『奥の部屋:ロバート・エイクマン短篇集』-怪奇小説の巨匠が描く、世にも奇怪な物語

怪奇小説の巨匠・エイクマン。

解説によれば、エイクマンは自らの作品を「ストレインジ・ストーリー」と呼ぶことを好んでいるそう(奇妙な、怪しげな、変な、のような物語)。

読んでみればなるほど。

確かに奇妙であり、怪しげ。そして何より怖い。

なにが怖いのか説明しにくいのですが、じわじわと忍び寄る気味の悪さ、現実から少しずつ非現実に連れて行かれる感じがたまらないのです。

そんなエイクマンの選りすぐりの短編が収められた『奥の部屋』は、奇妙な物語や怪奇小説がお好きな方にとっては最高の一冊となるでしょう。

 

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『奥の部屋』

 

主人公の女性・レーネは、子供の頃に「人形の家」を買ってもらう。

家族で外出していたのですが、途中で車が故障。仕方なく車を置いて街を歩いている時、奇妙な「よろず屋」のような店でこの人形の家を発見したのです。

一目見て気に入ってしまったレーネは、家に帰ってから人形の家をひたすら調べて回りました。

すると、奇妙なことに気がついたのです。

①普通に売っている人形の家とは違って、家を持ち上げて中を見ることができない。中を調べるためには、窓から中を除くしかない。

②中にはいくつもの部屋があり、とても精巧な作りをしている。しかし、中にいる人形の顔を見ることができない。全ての人形がこちらに背を向けている。

③買う前には、確か一体だけ窓から外を覗いていた人形があったはずなのですが、今は見当たらない。

さらには夢にまで人形の家が出てくるようになり、レーネはだんだん気味が悪くなってきます。

また、勉強のできる弟が人形の家を調べたところ、もう一つ奇妙なことを発見。

「合う合わないっていうか、もちろん実際に定規で測ったわけじゃないけど、それはできないからね。でも、この方法だとうまく測れるはずなんだけど、一階にどうしても辻褄の合わない部分があるんだ。たぶん隠し部屋か何かじゃないかな」

P.303より

一階に隠し部屋がある?

 

……その後いろいろなことがあり、人形の家はレーネの記憶から忘れ去られていった。

 

やがて時はたち、大人になったレーネは、旅の途中で道に迷ってしまう。

道なき道を歩き、やがてレーネの目の前に現れたのは、どこか見覚えのある、あの家だった。


怪しげな店で売っていた、中を覗くことができない人形の家。

一階に隠された、秘密の部屋とは。

 

なんという不気味で、奇妙なお話なのでしょう!

このお話に限らず、エイクマンの作品は読後にモヤモヤした何かが残るものが多いです。

はっきりとしたオチが描かれていないんですね。

非常にスッキリしない後味かもしれませんが、そこがエイクマンの作品の良いところ。

このあとはどうなったんだろう?と想像するのがとっても楽しいんです!

 

もちろん表題作以外も面白い短編ばかり。

 

『学友』

かつて同級生だったサリーが、亡くなった父親の家に移りんできた。その頃から、なんだかサリーの様子がおかしくなっていき……。

エイクマンらしい奇妙な物語。

『待合室』

電車で寝過ごしてしまい、始発まで駅の待合室で一夜を過ごすことになった男性。

駅員は「俺は責任を持たないぞ」なんて奇妙なことをいう。

はたして、そこで男性が見たものは……。

エイクマンの中でもなかなか王道なホラー。シンプルで良し。

『髪を束ねて』

婚約者の実家に挨拶に言った女性が、その地で奇妙な出来事に遭遇する。

めちゃくちゃ気持ち悪い。グロい、とかそんなものではなくて、異様な世界を覗いてしまったような。

あの迷路なんて想像するだけでぞわぞわする。田舎こわい。

『何と冷たい小さな君の手よ』

始まりは謎の無言電話。そこでかつての恋人に電話したことをきっかけに、姿の見えない謎の女性との電話に夢中になってしまう男性のお話。

これも王道ホラー。シンプルに怖い物語。オチも綺麗につけています。


このほか、『スタア来臨』『恍惚』という絶品な二作品を加えた計七編が収録。

奇妙な物語が好き、怪奇小説が好き、という方はぜひ一読を。

いつまでたってもイヤな後味が残る、ネットリした気持ちの悪さ、わけがわからない怖さ、というものをしかと味わってみてください。

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