『屍人荘の殺人』-第27回鮎川哲也賞受賞作の新感覚クローズドサークルが凄いので読んでほしい

第27回鮎川哲也賞受賞作、今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』が発売されましたね。

前々からとても楽しみにしておりました。

第26回の『ジェリーフィッシュは凍らない』が非常に好みでしたので、自然とハードルが上がっていた今回。

 

結論から言えば、とっても面白かった!!!

予想を超えて、驚きの連続でした。

いやあ、そうくるか。やられた。

 

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今村昌弘『屍人荘の殺人』

 

神紅大学ミステリ愛好会の会長・明智恭介(あけちきょうすけ)とその助手・葉村譲(はむらゆずる)は、同じ大学の名探偵少女・剣崎比留子の協力を得て、怪しげな映画研究部の夏合宿に加わることになる。

訪れたのは『紫湛荘(しじんそう)』。

映画研究部や演劇部の面々を集め、ワイワイとやっていた合宿一日目の夜。

彼らは肝試しの最中に「まさかの出来事」に遭遇。「紫湛荘」に立て籠もりを余儀なくされる。

そして、そんな「まさかの出来事」が起こるなか、部員の一人が密室で惨殺死体となって発見された。


ふむふむ。

学生ホームズとワトソン役の語り手。

そして美女探偵の登場。

学生たちが集まる夏合宿。

ペンションの見取り図。

密室殺人にクローズドサークル。

……お決まりの展開ですね。

鮎川哲也さんの『リラ荘殺人事件 (角川文庫)』を思わせる、これでもか!と言わんばかりの王道設定。『金田一少年の事件簿』や『学生アリスシリーズ』のようでした。

タイプの異なる二人の探偵役が推理合戦を始めて、ワトソン役の主人公がてんてこ舞いになる。

そんな状況になるのが一目瞭然です。

 

登場人物がわかりやすい親切設計。

登場人物が多いと、「あれ、この人ってどんな人物だっけ?」ってなり、最初のページの登場人物一覧を確認する、みたいな事がありがちじゃないですか(私はよくある)。

今作も登場人物が多いので「大変だなー」なんて思っていたら、まさかの親切設計でびっくり。

 

ミステリ愛好会の会長は「明智恭介」なんていかにも探偵役っぽい名前だし、

映画研究部の部長は「進藤歩」という真面目で几帳面っぽい名前。

演劇部の「星川麗花」はアイドルのような顔立ちの美人。名前もアイドルっぽい。

背が高くて凛とした雰囲気のボーイッシュな女の子・「高木凛」。

物静かで大人しい感じの「静原美冬」。

小太りでオタクっぽい「重元充」。

管理人の「菅野唯人」はそのまんま。

サーファーっぽい外見の「立浪波流也」、ギョロ目の「出目飛雄」。

などなど、とにかく名前と外見がぴったりなんです。

名前を見ただけで「ああ、あの人か」と、すぐに見た目が頭に思い浮かぶ。

「それにしても参加者は興味深い人ばかりだね。葉村君はもう全員の名前を覚えた?」

「たぶん。名字だけなら」

自信はあまりない。一日で十一人という数は俺にとって多すぎる。ミステリを読む時も登場人物の名前を忘れ、しょっちゅう冒頭の人物名一覧を確認する羽目になる。

「そう?私は覚えやすい名前が集まったと思ったけど」

P.75より

おっしゃる通りでございます。

これが実際、かなりありがたい(ノω`*)

 

ネタバレ注意!まさかの出来事によってクローズドサークルへ。

 

さて、あらすじでも述べたように、彼らは肝試しの最中「まさかの出来事」に巻き込まれ、紫湛荘に立てこもり、クローズドサークルが完成してしまうことになります。

そして立てこもった紫湛荘で、さらに密室殺人が起きるわけですが、この「まさかの出来事」というのが今作の最大の見ものなわけですよ。

〈なぜ、彼らは紫湛荘に籠城することになったのか。〉

で、正直言うと、このクローズドサークルになった理由を知らない状態で読んだ方が、きっと楽しめると思うんですよね。

学生アリス『月光ゲーム』では火山の噴火でクローズドサークルになりましたが……。

 

というわけで、ここから「クローズドサークルになった理由」をネタバレしながらお話ししますので、知りたくない方は見ないことをおすすめします。

知ってしまったからといって作品の面白さが下がるわけではありませんが、作品を読んで初めて知る「えええ!そんな状況になるの!!!」という楽しみが減ってしまう可能性があるので、一応忠告させていただきます。

「え?!こんな展開になるの?!」と予備知識なしで驚きたい方は、ここから先は読まないほうが良いかと思います。

もちろん犯人やトリックのネタバレはしませんが、「クローズドサークルになってしまった理由」「どんな状況で殺人事件が起きるか」のネタバレはします。

よろしいですか?

