ホラー小説

『ペット・セマタリー』- 禁忌にまみれた恐怖!幸せな一家が崩れていく様子の先にある哀しみとは?

1983年に発表された話題作、『ペット・セマタリー』。

実はこの作品はそれよりも前に原稿が完成していたそうですが、あまりの怖さにしばらく発売に待ったがかかっていたといういわくつきの作品です。

また、キング自身が脚本を書き下ろし映画化もされました。

ホラーの帝王と呼び声が高いキングですが、『グリーンマイル』『ショーシャンクの空に』など、誰もが一度は聞いたことのある映画の原作者としても知られており、数々の作品が映画化されている素晴らしい作家でもあります。

そんな帝王の代表的なモダンホラー作品として呼び声が高い『ペット・セマタリー』のあらすじから魅力までしっかりご紹介いたします。

スティーヴン・キング『ペット・セマタリー』のあらすじ

主人公であるルイス・クリードは、妻のレーチェル、娘のアイリーン、そして幼くやっと歩き出したばかりの息子のゲージ、そして愛猫チャーチルともに幸せに暮らしていた。

その生活は周りがうらやむほど。皆仲良く幸せに暮らしており、理想の家族に見えた。

ところが、ある日チャーチが車に轢かれて死んでしまった。

この事件をきっかけに、幸せだった一家の幸せはもろくも崩れ去っていくこととなる。

ルイスの家の奥には「ペット・セマタリー」と呼ばれる動物霊園がある。

ルイスはチャーチルを失った悲しみに暮れながら、近所に住んでいる老人のジャドに連れられて、その霊園にチャーチを埋葬した。

ところが翌日、ルイスは信じられない光景を目の当たりにする。

なんと死んで埋めたはずのチャーチルが蘇って家へ帰ってきたのだ!

しかも、ただ甦っただけではなく、変わり果てた姿と性格で戻ってきたのだ。

この事件をきっかけに、幸せだったルイス一家にとんでもない悲劇が次々と巻き起こってしまうのだった・・・。

ファンタジーとして亡くなったペットが飼い主の元に戻ってきて飼い主を救う、というストーリーはよくあると思いますが、このストーリーは完全なるホラーです。

登場人物が少ないので、それぞれの描写や感情などが丁寧に描かれており、ひたひたと迫りくる恐怖がたまりません。

スティーブンキングのモヤモヤとした終わり方も、良い意味で後を引く作品となっています。

スティーヴン・キング『ペット・セマタリー』の口コミ【読者の感想】

それでは実際にこの本を読んだ方の口コミや感想をご紹介致します。

輪廻転生ということはよく言われるのですが、その蘇りを人為的に行うと恐ろしいことが降りかかるということをこの作品は訴えていると思います。
愛しい人を亡くした悲しみから抜け出せず、禁忌とされた場所に死者を埋めて再誕を願う気持ちはわからなくはないですが、自然のままにしておくべきですね。
2回映画化されていますが、映画や現代のホラー小説とは受ける印象がかなり異なります。
なぜか、どうしてかという原因や動機は結局ハッキリ明言されず、読者側がこうだろうと想像し決定付けた上で読んでいくタイプの小説です。
どんでん返しなどはなく終始うすぼんやりとした不安感に包まれます。
スティーブンキングの作品は多くがモヤモヤしていますが、ペットセマタリーはこのモヤモヤ感が高い方なので現代の全てが明らかな小説に慣れすぎた時や疲れた時にお勧めです。
他人事であれば「それは間違った選択だ」と言い切れるが、もしも自分がその立場だったときに、その間違った選択をしない保証はない。
怖い結末をわかっていながらも、寂しさや悲しみに負けてしまうことは普通にあるのだから。
「死」を超えたとき、死よりも恐ろしい惨劇が待っていても、会いたい人がいるものです。
そこに共感できてしまうので、悲しいけれど記憶に残る作品です。
とても怖かったけどそれだけではない作品。
亡くなった息子を生き返らせたいと思う主人公の気持ちは一見、エゴのようにも思えるが痛いほどによくわかる。
しかし、亡くなった者に対していくら後悔の念を募らせてもそれはもう運命であり、どんなに悲しくても受け入れなくてはいけない、死者は永遠に安らかに眠らせなければいけない、
それが生きている者が亡くなった者にできる唯一のことなのだと、この作品を通じて学ぶことができた。

家族愛も一つ間違えれば家族哀に。キングのホラーの神髄がここにある

この作品は、多くの人が口コミで書いているように、亡くなった人を生き返らせようとする禁忌に立ち向かうホラーです。

主人公であるルイスはごく一般的な医者で、家族は幸せだったはずなのに、たったひとつの禁忌が家族をどんどんと恐怖に突き落とす。

しかし、それを馬鹿だなあと笑ってしまえないのです。

もちろん人を生き返らせるということは、神への冒涜にもなりえますし、自然の摂理としてはあり得ないことです。

ただ、私たち人間が長く生きていると、失いたくなかった人物やペットに先立たれ、「お願いだからもう一度私の元へ戻ってきてくれ」と願うことは誰しもあります。

共感できてしまう題材だからこそ、これがホラーになったときにより怖く感じますし、ルイスの気持ちもわかってしまうので責めることもできないのです。

ルイスはただ愛にあふれたごく一般的な市民で、医者で、父で夫だっただけ。

それなのに、どこかの感情のスイッチを押し間違えてしまっただけで、このような悲劇のどん底を経験してしまう。それこそが何よりの恐怖なのです。

ゾンビが出てきて追いかけまわされたり、テレビから幽霊が出てくるのも確かに恐怖ではあります。

しかし、人間の切なる願いから産まれた恐怖ほどつらく悲しく胸を打ち、良くも悪くもモヤモヤする。

読み終わった後、心を作品の中に残してしまったような、ぎゅっと鷲掴みにされたような何とも言えない感情が自分の周りを取り囲むでしょう。

ただ怖いだけでなく、哀しみと愛を感じながら、是非キングの文章の一つ一つにゾクゾクしていただければと思います!

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