【小市民シリーズ】米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』の魅力を存分にご紹介したい

米澤穂信さんの「小市民シリーズ」とは、高校生の小鳩常悟朗(こばとじょうごろう)とその同級生・小佐内ゆき(おさないゆき)の二人組を中心とした青春ミステリーシリーズです。

米澤穂信さんの青春ミステリーといえば『氷菓』をはじめとした「古典部シリーズ」が有名ですが、こちらの「小市民シリーズ」も忘れてはなりません。

現在までに①『春期限定いちごタルト事件』、②『夏期限定トロピカルパフェ事件』、③『秋期限定栗きんとん事件』が出版されていますので、読む順番はその通りに。

そこで、今回は第1弾の『春期限定いちごタルト事件』をご紹介しつつ「小市民シリーズ」の魅力をご紹介できればと思います。

(冬期限定、冬期限定はまだですか米澤さん!早く読みたいけど、冬季限定を読むということは小市民シリーズが終わってしまうということで、読みたいのか、読みたくないのか、複雑な気持ち。)

 

【満願】米澤穂信さんの超おすすめミステリ小説9選

2015.09.05

米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』

 

今作はプロローグ、エピローグのほか、

1.「羊の着ぐるみ」
2.「For your eyes only」
3.「おいしいココアの作り方」
4.「はらふくるるわざ」
5.「狐狼の心」

の5編からなる連作短編集です。

今回はこの中から3つのお話をちょっとだけご紹介させていただきましょう。

1.「羊の着ぐるみ」

このお話の中心となるのは「女生徒の盗まれたポシェットを探す」という事件。

友人・堂島健吾に呼び出されポシェット探しに協力していた小鳩くん。しかし、そこでさらに奇妙なことが起きます。

「電話で調べ終わったって言うからな。いまみたいに合流しようとしたんだよ。
ところがあいつ、どこで落ち合うってはっきり聞かないまま慌てて電話を切りやがる。で、言った場所に行くといない。電話がかかってきていまどこにいるかと訊けば、三階だったり四階だったり、西だったり東だったり、北棟だったり南棟だったりな。さんざん、引っぱりまわされたよ。」

P.37より引用

一緒にポシェットを探していた健吾の友人・高田が、なぜかなかなか合流しようとしないのです。

さあ、面白くなってきました。

この時点で、

①ポシェットを盗んだ犯人は誰か?
②ポシェットはどこにあるのか?
③なぜ、ポシェットは盗まれたのか?
④高田がとる奇妙な行動の理由とは?

という様々な謎が出てきますね。

そしてこのお話では③なぜ、ポシェットは盗まれたのか?④高田がとる奇妙な行動の理由とは?の二つの謎がメインとなります。

たった一つの短編の中で、ミステリでいう『ホワイダニット(なぜ、そんなことをしたのか)』が二つも楽しめちゃうという贅沢さ。

推理の組み立てもしっかりしていて「なるほど!」となる。日常で起きるささいな謎をこんなにも面白く書いてしまうのが米澤さんのすごいところです。

2.「For your eyes only」

またもや友人・堂島健吾に呼び出された小鳩くん。

今回は、美術室にある「絵」についての謎。

それは、まあ確かに、絵だった。文字でも記号でもないから、絵と呼ぶしかないだろう。

全面、パステルカラーで覆い尽くされている。描かれているのは穏やかな田園風景、太陽が燦々と輝き広がる野原の向こうには山並みが見え、画面の中央を親子連れの馬が駆けていた。

P.77より引用

絵の具で何重にも厚く塗られ、色の強弱もまったくない。

一般の人から見て、お世辞にも上手いとは言えない絵。

この絵を描いたのは大浜という先輩で、もう既に卒業をして二年が経っているという。

問題は、その先輩が残した「これは、世界で一番高尚な絵」という発言。(高尚とは、上品、程度の高い、という意味。下品の逆。)

しかも絵には『三つの君に、六つの謎を』というタイトルが付いていた。

というわけでこのお話では、

絵のタイトル『三つの君に、六つの謎を』の意味とは。

先輩はなぜ、こんな絵を「これは、世界で一番高尚な絵」と言ったのか。

そして、なぜ先輩はこんな絵を描いたのか。

という謎を解決していくことになります。

こんな難解な謎を先輩に会うことなく、絵を見ただけで推理しちゃう小鳩くん。さすがです。

3.「おいしいココアの作り方」

これ、個人的に非常に好きでした。

友人・堂島健吾の家に招かれた小鳩くんと小佐内さん。

そこで二人は美味しいホットココア入れてもらい、その「おいしいココアの作り方」も教えてもらいました。

が、ここで謎が発生。

「シンクが乾いてる!」

「はあ」

「しかも、そこに置いてあるものはスプーンだけ」

P.131より引用

小鳩くんだ台所に立ち寄った際、「シンクが乾いている」という事実に気付かされたのです。しかも、使用した形跡があるのは、ココアを溶いた時に使ったスプーンだけ。

堂島健吾はシンクを濡らさず、つまり鍋などの道具を使わず、熱々のココア2杯をどうやって作ったのか?というのが今回のメインとなる謎です。

ミステリで言う『ハウダニット(どうやって犯行を行ったか?)』ですね。

一見簡単なようですが、健吾の「おいしいココアの作り方」は特殊なやり方なので、普通に考えるとどうやっても他に道具が必要になってしまう。

果たして、小鳩くんの推理は……。

日常の謎とあなどるなかれ。

今回ご紹介したように「小市民シリーズ」は、

なぜ友人は奇妙な行動をとるのか?
なぜこんな絵を描いたのか?
どうやって、シンクを濡らさずココアを入れたのか?

などのように、日常に潜む本当にささいな謎が繰り広げられていきます。殺人事件なんて程遠いです。

基本的に殺人事件が起きるミステリが好きな私としては、このような日常の謎には物足りなさを感じてもおかしくない。

しかし、面白い。全くと言っていいほど物足りなさを感じないんです。

これは「古典部シリーズ」にも言えることですが、米澤さんの「日常の謎」にはグイグイ読ませる特別な面白さがありますね。

こんなささいな謎なのに、推理の過程が実にしっかりしていて「おお、なるほどね」と言わされてしまうのです。うーん、すごい。

必ず続編も読みたくなーる

最初にも述べましたが、小市民シリーズは『春期限定いちごタルト事件』を始め、②『夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)』、③『秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)』と続きます。

ぜひ読んでください、と言わなくても、第1弾の『春期限定いちごタルト事件』を読めば絶対に続編を読みたくなります。

なぜなら「謎や推理が面白い」「物語が面白い」ということはもちろん、「小鳩常悟朗と小佐内ゆきの不思議な魅力」が凄まじいからです。

これはいくら私が説明しても伝えることができないものなのですが、実際に読んでいただければすぐに二人の魅力をわかっていただけるでしょう。

 

ちなみに漫画版もあります。

夏期限定 トロピカルパフェ事件 (前) (Gファンタジーコミックス)

これは第2弾の『夏期限定トロピカルパフェ事件』の表紙。小佐内さんが可愛すぎます。

原作を読んだらほぼ間違いなく漫画版も読みたくなっちゃいますよん(´∀`*)

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