笠井潔『オイディプス症候群』-孤島に館にクローズドサークルって最高だよね!

『オイディプス症候群』とは笠井潔(かさいきよし)さんによる〈矢吹駆シリーズ〉の五作目。

シリーズの中でもわたしが特に好きな作品です(シリーズはどれも面白いです)。

なぜなら、孤島を舞台にしたクローズドサークルものだから。ただそれだけです!!

ってなわけで、個人的にイチオシの『オイディプス症候群』がどんな作品かちょっとご紹介させてくださいな(* >ω<)

 

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『オイディプス症候群』

 

主要人物はナディア・モガールという女子大生、と探偵役の矢吹駆。

彼女たちは、奇病に冒された学者・フランソワに、ウイルス研究に関係する書類をマドック博士に届けてほしい、と頼みごとをされます。「本当は私が行きたいんだけど、ウイルス感染しちゃって行けないから代わりにお願い!」みたいな。

しかし行き先はアテネ、の予定だったのですが、なぜか博士はクレタ島南岸に浮かぶ孤島「牛首島(ミノタウルス島)」に行ってしまったというのです。

というわけで急遽ナディアも牛首島へと向かいます。

孤島に招待された客たち

話を聞くと、牛首島には豪邸〈ダイダロス館〉があると言います。

しかも島の地下にはミノタウルスの迷宮が埋もれているという噂もあるのだそう。しかし発掘調査を行った人々は、次々に不審な死を遂げているというのです。

なんて面白そうな牛首島!

さらに話を聞くと、ナディア以外にも牛首島に行く人たちがいるそうで、彼らは「招待状が送られてきた」と言います。

「招待状には、どんなふうに書かれていたの」

「十月三十一日の午前九時に、スファキオンの埠頭で待つようにと。島まで運んでくれる船がその時刻に出るらしい。われわれは指定日の前日に村に着いて、こうして時間を潰しているところさ。ところで、きみは思い出さないかい。似たような設定ではじまる探偵小説のことを。僕とダグラス氏の二人では、孤島に潜む殺人鬼の餌食としては、どうにも数が少なすぎる。殺人リストに記載されている屍体の候補者は、原作に忠実に十人ではないとしても、もう少し多いに違いない。というわけで、きみの同行者も牛首島に招待された仲間ではないかと……」

P.158より引用

 

謎の招待状によって孤島に集められる人物たち。

そこに佇むは奇妙な館。

(ちらっ)

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

どどーん!!

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

キター!!(ノ∀≦。)ノ

『そして誰もいなくなった』をめっちゃ意識してますやん!

これだけで私は好きになってしまいます。ありがとう。ありがとう。

 

しかも。

コンスタンは予定外の来客だから十一人だ。いや、飛び込みという点ではわたしも同じだろう。本来の招待客は八人になる。管理人夫婦を加えて十人。主催者のブルームを数えると、今夜は十一人の男女がミノタウルス島に泊まる予定だった。作家のデリンジャーが冗談で口にした、英国の探偵小説のことがどうしても頭に浮かんでしまう。この小説では、舞台の孤島に召使の夫婦を入れて十人が集められるのだ。十人とも同様の歌詞をなぞるように次々と殺されてしまう。

P.293より引用

10人以上集まっちゃったよ。

これで殺人が起きない方がおかしいよ。

「普通」ではない本格派

さて、館に集められた客たちは、当然のように殺人事件に巻き込まれます。

しかも外は嵐で脱出が不可能。クローズドサークルです。

いかにもなザ・本格ミステリのように見えますが、これは笠井潔さんの「矢吹駆シリーズ」です。そう簡単にはいきません。

このシリーズは哲学・思想、ギリシア神話などを大いに取り入れているのが特徴であり、今作でもそれは存分に表現されています。「人が人を殺すのはなぜいけないのか」とか語られますからね。

なのでこれだけの本格要素が揃っておきながら、『そして誰も』や『十角館』のような、シンプルな本格ミステリとは違います。

慣れていないと「読みにくい」と思われるでしょうし、言っていることを理解しようとして混乱してきます。上巻を読むだけでも超疲れます。

これをどう捉えるかで楽しみ方が変わってきますね。

シンプルにミステリを楽しみたい方にとっては、存分に語られる薀蓄は「邪魔」に思えるかもしれません。

でも、登場人物たちが交わす薀蓄に溢れた議論こそが〈矢吹駆シリーズ〉の特徴であり魅力ですので、見逃すわけにはいきません。

どうしてもクセは目立ちますが、〈笠井潔さんのクローズド・サークル〉というものを目にするだけでも価値があるでしょう。

読む順番は?

確かにいきなり『オイディプス症候群』を読んでも楽しめます。

ですがこれは〈矢吹駆シリーズ〉の五作目。

一作目から順番に読んだ方が、シリーズものの醍醐味というものを楽しめます。

順番は、

1.『バイバイ、エンジェル (創元推理文庫)
2.『サマー・アポカリプス (創元推理文庫)
3.『薔薇の女―ベランジュ家殺人事件 (創元推理文庫)
4.『哲学者の密室 (創元推理文庫)
5.『オイディプス症候群』

となるわけですが、安心してください。全部面白いです。ほんとに。

今回『オイディプス症候群』をご紹介したのは、今作だけが特別面白いというわけではなく、わたしが単純に好きな設定だからです。ええ。

確かにクセはありますが、とにもかくにも矢吹駆シリーズは名作ぞろいですので、まず一作読んでみることをオススメしますよん(* >ω<)

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2 件のコメント

  • 「バイバイ、エンジェル」を読んで興奮したのが懐かしいです。
    ミステリとしても最高ですし、哲学の部分もまた非常に面白かったです。
    僕は夢中になって読みましたが、確かに苦手な人にとっては読みにくそうですよね笑
    ところで、他の矢吹駆シリーズが一向に書店で見つかりません。
    古本でも見つからないのは誰も手放さないからか、そろそろ僕もネット社会に屈伏しなければならないのでしょうか・・・。

    追伸
    「囲碁殺人事件」読みました。
    著者の印象からすると意外なことにまっとうなミステリでした。
    これで「涙香迷宮」に進めます!

    • わたしもバイバイ、エンジェルを初めて読んだ時は興奮しました!こんなミステリがあるのか、と驚きましたよ。
      そうなんですよねー。わたしもかなり楽しめたんですが、万人受けとはいかないのが悲しい。こんなにも面白いのに!
      言われてみれば、今は矢吹駆シリーズを見ませんね。。絶対もっと読まれるべき作品だと思うのですが。確かにネットなら一発で手に入りますよね。屈伏してでも読む価値アリかと思いますよ!笑
      お、囲碁殺人事件お疲れ様です!びっくりしますよね。ほんとに竹本健治さん?!ってなりますよね。これはこれで面白いから全然良いんですけど。
      ぜひ!涙香迷宮をお楽しみください!

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