辻村深月『スロウハイツの神様』は何度読んでも最高に大好きだという話

突然ですが、みなさんは「何度も読んでしまうほど大好きな小説」ってありますか?

日々小説を読んでると、ただ面白いとはまた別の、特別に大好きな作品に出会ったりするものです。

私はそんな「何度も読んでしまうほど大好きな小説」って何作かあるのですが、その一つが辻村深月さんの『スロウハイツの神様』です。

おそらく、これまで私が読んできた数ある小説の中でもトップ10に入るくらい好きな作品です。

 

今回はそんな辻村深月さんの『スロウハイツの神様』という作品を少しでも知っていただけたらと思い、ここにご紹介させていただきます。

ご紹介というより言いたいことを言うだけという感じがしますが、ご参考にしていただければ幸いです(´∀`∩

 

【10作品】まず読むべき辻村深月さんのおすすめ小説と順番

2015.09.13

辻村深月『スロウハイツの神様』

 

今作の舞台となるのは、人気脚本家・赤羽環(あかばね たまき)がオーナーを務める3階建アパート「スロウハイツ」。

ここに住むのは、中高生に大人気の作家・チヨダ・コーキ、そして漫画家や映画監督を目指すクリエイターの卵たち。

夢に向かって奮闘しながら、若き青春を過ごしていく彼ら。

しかし、新たに入居してきた加々美莉々亜(かがみりりあ)の存在。

そしてスロウハイツに送られてきた一通の郵便によって物語は大きく動き出していく。

人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだ―あの事件から十年。アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。

上巻はほんの序章。下巻から物語は加速する。

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というように『スロウハイツの神様』は、アパート「スロウハイツ」を舞台に若者たちが繰り広げる青春ミステリとなっています。

そして「上巻」と「下巻」からなる物語です。

上巻では、アパート「スロウハイツ」に住む登場人物たちがどんな人たちなのか、なぜこの「スロウハイツ」に住むことになったのか、などが丁寧に語られていきます。

先ほど述べたミステリ要素「スロウハイツに送られてきた一通の郵便」というのも上巻の最後の最後です。

というわけでこの上巻ではミステリー要素はほぼありません。

なので本格ミステリー小説を期待していると飽きてしまうかもしれません。

しかし、下巻に入ると一気にスピード感が増します。

特に上巻で散りばめられた伏線を、そして謎を一気に回収していく下巻の後半は一気読みすることになるでしょう。

「アレはこういう事だったのか」と。

そして伏線回収に圧倒されるとともに、登場人物たちが大好きになります。上巻を読んだだけでも好きだったのに、下巻を読み終わったらもっと好きになるのです。

愛すべきキャラクターたち。

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「登場人物のキャラが良い」

というのは、良い小説には欠かせない要素の一つでしょう。

そしてこの『スロウハイツの神様』に登場する人物は、いえ、「スロウハイツ」に住む人々は「キャラが良い」なんて安っぽい言葉では表せないほどに愛くるしい人物なのです。

スロウハイツのオーナーであり、人気脚本家の赤羽環(あかばね たまき)。

中高生に大人気の小説家・千代田公輝(チヨダ・コーキ)。

仕事に全力を注ぎ、チヨダ・コーキの相棒とも言える敏腕編集者・黒木智志(くろき さとし)。

漫画家を目指し奮闘している、狩野壮太(かのう そうた)。

制作会社で働きながら映画監督を目指す、長野正義(ながの まさよし)。

正義の彼女であり、料理が得意な絵描きさん・森永すみれ(もりなが すみれ)。

環の親友でありながら、環に強いライバル心を抱きスロウハイツを出て行った、円屋伸一(えんや しんいち)。

 

私は、彼らがみんな大好きなのです。

みんなですよ、みんな。1つの作品でこんなに多くの人物を好きになることってあります?

皆それぞれに強い部分があり、弱い部分もあり、人間らしくて、優しくて。

そして彼らのお互いがお互いを思い合う関係性が素晴らしいんです。

私がいくら口で説明しようと伝わらないと思いますが、一つの作品でこれほどまでに好きになった登場人物というのはこれまでの読書経験の中でもあまりいません。

彼らに出会えて本当に良かった、と心から思えるんです。

いい声だ、と狩野はいつも思う。出会ってすぐの頃一度、マーロン・ブランドみたいだと言うと、公輝は困ったように随分照れた後、苦笑して「観たことないんです。だけどありがとう」と答えた。

そのすぐ後、夜中二〇二号室の前を通った時、中から『ゴッドファーザー』のあの有名なテーマ曲が微かに聞こえてきたことがあって、狩野はその瞬間から、公輝を憧れの作家ではなく、生身の友人として好きになった。

『スロウハイツの神様(上)』 P.59.P60より引用

(この部分で、登場人物の狩野と同じく私も公輝が好きになってしまった。)

ミステリー小説?青春小説?

