『名探偵傑作短篇集 法月綸太郎篇』-シリーズ入門にぴったりなバランスの良い名作集でした

さて、『御手洗潔編』と『火村英生篇』に続き、当然のごとく『名探偵傑作短篇集 法月綸太郎篇』です。

作者と同姓同名の法月綸太郎(のりづきりんたろう)を筆頭に、その父親・法月警視や、図書館司書・沢田穂波らとともに事件を解決していく本格ミステリシリーズです。

法月さん自身がエラリー・クイーンを敬愛しており、作品に大きく影響している事で有名。

つまりロジカルな推理が思いっきり楽しめるという事です。

もっと簡単に言えば「ミステリ好きなら読みましょう」という事ですね(´∀`*)

 

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1.『過ぎにし薔薇は……』

手当たり次第に図書館の本を引っ張り出しては、表紙も開かず本の天小口だけを見て、全く関連性のない本を3冊借りていく女性。

しかも一つの図書館だけでなく、他のいくつかの図書館でも同じことを繰り返しているという。

いったい彼女はなぜそんな奇行を繰り返しているのか。


法月綸太郎の冒険 (講談社文庫)』に収録。これを一発目に持ってくるとは。完全に予想外でした。

殺人の起きない「日常の謎」に分類されるミステリですが、これは動機がなかなか重いんですよねえ。

この動機を思いつく法月さんもすごいし、なにより話の締め方が好き。思わず「ああ……」と嘆いてしまう。

ホワイダニットの名品であり、図書館の司書・沢田穂波とのやりとりも楽しい一作。

 

2.『背信の交点』

「あずさ68号」に乗っていた綸太郎たちは、前の座席に座る夫婦の様子がおかしいことに気がつく。

調べてみると、窓際に座っている夫の方が毒を飲んで亡くなっていた。

妻・晶子が漏らした、

「やっぱり、そうだったのね、あなた。あの女のしわざなのね」

P.76より

という言葉が気になった綸太郎は事件後、晶子の詳しい事情をうかがう。

すると明らかになったのは、夫が浮気をしていたというもう一人の女性の存在で……。


法月綸太郎の新冒険 (講談社文庫)』に収録。

間違いなく法月綸太郎シリーズ短編の傑作です。

松本清張『点と線』を思わせるトラベル系かと思わせておいてのあの反転

初めて読んだとき、うはー!そうくるかー!!( ゚∀゚)と一人でニヤニヤしていたのを思い出しました。

本当によくひねられた展開です。お見事というほかありません。

終わり方も絶妙。

 

3.『世界の神秘を解く男』

いろいろあって、超能力少女の真相を暴くというオカルト番組に参加することになってしまった綸太郎。

超心理学の教授や番組スタッフとともに少女の寝姿をカメラで観察し、他室でポルターガイスト現象が起こるのを待つ。

すると一階のサロン室で大きな物音が。行ってみると、教授がシャンデリアの下敷きになって亡くなっていた。

警察の見解によると、たまたま前日のサロン室のボヤの熱で、たまたまシャンデリアの吊り金具に亀裂ができ、たまたま一日過ぎてから金具が破損しシャンデリアが落下、たまたま下にいた教授に激突した、ということですが……。

そんなわけ、ないですよね。


法月綸太郎の新冒険 (講談社文庫)』に収録。

ポルターガイスト現象に、密室内でのシャンデリアの墜落。まるでカーの小説じゃないか。

P.186より

と本編でも述べらているように、まるでディクスン・カーな雰囲気が素敵な一品。

関連記事:ジョン・ディクスン・カーのおすすめ名作ミステリ10選

ま、内容は全然違うんですけどね(´∀`*)

ミステリとしてもそうですが、テレビの裏側を描いた一つの物語として面白い。

最後に綸太郎の人間性が出ていているのもグッド。カッコイイー。

 

4.『リターン・ザ・ベスト』

とあるホステスが部屋に侵入してきた男に殺害されそうになるが、結局未遂に終わる。

逮捕された男は、街で知り合った武藤浩二という人物に「交換殺人」を持ちかけられたと言う。

男はそのホステスを殺害、武藤は男の妻を殺害。一方が殺人を行っている間に、もう一方は完璧なアリバイを作っておく、というやつです。アリバイがある上に犯人と被害者に全く関連性がないため、捜査が難しいのです。

実際にその男の妻は、男が出張中の完璧なアリバイがある時に殺されていました。

さっそく武藤の部屋を捜索すると、『見知らぬ乗客』『血ぬられた報酬』『交換殺人』というまさに交換殺人を扱ったミステリの文庫本が発見される。

武藤はこのミステリを読んで交換殺人を思いついたのでは?と推理していきますが……。


最初から「この事件は交換殺人ではないか」という前提で進められていく今作。

もちろんここから二転三転していくわけで、ただの交換殺人ミステリには終わりません。よくもまあこれだけ捻ったものです。

この短編も『法月綸太郎の新冒険 (講談社文庫)』に収録されていたもの。そう考えると新冒険はほんと名作ぞろいの短編集だったんだなあ、と改めて思いますね。

法月さんの交換殺人といえば、ほかにも『キングを探せ』という長編作品がありますので、そちらもぜひ。

 

5.『都市伝説パズル』

有名な都市伝説になぞらえて一人の大学生が殺害された。

現場の壁には『電気をつけなくて命拾いしたな』という血文字が。

容疑者は、事件の寸前まで一緒に部屋で飲み会をしていたサークルメンバー6人。

犯人はなぜ、わざわざ『電気をつけなくて命拾いしたな』と書き残したのか、がキーポイント。


ザ・論理。

法月綸太郎の功績 (講談社文庫)』に収録されていたものの中で私が一番好きだった短編。収められていてよかった。

シンプルにロジックに特化した物語であり、短編との相性がよくキレがいい。

都市伝説とトリックの絡め方も見事ですし、論理的に真相へと導くあの鮮やかさよ。さすが第55回日本推理作家協会賞受賞作。

これ一遍読むだけでも購入する価値ありでしょう。

それにしても、綸太郎と法月警視の推理合戦が楽しい。仲よすぎか。

 

