまった私です。

番外編の出版を、是非強く希望します。

ファンタジー要素の含まれる作品ですが、「14歳のバベル」は

「ファンやジー作品やSF作品は苦手」

という人でも、問題なく読み切れちゃうでしょう。

「ちょっと変わった小説が読みたい」

「読後感の良い作品を探している」

「読書で現実逃避したい」

そんな方に、オススメしたい「14歳のバベル」でした(*´ω`)ノ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 更新お疲れ様です
    やった! 暖あやこだ!
    こういった先を読ませない系の作品は大好きです
    「遠く海より来たりし者」は読んでいたのですがまさか新作が出ていたとは……
    前作はミステリ要素もありいい案配のカオスさで楽しめたのでこちらも期待
    GWもあまり時間はないけれど合間を縫って読んでみます

  • ダイサンさんこんばんは!
    体調が悪くて更新が久しぶりになってしまいました……(ノω`*)
    おお、暖あやこさん好きですか!
    そうそう『遠く海より来たりし者』もよかったですよね。
    『14歳のバベル』先の読めなさとスケールの大きさは相変わらずで大変面白い作品でした。
    ゴールデンウィークも忙しいかと思いますが、ぜひぜひ楽しんでください〜(*´∀`*)

コメントする

目次