月輪シリーズ『黒龍荘の惨劇』-館、見立て、首なし。そして、悪魔的な真相。

『黒龍荘の惨劇』は、月輪龍太郎(がちりんりゅうたろう)を探偵役としたミステリシリーズの二作目。

明治時代が舞台であり、「館もの」&「見立て殺人」&「首なし死体」という三拍子揃った本格ミステリです(クローズドサークルではない)。この要素だけでも読みたくなるというものですね。

それでいて「名探偵&助手」というお約束のキャラ配置、終盤ギリギリまで行われる殺人にあふれ返るほどの量の謎。そして明らかになる「恐るべき真相」。

と、まあミステリ好きにはヨダレものの要素満載なんですわ(゚∀゚*)

 

『黒龍荘の惨劇』あらすじ

 

名探偵・月輪の元に魚住という依頼人が訪れる。

彼は、政界の黒幕・漆原安之丞(うるしばらやすのじょう)が、金庫室で首なし死体となって発見されたことを語る。数日前には脅迫状も届いていたらしい。

その事件を調査するため、前作『伊藤博文邸の怪事件 (光文社文庫)』で知り合った杉山潤之助と共に「黒龍荘」へと向かう月輪たち。

しかし彼らを待っていたのは、想像を絶する奇怪な連続殺人事件だった。

みんな大好き、わらべ歌

「お分かりになりませんか」喜代はじれったげに声をあげた。「旦那さんの首欲しや。ーーこれ、先日の事件そのものじゃございません。犯人はきっとこの唄の文句になぞらえて事件を起こしたのですよ」

P.57より

 

黒龍荘へと到着した月輪たちは、そこで奇妙なわらべ歌を目にします。黒龍荘の住人である喜代は、漆原はこのわらべ歌の通りに殺されたのではないか?と疑っているよう。

そんなバカな……と、さっそく捜査を開始しますが、彼らをあざ笑うかのように第二の殺人が幕を開けます。

ここでさらに不可解な出来事が。

死体発見後すぐに警察に連絡するのですが、警察が到着した時、最初に発見した時にはあったはずの首がなくなっていたのです。わらべ歌の通りに。

欲しや 欲しや なに欲しや
旦那さんの首欲しや

欲しや 欲しや なに欲しや
お嬢ちゃんの首欲しや

P.56より

つまり月輪たちが死体を発見し、警察が来るまでのわずかな間に首が切り取られてしまったということ。

なぜ犯人は危険を犯してまで、わざわざ首を持ち去ったのでしょうか。

そもそも、漆原は本当に死んでいるのか?

 

事件の始まりは漆原安之丞が殺されたことにがキッカケですが、彼の死体は「首なし」の状態で発見されました。

この死体を漆原と断定したのは、彼の身内たちの証言によるもの。それだけでは確実とは言えないのではないか。

しかも漆原はその頃、出張で大阪に向かっていたはずだったと言います。その彼がなぜ屋敷に戻り、殺されたのか。

ではこの首なし死体が漆原でないとしたら、誰なのか。別人だとしたら漆原はどこに。

などなど、第一の殺人だけで謎が溢れかえっています。贅沢ですね。

確かに「首なし」となれば「死体の入れ替わり」と考えるのはミステリ好きなら当然のこと。

さて、真相は。

最後の最後まで楽しめる密度

見立て殺人や首なし死体を扱うからには「なぜ見立てる必要があったのか」「なぜ首を切り取る必要があったのか」というそれぞれの理由付けが重要になってきますね。ぜひ注目してみましょう。

さらに謎はそれだけに終わりません。

終盤、残りわずか数十ページになっても殺人は止まらず、一挙に十六もの謎を列挙。

その残された謎を一気に暴いていく解決編はかなりの見ものです。

「この少ない残りのページ数で本当に全部解決するの?」と思わせておいてからのまさかの真相。かなりの衝撃があります。

「やられた!」というか「うげー!」って感じなんですよね(?)。「悪魔的」というか、寒気すら覚える真相でした。

ですが私的には大好きなトリックです。ぜひ目にしていただきたい!

残り少ないページで驚愕の真相が明かされる第二十二章は、その凄まじい密度に圧倒されるばかりだ。現代本格を読み慣れた読者でも、この解決は盲点だろう。

P.416 法月綸太郎さんの「解説」より引用

シリーズ一作目の『伊藤博文邸の怪事件』は読んでおくべき?

 

『黒龍荘の惨劇』は前作『伊藤博文邸の怪事件』から十年後を描いたシリーズ二作目です。

ですが、結論から言えば『伊藤博文邸の怪事件』を読んでいなくても大丈夫です。

前作の話がちょいちょい登場しますが、物語そのものには大きな影響はありません。その事件で月輪と杉山は出会ったんだな、くらいの知識でオーケーです。

解説で法月綸太郎さんは、この二作はどちらから読んでも差し支えないし、むしろ黒龍荘を先に読んだ方が伊藤博文邸をより楽しめるのではないか、と述べています。

これは私も同意見で、『黒龍荘の惨劇』を読めば絶対に『伊藤博文邸の怪事件』を読みたくなります。そういう風になっています。ご安心して読んじゃいましょう!

スポンサーリンク

関連コンテンツ