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この『スロウハイツの神様』は「青春ミステリー」に属するジャンルですが、私はこの作品を「最高の青春小説」だと思っています。

つまりは「ミステリー小説」を読みたいと思って読むのではなく、純粋に「面白い小説を読みたい」という方におすすめしたい作品なのです。

この作品を「ミステリー小説」として読んでしまうと、きっと「予想が的中してしまった」「先が読めてしまい残念」などの声が挙がることでしょう。

確かにこれは「ミステリー小説で驚愕したい」という方にとっては残念なことかもしれません。

確かに私自身、この作品の中で予想当たった部分が何箇所かあります。

騙された!ということが好きな普段の私であれば、予想が当たってしまったというのは残念なはずです。

しかし、この作品を読んでいて思った「私の予想」というのは「こうあってほしい」という希望であり、その「こうあってほしい」という希望通りに物語がなってくれたことに最高に感動したのです。

そう、今作『スロウハイツの神様』は意外性を狙った、言わばただビックリさせられることを楽しむという作品ではないのです。

「ああ、読んでよかった」と「この作品に、彼らに出会えてよかった」と思わせてくれる作品なのです。

おわりに

私は下巻の後半、特に最終章でボロボロ泣いてしまったのですが、この涙は本当に気持ちの良い涙でした。

感動小説に良くある「大切な人が亡くなった」というような「悲しい涙」ではなく、「優しさと暖かさ」に包まれた心震える涙でした。

なぜ泣いてしまったかというと、やはり「物語」に加え「登場人物」が良かったからに違いありません。

『スロウハイツの神様』という作品を、私はこの先も間違いなく何回も読み直してしまうことでしょう。

このような作品に出会えたことに、そして著者の辻村深月さんにただただ感謝です。

【10作品】まず読むべき辻村深月さんのおすすめ小説と順番

 

 

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10 件のコメント

  • こんにちは!私も「スロウハイツの神様」大好きです!辻村さんの作品の中でも一番です。確かにミステリーではなく、ストーリーを楽しむ本ですよねー。途中までは長く少し辛いですが、終盤の伏線回収が見事で、圧倒的すぎてポカーン(゜ロ゜)となったのを覚えています。確かに、ストーリーの真相が分かっても何度も何度も読み返したくなる本ですね(笑)

    • りかさんこんにちはー(●>ω<)っ 「スロウハイツの神様」良いですよね!そうなんです。ミステリーというよりストーリーが本当に好きで。 終盤の展開も好きすぎます。前半の無駄に長いと思えたストーリーにも全て意味があったんだ!となる感じが最高です。 再読する度にまた違った面白さがあって・・・何度読んでも楽しめちゃいます(●´w`○)

  • 初めまして。社会人になってから本を読み始めた新参者です。辻村深月さんの作品は、まだ「冷たい校舎の時は止まる」しか読んだことがないので、今度手にとって読んでみたいと思います。ちなみに私が何度も読み返している小説は、原田マハさんの「楽園のカンヴァス」と東野圭吾さんの「ナミヤ雑貨店の奇蹟」です。

    • リョウさん初めまして(*´∀`)
      「冷たい校舎の時は止まる」も好きです!『スロウハイツの神様』も気に入っていただければ嬉しいです〜。
      「楽園のカンヴァス」も「ナミヤ雑貨店の奇蹟」も良いですねー!何度も読み返したくなる分かります(*´ェ`*)
      特にナミヤ雑貨好きだなあ。。

  • 以前別記事でオススメされていて、ちょうど先日読み終えたところだったので「なんてタイムリーなんだ!」とつい嬉しくなっちゃいました!(笑)
    読み終えた結果…私も好きな本のひとつになりました。
    おっしゃっている通り、登場人物が魅力的。
    私は狩野とコウちゃんが好きです。
    特にコウちゃんなんて、実生活ではあまり近寄らないんじゃないかな…と思う第一印象なのに、読み進めるとスゴくイイ奴だな、と思えます。
    最初はミステリーなのかな、と思っていましたが、実は別物。
    けどこれはこれで面白かった!
    いつもと違った内容の本が読めて楽しかったです(*^^*)

    • pomさん!(o´∀`o)ノ
      それはグッドタイミングですね!
      本当ですかー!好きになっていただけてなんか私も嬉しいです笑
      狩野とコウちゃん良いですよね。
      特にコウちゃんは、この作品を読んで好きにならない人いるの?って感じです。最高すぎますよコウちゃん。あの不器用な感じがまたたまりません。
      ミステリーとか関係なしに良い作品ですもんね。私も読んでよかったー!と強く思いました(●´ω`)

  • 私も初めましてです。
    こちらのブログ大好きで
    いつも手に取る本の参考にさせてもらってます。
    私の繰り返し読む本は
    宮部みゆきの『火車』と松本清張の『砂の器』です。
    社会派ミステリーが好きですね(^.^)

    • ナツメグさんはじめまして!
      嬉しいお言葉ありがとうございます(ノД`)
      『火車』と『砂の器』ですか!凄いですね!私もどちらも好きな作品ですが、読み応えがありすぎて再読をためらいがちです 笑。
      社会派ミステリも良いですよね。今度は社会派ミステリ特集をしてみようかな・・ (っ´ω`)

  • コメントしてから1ヶ月以上経ちましたが、先ほどスロウハイツ上下巻読み終わりました。
    思ってた以上に心に残る良い作品でした…。私は個人的に一番黒木さんが好きですね。あのGAPはやられます…特に花火のシーンなんて最高です♪
    素晴らしい小説を教えて頂きありがとうございましたm(__)m

    • お久しぶりですリョウさん(´∀`*)
      お気にめしていただけたようで私も嬉しいです!本当に心に残りますよね。。
      黒木さん!いいですよね〜。ほんとギャップが最高です、というかあれはズルいですよね、好きになるに決まってます笑。
      こちらこそコメントを頂けて嬉しいです!ありがとうございました☆

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    anpo39

    年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。休日は引きこもって本ばっかり読んでいるので、人との交流があまりありません。仲良くしていただけたら嬉しいです(*≧д≦)