『頼子のために』-法月綸太郎シリーズの最高傑作が「新装版」で登場!

一九八九年八月二十二日

頼子が死んだ。

頼子は私たちのひとり娘だった。優しくて賢い娘だった。健康で明るい少女だった。

P.9より

最愛の娘を殺された父親、西村悠史の手記で始まるこの作品。

法月綸太郎シリーズの中でもトップクラスの面白さを誇る傑作が、新装版で登場しました。

長編作品であれば、『頼子のために』か『一の悲劇 (ノン・ポシェット)』が最高傑作だと思っております。

つまりは「オススメ」というより「絶対読んでみて」な作品なわけです。

そもそも新装版が出るということは、それだけ読まれ続けるべき優れた作品であることに他なりません。

自分で書いた記事【名作選】最強に面白いおすすめ国内ミステリー小説50選にも選んでいますからね。我ながらナイスチョイスだと思っております( ゚∀゚)

 

『頼子のために』

 

「頼子が死んだ。」

の一文で始まる西村悠史の手記。

最愛の娘だった頼子が、17歳という若さで、何者かに絞殺された。発見場所は公園だった。

さらに信じがたいことに、頼子の部屋を探っていると、産婦人科の診察券が見つかった。

頼子は妊娠4ヶ月だった。

まさか、頼子にかぎって。

……一体誰の子だろうか。

この男が頼子を殺害したのだろうか。

憎しみに取り憑かれた西村悠史は、その男を探り出し、殺害する計画を立てる。

そして目的を果たした後は、自らの命を立つと、手記に残した。

あと数時間で私の彷徨にも終止符が打たれる。もはや私のなす業を防げるものはない。全てが私の計画通りに運ぶだろうーー頼子のために。

P.76より

 

そんな内容の西村悠史の手記が、序盤約70ページに渡って綴られています。これが第一部。

その後、西村悠史は大量の薬を飲み倒れているところを発見されますが、すぐに病院に運ばれ、昏睡状態となりましたがなんとか命は取り止めます。

警察が捜索すると、手記にあった通り、1人の男が殺害されているのが発見されました。

 

これは、どう見ても、娘を殺された父親の、復讐劇。

本当にそうなのか。

 

手記に残された、違和感。

この手記を読んだ法月綸太郎は「おかしな点」を発見します。

「眠っていないな?」

綸太郎は自分のありさまをとくと見直して、

「そうみたいですね。この手記を読み始めたら、つい熱中してしまって」

「だが、これだけ読むのに、一晩かかったわけじゃあるまい?」

「もちろん、何回も読み返していたんです」

「ははあ」警視はパッと顔を輝かせた。「何かをかぎつけたらしいな。正真正銘の何かを」

綸太郎はうなずいた。

「事件の再調査を引き受けることにします」

P.104より

それを皮切りに、綸太郎は独自に調査を進め、仮説を立て、関係者に聞き込みをし、事件の驚くべき真相にたどり着くわけです。

もし、この傑作をまだ読まれていないのであれば、「西村悠史の手記のおかしな点」を見つけることに挑戦してみてください。

私はもう読んでしまったので、挑戦することができません。もちろん初めて読んだ時も全くわかりませんでしたが。

綸太郎に言われてはじめて「ああ、確かに、言われてみれば……」となんとなくわかった次第です。自分の探偵の才能のなさをつくづく実感します。

というか、この手記を読んでおかしな点に気がつく人ってどのくらいいるのでしょう。

最高峰のどんでん返しと、苦味。

あらすじやら手記について述べましたが、結局のところ、どんでん返しをくらいたいなら絶対読んでみて、ってことですよ。

どんでん返しがあるとわかっていてもどんでん返るので、大丈夫です。

はじめて読んだ時の驚きは今でも残っていますし、新装版を読んで改めてすごい作品だよなと思い知らされました。

 

しかも、ビックリするだけじゃないんです。

世の中には、

やられた!お見事!と声が出てしまうような気持ちの良い読後感の残るミステリー小説や

なんなんだこれは、と絶句してしまう非常に後味の悪いミステリー小説などいろいろあるのですが、

『頼子のために』は完全な後者です。

吐き気すらします。胃を直接モミモミされているような不快感を味わいます。

なので、「はー読んでよかった!」みたいな感想を抱くスッキリ小説を読みたい方にはオススメできません。

しかし、どんでん返し好き!後味悪い系も好き!という方には最高の一冊となるのです。

だが、綸太郎の目に映ったものは、ぞっとするほど荒涼とした廃墟の風景であった。彼は嘔吐感すら覚えた。それは愛と憎悪と人間の存在そのものが持つ罪に対しての畏れに他ならなかった。

P.380より

そう、これは、歪みきった愛の物語。

 

シリーズの読む順番は?

本当は、

1作目『雪密室 (講談社文庫)

2作目『誰彼 (講談社文庫)

3作目『頼子のために (講談社文庫)

4作目『一の悲劇 (ノン・ポシェット)

の流れで読むのが一番ですが、基本的にどれを読んでも楽しめます。いきなり『頼子のために』でも問題ないです。

だからさっさと『頼子のために』を読みましょう、という話です。

これを読んだらしばらくは法月綸太郎ブームになっちゃいますよ(´∀`*)

旧版との違い

新装版の最大のポイントは文字が大きくなっていることです。

少し大きくなっている程度なのですが、このわずかな違いで読みやすさが格段にアップしています。

いま旧版を読み返すと「よくこんな小さい文字を読んでたなあ」って思います。もう戻れませんね。

 

あと、法月綸太郎シリーズってなんだか堅苦しそうだなあ、と思われていたら、それは誤解です。

一度読んでいただけたらわかりますが、余裕で一気読みできちゃうほど読みやすい文章なのでご安心を。

ただ『頼子のために』に関しては、文章は読みやすいけど真相は超重いのでお気をつけください。

 

というわけで、新装版が発売となったこの機会に、ぜひ『頼子のために』を。

まぎれもなくシリーズ最高峰の傑作であることを、ここに断言しておきます。

2 Comments

アラシナオヤ

いやあ、わかっていますねえ。
僕も頼子のためには最高傑作と言っていいと思います。法月先生の作品は大好きですが、僕の中ではこれが最高峰ですかね。本格ものとしての完成度もそうですが、人間の心のなんたるかを描き出すストーリーも綸太郎シリーズの魅力ですよねー。
大好きだからこそ、新刊が早く読みたい! もうちょっと筆が早ければと、惜しまずにはいられません。

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anpo39 anpo39

ですよねえー!
私も法月さんの中でも最高の作品だと思っております。というか、国内のミステリー小説の中でも最高峰かと。
そう、ミステリ小説としてだけでなく、人間の心の描き方がとてつもなくお上手で、濃厚で、メンタルにくるんですよね。これを味わえるのも綸太郎の魅力です。
同じく、早く新刊がよみたい。濃厚でエグいやつが欲しい……( ´∀`)

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