シリーズ最高傑作。『マツリカ・マトリョシカ』の密室と論理的推理が凄いんです

シリーズ3作目にして凄い本格ミステリを見せてくれました。 相沢沙呼さん、ありがとうございます。

間違いなくマツリカシリーズの最高傑作です。ビックリしました。

「マツリカ」シリーズとは

冴えない学校生活を送っていた柴山祐希。

彼はある日、学校近くの廃墟に住む謎の女子高生マツリカと出会う。

超ドSなマツリカは柴山のことを「柴犬」と呼びパシリ扱い。

しかし彼女は、柴山が出くわした学校の謎を次々に解明していく天才的頭脳を持っていて……。

 

という、ちょっとクセのある青春ミステリ、だったんです今までは。

1作目『マツリカ・マジョルカ』2作目『マツリカ・マハリタ』もキャラクターにクセはありますが、王道の青春ミステリ&日常の謎で、結構面白いなあ、くらいに楽しんで読んでいたんです。

そしたら3作目『マツリカ・マトリョシカ』で、すんごい密室モノをやってのけてくれました。

本格密室好きにはたまらない内容です。ほんと。

 

『マツリカ・マトリョシカ』

 

マツリカさんの命令によって学校の怪談を調査する柴山は、『開かずの扉の胡蝶さん』の怪談を耳にする。

解決されないまま時が過ぎた現在、柴山たちの目の前で開かずの扉は開かれた。

そこには、散らばる蝶の標本と、制服を着せられたトルソーが転がっていた。

現場は誰も出入りできない密室。トルソーに着せられていた制服は、人気のある女子生徒のものだった。

制服を盗まれたその女子生徒は憤慨。制服を盗んでトルソーに着せた犯人は柴山ではないかと疑われてしまう。

そこで、友人たちと真犯人を探し始める柴山。

調べていくうちに、2年前、密室となった第一美術室で女の子が襲われた事件に関係があるらしい事がわかり……。

という展開。

 

いま目の前で起きた、密室の中で制服を着せられたトルソーの謎(殺トルソー事件)を『現代密室』

2年前に起きた女子生徒が襲われた事件を『過去密室』

と呼び、この二つの密室を解決していく事になります。

 

見応えのある推理合戦の始まり

犯人はどうやって密室を作り上げ、制服を着せたトルソーを現場に残したのか。

前半から中盤までは、柴山くんと友人たちが推理を出し合う「多重推理」な場面が多く見られます。

いいですよね、学生たちが集まって、ああではないか、こうではないか、と推理合戦する様子は。

しかもその一つ一つの推理がしっかりしている。最近の高校生は凄いですね。

いつもならすぐマツリカさんに頼る柴山くんでしたが、今回はいろいろあり、自分の力で事件を解決しようと試みます。

そういった柴山くんの成長の場面が見られるのも、本作の大きな変化でしたね。

そのためマツリカさんの出番が少ないのだけれど、だからこそマツリカさんが登場した時は「おおー!!」ってなりました。

推理小説を意識した会話が好き

柴山くんの友人に高梨という人物がいるのですが、彼は推理小説が好きでして、良いキャラクターをしているんですよ。

「その、うまく言えないのですが、わたしには犯人が、ゼロから密室トリックを作り出したとは思えないんです。まったくの無から生み出せるような新しいトリックは、たぶん推理作家でも考えるのが大変なんじゃないですか?

それなら、犯人は推理小説かなにかから、密室トリックを参考にしたんじゃないかなって。だとしたら、推理小説における密室トリックを整理することで、わたしたちも答えを導き出せるんじゃないかな、とーー」

 

「確かに、それは一理あるで」高梨くんは腕を組んで、うーむと唸った。「そもそも、推理小説における密室を大きく二つに分類すると、『故意の密室』と『偶然の密室』があると思うんやけれど、それはわかるか?」

僕はみんなの表情を覗う。意外なことに、松本さんも春日さんも理解しているように思えた。なんだ。わからないのは僕だけなのか。もしかして、一般常識なの?

P.159より

 

こういう会話がいちいち好きで。

「意図的に密室を作る場合は、どんなトリックを使ったるするの?」

「これも大きく分けると二つある。物理的なトリックと、心理的なトリックの二つやね。物理的なトリックっちゅうんは、あれこれと仕掛けを工夫して、実際に鍵をかけたりするようなトリックよ。柴山が推理した糸を使ったトリックはこれに当たる。あとは館が動いたりな」

「え、館が動くってなに?」

「推理小説において、館ってのは動くもんなん」

P.160.161より

 

館は動きます……。

「さて諸君。我々は前回の会議で、推理小説における密室の分類について簡単にふれたことと思う。あのあと、本来ならカーの『三つの棺』などを挙げて、さらに細かく分析していくこともできたんやろうけれど、なんということやろうか、解説の途中でオレの脳裏にとんでもないアイデアが過ぎったんよ。その結果として、オレは遂に一つの真実に辿り着いたと、そう確信しておる」

P.171より

推理小説の中で他の推理小説の名が出てくるの好き。

「まあ、本格マニアやったら、人が死んでいない密室は密室じゃないと言うかもしれん」

「どうして?人が死んでいなくても、誰も入れなかったら密室じゃないの?」

「そうなんやけど、まぁ、あくまでそういううるさいマニアがいるってだけやね」

「へぇ……。なんだかミステリを読む人ってめんどくさいんだね」

P173より

すいません。

現代密室の解決編がすげーです。

結局、一番なにが言いたいかって、これです。

現代密室の推理シーンが凄いんです

現代密室、すなわち「密室の中で盗まれた制服がトルソーに着せられていた謎」を最後にマツリカさんが解明していくワケですが、そんじゃそこらの青春ミステリじゃお目にかかれない超論理的推理が披露されるワケですよ。

目からウロコの連続です。もう何枚ウロコが落ちたかわかりません。

トルソーに着せられていた制服の胸ポケットには自転車の鍵が入っていたのですが、

なぜ胸ポケットに自転車の鍵が入っていたのか?

に対しての回答が素晴らしいわ。ほんと。ネタバレできないのがもどかしい。

可能性を一つづつ論理的に消去していく作業っていうのは、やはり読んでいて楽しいです。これぞ良質なミステリの醍醐味ですね。

とにかく本格密室モノがお好きなら読んで損はない、どころか歓喜してしまうレベル。

確かに、私が読んだときは「まさかこんな論理的推理を披露してくれるとは思ってなかった」っていう、いい意味で期待値が低かったというのもあるかもしれない。

と思って、それを考慮した上で二度読んだんですが、やっぱり凄いわコレ。

おわりに

というわけで、ミステリ好きなら『マツリカ・マトリョシカ』をぜひ読んでみて、という話でした。傑作です。

シリーズ3作目なので、人間関係や過去の出来事が気になるなら、

1作目『マツリカ・マジョルカ(角川文庫)

2作目『マツリカ・マハリタ(角川文庫)

を先に読んでおくことをオススメします。

まあ、いきなり『マツリカ・マトリョシカ』を読んでも、あの推理劇はぶっとびますけど。

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