傑作ライトノベル『とある飛空士への追憶』-少年と少女の、儚く切ない、空の旅。

犬村小六(いぬむらころく)さんの『とある飛空士への追憶』は、2008年にガガガ文庫さんから刊行されたライトノベル。

飛空士の少年シャルルと一国のお嬢様ファナの二人の「空の旅」を描いた、ライトノベル界でも伝説となっている名作です。

今回ご紹介させていただくのは、その「新装版」の方。

実は最初は文庫で出版されたものの、その後大いに評価されたこともあり、大幅な加筆修正を行った「新装版」が一般文芸として発売されたのです。

それだけでこの作品がどれほど人気があり、評価されているかがお分かりいただけるでしょう。

もう純粋にとても良い作品ですので、ライトノベルに抵抗がある方もぜひ読んでいただければと思います。

 

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犬村小六『とある飛空士への追憶』あらすじ

 

今作の主人公となるのは、デル・モラル空艇騎士団一等飛空士・シャルル。彼は凄腕の飛空士でありながら戦いを好まず、ただ大空を自由に飛ぶことが好きな青年でした。

そんなある日、シャルルにとある任務が課せられます。

それは、次期皇妃である美少女・ファナを飛空機の後部座席に乗せ目的地まで送り届けろ、というものでした。名を「海猫作戦」。

しかしこの任務、非常に危険なのです。

ファナを目的地に届けるためには、敵が制空権を握る中央海を翔破する必要があるのです。見つかれば、間違いなく攻撃され、墜とされてしまうでしょう。

誰にでもできることではありません。そこで腕を買われたのがシャルルだったのです。

最初は戸惑いを見せたシャルルですが、その任務を受け入れます。果たして、シャルルは姫を無事送り届けることができるのかーー。

心中の苛立ちが顔に出るまで十分にシャルルを弄んだところで、威厳というものは端的で理不尽な命令から醸し出されるとの信念に基づき、大佐の口から端的で理不尽な命令が下された。

「次期皇妃と共に、中央海を単機敵中突破せよ」

P.47より

あらすじを簡単にまとめると、

身分のめちゃくちゃ高いお嬢様・ファナを守りつつ、敵の陣地である中央海を抜けてファナを婚約者の元に送り届ける、という物語です。

もうなんかやばくないですか。

シャルルは9歳の頃に浮浪者生活を送っており、死にそうになっていた時にとある神父に拾われて、やがて飛空士になったのです。

それに対しファナは一国の統治者の一人娘なんです。超お嬢様なんです。

もう身分が全然違うんです。

そんな二人が一つの飛空機に乗り、約5日間の危険な空の旅へと出発するのです。超ドラマチックじゃないですか!もう絶対良い話になるのがわかっちゃいます。

初めて空を旅するファナ

次期皇妃であるファナはこれまで「自由」なく育てられてきました。

ーーファナ・デル・モラルは男性への贈呈用としてこの世界に生を受けた。

生まれた瞬間にそう決まっていた。自分の意思とはかかわりなく、それが今後の人生の決定事項だった。

P.21より

婚約も自分が望んでいるものではなく、国のために、ほぼ強制的に行われるものなのです。しかしファナは自分の意思を殺し、従うしかありません。

心を固く閉ざしており、シャルルに対しても「はい」と「いいえ」でしか答えないような、はたから見れば機械のような少女だったのです。

しかしそんな彼女の心は、大空の中でシャルルと共に過ごす中で次第に変化を見せていきます。

どうでしょう。この王道な感じ。絶対良い物語だとは思いませんか?実際、本当に良い物語なんです。詳しくは言えませんが、ぜひファナの想いに注目して読んでみてください。

手に汗握る戦闘シーン

敵が制空権を握る中央海を翔破する、ということは、見つかれば即攻撃を受けることになります。シャルルのプレッシャーは相当なものでしょう。

自分一人ならまだ良いです。しかし、今回は後ろにファナを乗せています。何が何でも撃ち落とされるわけにはいきません。

戦闘シーンでは、そんなシャルルの想いが痛いほどに伝わってきます。そしてファナの想いも。

しかも描写がリアルで、その光景が目に浮かんでくるのです。手に汗握る、とはこの事です。本がシワシワになるんじゃないかってくらいのドキドキしました。

ここからはじまるのは、騎士道精神のかけらもない、ただ相対する敵を幾何学的に空域から除外するための戦闘であることをシャルルは予め肝に銘じておいた。二手先、三手先はもちろん、五、六手先まで読み切らなければ敵の術中にはまる。

ここまで来て撃ち落とされるわけにはいかない。これまで磨き上げてきた肉体と精神と技量のすべてを尽くし、これからの数十分間を乗り切る。

P.228より

果たして、シャルルは無事にファナを送り届けることができるのでしょうか。

私は読んでいる間それだけが心配でした。お願いだから二人とも死なないでおくれ、と。

しかし、タイトルにある「追憶」の文字が嫌な予感を過ぎらせます。もうどうなるの?!どうなるの?!の連続で、一気読みさせられてしまいます。

ぜひ、この結末は本書を読んで味わってみていただけたらと思います。

『とある飛空士への追憶』のポイント

①安心安定の王道な設定とストーリー。それにとっても読みやすい。

②身分の全く違う少年少女が一緒に空の旅をする、ってだけでワクワクする。

③シャルルと一緒に過ごすうちに変化するファナの心。

③戦闘シーンがとにかくドキドキ。心臓に悪い。

④果たして、シャルルは無事にファナを送り届けることができるのか。その結末は。

という感じです。

はじめにも述べたように、最初に発売された文庫版『とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)』と、新装版『とある飛空士への追憶』では内容が少し変わっております。省かれた描写もあれば、逆に追加されている部分もあったり。

なのでこれから初めて読まれるのであれば、新装版の方をオススメします。ですが、文庫版には文庫版の良さがあるのも事実。文庫版を読んで違いを楽しんでいただくのも良いかと思います。どうぞご参考にしてくださいませ。

 

それでは最後までありがとうございました。

ぜひ見届けてあげてください。

身分のかけ離れた、少年と少女の「空の旅」をーー。

 

《文庫版》

 

《新装版(単行本)》

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