 

 

 

 

 

 

……ありがとうございます。

ここから、「クローズドサークルになってしまった理由」をネタバレしますね。

 

 

さて、この『屍人荘の殺人』。

どんな状況で殺人事件が起き、なぜクローズドサークルになってしまうかというと、「ゾンビ」が原因です。

バイオテロによってゾンビが大量発生し、別荘が囲まれてしまうのです。脱走はできず、電話も繋がらない。

 

本格ミステリ読んでいたはずだったのに、まさかのゾンビ!Σ(゚ロ゚;)

 

いえ、確かにゾンビがいる世界でのミステリは何度も読んだ事があるんですよ。山口雅也さんの『生ける屍の死 (創元推理文庫)』や、小林泰三さんの『わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』とか。

でも、それは、事前に「ゾンビがいる世界でのミステリ」だと知っていたわけで。

で、今回の『屍人荘の殺人』は、完全に超ド直球の本格王道ミステリだと思い込んで読み始めたわけで。

『金田一少年の事件簿』や『学生アリスシリーズ』を読んでいて、いきなりゾンビが大量発生してきたら誰だって驚くでしょう。

解説で北村薫さんが、

ありきたりの学生の夏合宿ものかと思って読み進めて行くと、目を疑う展開が待っています。野球の試合を観に行ったら、いきなり闘牛になるようなものです。それで驚かない人がいますか?

P.312より

と述べていますが、ほんとその通りです。

 

この状況下だからこそ、の殺人。

まさかのゾンビ集団によって「紫湛荘」に立てこもることになった主人公たちですが、さらに密室殺人にも巻き込まれてしまいます。

ゾンビ集団に囲まれるということは犯人ですら予想外だった出来事であるのに、犯人はわざわざ、この混乱した状況の中で密室殺人を完成させた。

というわけで、犯人はなぜ、こんな状況の中で犯行に及んだのか?という謎にも注目する必要が出てきます。

 

その点、第二の殺人で浮かんだ「なぜエレベーターを使ったトリックに固執したのか?」という謎への回答が素晴らしかった。

この状況下でしかできない殺害方法にして、思わず「なるほどな」と納得してしまう殺害理由です。

これはもう、他の作品ではまずお目にかかる事ができないですね。

第一の密室殺人も魅力的でしたが、私はやはり、この第二のエレベーターでの殺人が大好きです。これはぜひ目にしていただきたい。

 

終盤、容疑者を一人づつ犯人から除外していき、ロジカルな推理によって最後に残った犯人を突き詰める過程はまさに本格そのもの。

初めて読んだ後、またすぐに読み直したのですが、こんな状況下ならではの伏線の敷き方、回収も丁寧でした。

まさかの展開に最初は驚きましたが、ゾンビ襲来によるホラーサスペンス要素と本格ミステリを見事にマッチさせた秀作でしょう。

何度も言いますけど、この状況下でしかできない殺人なのですから。

おわりに

前回(第26回)の『ジェリーフィッシュは凍らない』も好きですが、今回の『屍人荘の殺人』もかなり好みの作品でした。

鮎川哲也賞、良い作品が続いていますね。嬉しい(*´∀`*)

 

ところで、これはシリーズ化するのでしょうか。

美少女名探偵・剣崎比留子というキャラクターの魅力は十分ですし、これからの活躍をもっと見ていきたいですね。

シリーズ化することを強く祈っております。

そして誰も・・市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』は必読のミステリでした

2016.10.15
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6 件のコメント

  • 実際に読んだ感想として、第一に面白すぎると。そして第二に、このブログで100パーセント紹介されるだろうなと。こういう単純に面白い作品が、やっぱり一番嬉しいですよね。サプライズに驚きっぱなしで、新本格派の作品を読んだもきみたいに、こういうのがやりたかったんだなとニヤニヤできるような楽しい作品でした。ネタバレは控えますが、こういうクローズドサークルも斬新で面白いですね。あと、作中で所々〇シリーズや某海外ミステリ作家の名前が出てくるなど、ミステリ愛が感じられるのが嬉しかったですね。シリーズで他の作品が出るとしたら、是非とも追いかけていきたいですね。それにしても鮎川賞作品の面白さはすごい! 来年再来年もと期待してしまいます。

