『蟇屋敷の殺人』-乱歩のライバル甲賀三郎の本格探偵小説がついに登場!

甲賀三郎(こうがさぶろう)って誰?ってことなんですが、ズバリ江戸川乱歩とほぼ同時期にデビューした作家さんです。

甲賀三郎を「本格派」、乱歩が「変格派」と呼ばれていて、乱歩の最初のライバルだった、と呼ばれている方です。

はい、つまり、本格推理小説というものをはじめに築き上げてきた方たちの一人です。

「本格」という言葉が使われたのもこの頃ですからね。というか「本格」の名付け親とされていますから。ほとんど神様です。

 

『蟇(がま)屋敷の殺人』はそんな〈ほぼ神様〉による「本格探偵小説」です。

もうタイトルからして絶対好きなヤツじゃないですか。『〇〇屋敷の殺人』みたいなタイトルって数多くありますけど、その元祖的な作品ですからね。

これを読まずにいられるミステリ好きがどこにいるんですかってんだい!( ゚∀゚)

 

『蟇屋敷の殺人』あらすじ

 

まず始まり方から素敵。

ある高級自動車の中で、運転席に座っている男性が死んでいたのが発見されます。

刑事は最初、眠っているのかと思って「もしもし」って肩を揺すったんです。

「モシモシ」

といって、肩を静かに揺すった。

と、首がズルズルと前の方に滑り出たかと思うと、やがてストンと膝の上に落ちた。

P.10より

そしたら、首が、落ちちゃったんです。首切り死体だあ(歓喜)!

車体のナンバーや持ち物から、この死体は熊丸猛(くままるたけし)という資産家のものらしい。

医師の診断によると、死んだ後に首をスッパリ綺麗に切られていることがわかったわけです。

しかも目撃情報によると、昨夜の十時頃に熊丸の自動車を熊丸自身が運転しているを確認されており、今朝八時頃にもその自動車が走っているのを確認されているのです。

死亡推定時刻は、昨夜の十時頃だそうです。

つまり熊丸は、昨夜の十時頃に家を出たあとすぐに殺されて、首を切られ、今朝八時頃まで放置され、再びその死体を車でここまで運ばれてきて、死体の上に首を乗っけられたことになります。

なぜ、犯人は首を切り、持ち去るわけでもなく死体の上に乗せたのでしょうか。

なぜ、昨夜の十時頃に殺された死体が、今朝八時になってここまで運ばれてきたのでしょうか。

もうすでに謎のオンパレードです。

熊丸猛、登場。

で、署長室で「これは奇妙な事件だ」と頭を悩ませていると、一人の男性が飛び込んできました。

「君は僕の顔も知らないで、刑事にあんなことをさせたのか。僕は熊丸じゃ。熊丸猛じゃ」

「えッ」

署長は吃驚して紳士の顔を見た。額が狭く、眉が濃く眼尻が上がって、鼻がツンと高く、頬がこけて腮が出っ張っている。全く、今朝の怪死体の顔つきにそっくりである。

P.17より

熊丸猛、生きてたあああああ!!

え、ということは、あの死体は誰なの、、、?顔もすごく似ているけど、、?

しかも熊丸猛はなぜかアリバイを言わないし。

んんー!奇妙、奇怪だあ!

 

そこで登場するのは、探偵小説家の村橋信太郎!

この奇妙な事件を知った村橋は、熊丸の住んでいる屋敷に向かいます。

しかし、この屋敷がまた奇妙で。

「何しろ邸中一杯に蟇を飼っているんですよ。何千坪という広大な邸でして、小高い丘の斜面に沿って洋風の赤瓦家が立っていて、こんもりした木立に取巻かれているんですが、その広い庭に、何千何百という蟇が放してあるんです。付近では熊丸なんていわずに蟇屋敷といっていますよ。それにーー」

P.16より

蟇(がま)とは、いわゆるヒキガエルのことですわ。

こんな子が何千何百匹も放し飼いにしている屋敷……!!うわああ!!

私カエル超苦手ってわけでもないんですけど、こんなに数がいたらさすがに気味が悪いですね。

さらにそこで村橋は、むかし恋に落ちた女性に遭遇し、幽霊騒ぎに盗難騒ぎ、さらには殺人事件に巻き込まれていき、、、という次から次へと奇妙な謎に追われることになります。

古典の良さを再確認。

簡単にまとめますと、

高級車の中で首切り死体が発見されて、でも丁寧に首と胴体がくっつけられていて、車体ナンバーや所持品から熊丸猛だと思ったら、その熊丸猛は実は生きていて、、。

っていう実に奇怪な事件の始まりであります。しかもこれはほんの序章にすぎないわけです。これからやっと蟇屋敷に向かって、さらに事件に巻き込まれていくのですから。

じゃあどれくらい面白いの?ということなんですが、面白いは面白いです。あくまで「古典」として。

正直ミステリを読み慣れている方なら、今読むとそんなにビックリすることはないかと思います。というか、そもそも今作は「どんでん返し」や「強烈な一撃」を楽しむタイプではありませんね。

良くも悪くも「古き良き本格探偵小説」なんですよ。巧みな物語の構成と、次々に現れる奇々怪界な謎でグイグイ読ませるといった感じ。

魚介系つけ麺や濃厚味噌ラーメン、こってり系にんにくマシマシラーメン(?)とかも美味しいんですけど、食べると「ああ、懐かしいなあ、結局コレだよね」みたいに感じられる「昔ながらの醤油ラーメン」みたいな。

例えが下手ですいません。ちなみに私は味噌ラーメンが好きです(´∀`*)

また「館モノ」でもないです。館モノっぽいタイトルですけど。大雪や嵐で閉ざされることはありませんし、蟇屋敷以外の場所でも殺人が発生します。

蟇屋敷を軸に、かなり広い範囲で起きる殺人と奇怪な謎を探偵と刑事が捜査をしていく、というまさに典型的な古典ミステリなんです。

乱歩や海野十三に比べてかなりの正統派。乱歩が「変格」、甲賀が「本格」と呼ばれていたのもよくわかります。

というわけで、タイプは違いますけど「昔ながらの本格推理小説が読みたい!」という方や、乱歩や海野十三、横溝正史あたりの時代の作品が好きな方はぜひ読んでみてね!

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