6.『縊心伝心』

ひとり暮らしのOLが、不倫相手の男に「これから自殺する」と予告電話をかけた。

それから1時間後に男が女のマンションに駆けつけると、彼女はロフトベッドのスチールパイプにロープを括りつけ、首をつって死んでいた。

自殺と思われたが、調べてみると本当の死因は、ワードローブの角で後頭部を打撲したことだとわかった。

さらに、室内に敷かれたホットカーペットのスイッチに不審な点が見つかる。

しかも男には完璧なアリバイ。

さて、どうする。


法月綸太郎の功績 (講談社文庫)』の中で『都市伝説パズル』に次いで好きだった短編。ありがたや!

『都市伝説パズル』と同じく安楽椅子探偵モノの名作でしょうねえ。つまり実際に現場を見ることなく、法月警視の話を聞くだけで綸太郎は真相を見抜いていくわけです。

こたつが置かれている方ではなく、暖めても意味がないソファ側を暖めるようにスイッチが入れられていたホットカーペット。

ここから綸太郎は真実を導き出すわけですが……、うまい。うますぎるよ法月さん。

ロジックも素晴らしいですが、犯人はなぜ首吊り自殺に見せかけたか、の理由がなんとも心に刺さります。

 

やっぱり法月綸太郎シリーズ入門にぴったり。

 

わかりきっていた事ですが、かなり良い短編ばかりが揃っています。

『法月綸太郎の冒険』『法月綸太郎の新冒険』『法月綸太郎の功績』の中から選りすぐった感じですね。

綸太郎&穂波コンビと、綸太郎&法月警視コンビのバランスも良いですし。

 

でもまだオススメしたい短編がある!!

 

今作に収められている短編はもちろん良いのですが、私だったら、

法月綸太郎の冒険 (講談社文庫)』の中の「死刑囚パズル(クイーン的であり、ホワイダニットの名作)」

法月綸太郎の新冒険 (講談社文庫)』から「身投げ女のブルース(初めて読んだとき吹っ飛ばされた)」

法月綸太郎の功績 (講談社文庫)』から「イコールYの悲劇(ロジカルな解決が最高)」

辺りの3編も無理やりねじ込みたいですね。ほんと面白いんです。この3編。

というわけで、今回『名探偵傑作短篇集 法月綸太郎篇』を読んで「法月綸太郎シリーズ面白いやん!」となったら、ぜひ『冒険』『新冒険』『功績』の3つの短編集も読んでいただければと思います。ふふふ。

そこから『頼子のために』『一の悲劇』『雪密室』などのシリーズ初期長編を読んで、どっぷり法月ワールドに浸ってくださいな!(*`▽´*)

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4 件のコメント

  • 締め方が工夫されてますよね。印象的な台詞だったり、そのセンスが良いところが大好きです。どの短編もすごいクオリティですよね。都市伝説パズルとかなんて、謎と解決の論理がむき出しになったみたいな短編じゃないですか。そんな物語でも読ませる力があるって素直にすごいことだと思いますね。論理は偉大ですわ。切れ味鋭い手頃な短編って、見つけると嬉しいですよね。法月さんは特に上手い人だと思います。今回収録されなかった作品も、傑作揃いだと僕も確信しています。だからこそ言いたいのですが、もっと早く執筆してくれてもいいのに…。でも、遅いのが法月先生の味なのかな(笑)

  • そう、「締め方」って本当に重要だとよくわかります。それが、この法月綸太郎シリーズは本当に好みのモノが多いです。
    それでいて都市伝説パズルなんで最高すぎますよね。なんなんですかあの論理詰め!!しかも短編でキリが良いっていうね。最高ですか。都市伝説パズルに限らず法月さんは短編のキレがすごいですよね〜。
    もっと早くたくさん読みたいがゆえの悩みですよね、笑。だからそのぶん新刊出たときに嬉しいっていうのもありますが、やっぱり早く読みたいです。笑

  • このサイトで法月作品に初めて触れました。オススメ国内ミステリーの記事でした。
    「頼子のために」「一の悲劇」「キングを探せ」「法月綸太郎の功績」「雪密室」を読みました。
    作者の暗くも暖かい親イメージ、トリックの緻密さ、作品を生み出す葛藤、どの作品も素晴らしくて大好きになりました。
    特に、「キングを探せ」の総合力が、「雪密室」の尖り具合が好きです。

    出来れば、また長編で読みたいなと思って、「生首に聞いてみろ」を読み始めたところでこの記事を見たのでコメントしました。

    • おおお、このブログをきっかけに法月を読んでいただけたとは、それほど嬉しい言葉はありません!ありがとうございます。
      いいですね、いいですね。「頼子のために」「一の悲劇」「キングを探せ」「法月綸太郎の功績」「雪密室」どれも好きです。
      法月さんは短編も長編も、それぞれの良さがあって良いですよね。
      おお、『生首に聞いてみろ』!良いチョイスですねえ。
      あとは、「雪密室」と「頼子のために」を読んでいただけたのであれば、その続編的な作品『ふたたび赤い悪夢』や、
      綸太郎シリーズではないですが、『怪盗グリフィン、絶体絶命』という作品もなかなか面白いですよん♪
      参考にしていただければ幸いです(´∀`*)

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