    • いやあ、やはり読まれていましたか。私も、アラシナオヤさんなら100パーセント読んでいるだろうと思っておりました笑。
      そうなんですよ、結局、コレなんですよ。ミステリ愛の詰まった、ミステリ好きだからこそ楽しい作品なんですよね。
      クローズドサークルは特殊ですが、しっかりと本格なところが最高です。
      そうそう、そういうところ、作者さんのミステリ愛ですよね。お馴染みの名前が出てくると、やはり楽しいものです。
      ぜひシリーズ化してほしいんですけどね、これ以上のインパクトを出すのも難しいですよね、笑。どうなんでしょう。
      本当に、鮎川賞は素晴らしい作品が多いです。毎年楽しみだあ(´∀`*)

  • うは、鮎川哲也賞、りら荘、学生アリス、クローズドサークル、好きな言葉しか出てこない記事・・・。
    はいはい買いますよ買えば良いんでしょう。
    一昨日買い溜めしたばかりなのに勘弁して下さいよ!(嬉しい悲鳴)
    「張込み」だってまだ袋から出してないのに。
    とりあえず「北極点のピアピア動画」と「消えたタンカー」読んだら読みます。

    • 笑。
      ぜひ、買っちゃってください。笑
      私たちにとって、このパターンの作品は読まずにはいられませんよね。。
      お、『張込み』買われたのですね。ありがとうございます。ふふふ。
      しかも、ピアピア動画とは、また良いチョイスですね( *´艸`)

  • 初めてコメントさせて頂きます。
    いつもブログを楽しく拝見させて頂いています。
    初めてこちらのブログを拝見した時にはanpo39さんと趣味が合うなぁと。ミステリ好きのブログは沢山あるでしょうが、実話怪談系の本もカバーされているので嬉しくなりました!
    こちらのブログで知った郷内心瞳さんは面白くてシリーズを全て買って夢中で読みました。

    屍人荘の殺人は、私は普段文庫が出るまで待つ人間なのですが、紹介を見てから(ネタバレ前までですが)「これは面白そう!今すぐ読みたい!」ってなって珍しくハードカバーで買いました。
    結果は買って正解でした!本格推理と思って読んでいたら突然別の世界に連れて行かれて、でもちゃんと本格推理物。やっぱり、ミステリは魅力的な謎がなくては!そして鮮やかな探偵の推理!
    作中で色々な作品が出てくるのも楽しかった。個人的に「武器屋」が出てきた所は驚かされました!中学時代友達に借りて読んだ記憶が蘇りました。
    アレが社会性などを投影しているんだって言う事も「そうなんだよ!」ってw
    剣崎比留子さんにまた会いたいのでシリーズ化されると良いですね!

    読むのが遅いので自分が気になる本を全て読む事は出来ないですがanpo39さんのブログを参考に色々読んでいこうと思ってます。

    長々と稚拙な文章で失礼しました(^^;;

    次は「二階の王」「死刑にいたる病」どちらを読もうかなw

    • bulltonさんこんばんは!
      いつも見ていただけているとのことで、ありがとうございます(´∀`*)
      bulltonさんも実話怪談系がお好きなのですね!嬉しい!
      しかも郷内心瞳さんの作品も読んでいただけたなんて!郷内さんのシリーズは本当に面白いですよね。実話怪談系の書籍は結構読んでいるつもりなのですが、郷内シリーズほどのものはなかなか出会えないです。初めて『花嫁の家』を読んだ時は衝撃でしたよ……。
      そして屍人荘の殺人も読んでいただけたということで、嬉しい限りでございます。ご紹介してよかった。。
      そんなんです、まさかあんな展開に持っていかれるとは思ってもみなくて驚いたのですが、実はちゃんとした本格モノ。最高でした。ハードカバーはちょっとお高いですが、表紙絵もタイトルも素敵だし、手元に置いておきたい一冊です。
      いやー本当に、私もシリーズ化希望です。キャラクターをしっかり作られているので、シリーズ化しそうな気もするのですが。。
      はい!ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです!そしてコメントありがとうございました。
      もう完全にbulltonさんとは趣味が合うと思っています(ノ∀`)
      「二階の王」「死刑にいたる病」、ぜひどちらも読んじゃってください。笑

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